58 / 85
第一部 悪役令嬢未満、お兄様と結婚します!
中間試験 5
しおりを挟む
日曜日の夜に寮に帰ると、ハイライドがぶすっとふくれっ面をしていた。
わたしとヴィルマの両方がアラトルソワ公爵家に帰っていたので、ハイライドのことは寮で働くメイドにお願いしていた。
どうやら、それがお気に召さなかったようだ。
ハイライドは、わたし以外の人にはただのカナリアにしか見えない。
メイドに預けられていた昨日と今日、ハイライドはペレットと水しか与えてもらえず、それが大変不満だったようなのだ。
……でもさ、ハイライドって食べなくても生きていけるんでしょ?
ペレットが食べたくないなら食べなきゃいいのにと思うが、食い意地が張っているハイライドは、食べるものがなかったらペレットを口にする。そしてまずいまずいと怒るのだ。面倒くさい。
ヴィルマが控室に下がった後で、わたしは二日間放置したお詫びにハイライドお気に入りのクッキーを差し出した。
鳥かごから出て、お気に入りの自分専用クッションの上でくつろぎながら、ハイライドは満足そうにクッキーをかじっている。
わたしはその隙に、枕の下からスマホを取り出した。
このスマホ、わたし以外の人間には見えないようなのだが、ハイライドも例外ではないようだ。
……これ、本当に何なのかしらね~?
疑問は残るものの、スマホでレベルアップができるとわかったので使わない手はない。
わたしはステータス画面を開いて、ポイントを確認した。
……うふふ、溜まっているわ! そうじゃないかと思ったのよ! だって昨日と今日で、たくさんお勉強したもの!
お兄様のお仕置きが怖かったとも言うが、お兄様のスパルタ教育に頑張ってついて行ったのである。
その結果、何と六十二ポイントというポイントをゲットしていた。
……ここはレベルか、それとも習得魔法レベルか。
悩んだわたしは、ひとまずちょっとずつレベルの方にポイントを加算して、レベルが三から四になるところで止めることにした。
その結果、二十七ポイントを加算したところでレベルが上がった。前回加算したポイントを足すた結果、レベルが三から四に上がるには、合計四十ポイントが必要だと言うことがわかった。
と言うことは、レベル四から五に上がるには四十ポイント以上のポイントが必要な計算になるので、今のポイントを全部入れても上がらない。
明日の中間試験までに極力レベルアップしておきたいので、残りの三十五ポイントは習得魔法レベルに加算した方がいい気がする。
……よし、加算っと!
すると、わたしのレベルはこうなった。
名前 マリア・アラトルソワ
誕生日 四月一日
称号 アラトルソワ公爵令嬢
レベル 四
魔力 三十六
習得魔法レベル 三
習得魔法レベルが一から三になりましたよ!
するとつまり、扱える魔法が増えたはずですね!
わくわくしながら、わたしは「詳細」タブをぽちっとする。
火 ファイアーボール 消費魔力 五
土 ストーンブレット 消費魔力 十三
水 なし
風 なし
やったー! 魔法が増えたー!
これで実技試験は怖いものなしだわ! 何もできなくて恥をかくことはまずないはずよ!
扱える魔法が一つ増えただけで、とっても強くなった気がするから不思議だ。
わたしはレベルが上がったことに満足すると、スマホを枕の下に納める。
すると、クッキーを食べ終えたハイライドがじっとこちらを見つめていた。
ハイライドの視線に気が付いたわたしは、そこでふと「資格持ち」について思い出した。
……わたしは、ハイライドが見える。ということはわたしは「資格持ち」なのよね。
つまり、ハイライドが力を貸してくれたら、光魔法も操れるんじゃないかしら。
わたしの中でむくむくと興味が湧く。
「ねえハイライド」
「うん? 何だ」
「わたしって、資格持ちなのよね」
「そうだ。だから俺が見えるんだろう?」
「じゃあさじゃあさ、わたし、光魔法が扱えるの?」
ハイライドはきょとんとした顔になって、それから腕を組んでうーんと唸る。
「……扱えないこともないと思うが、試してみるか?」
「うん!」
もちろん、試しますとも!
わたしはベッドから飛び降りて、てってってっとハイライドの側に駆け寄った。
ハイライドがひらりとわたしの肩に飛び乗る。
「手のひらを上にかざして、『ライト』と唱えてみろ」
「それだけ? 長い呪文とかいらないの?」
「精霊に力を借りる時のような呪文か? そのようなものは不要だ。そもそも、呪文で呼びかけられたところで妖精は力を貸したりしない。妖精が力を貸すのは、選ばれたもののみだ」
へー、よくわかんないけど、「ライト」だけでいいなんて、他の魔法より簡単なのね。
火土水風の魔法も、上級者になれば詠唱破棄で魔法が使えるが、最初から不要なんてなんて素敵なのかしら。あの呪文、長ったらしくて舌を噛みそうだったんだもん。
わたしは言われたまま手のひらを上に向けて「ライト」と唱える。
すると、0・一秒くらいのほんの僅かな時間だけぴかっと光った。
「……これだけ?」
「ふむ」
ハイライドは神妙な顔をして一瞬だけ光った虚空を見た後で、わたしの肩の上に立ち上がると、ぽんぽんとわたしの頬を撫でた。
「どうやら、魔力不足だな」
……光魔法を操るには、わたしはまだまだレベル不足のようだった。
わたしとヴィルマの両方がアラトルソワ公爵家に帰っていたので、ハイライドのことは寮で働くメイドにお願いしていた。
どうやら、それがお気に召さなかったようだ。
ハイライドは、わたし以外の人にはただのカナリアにしか見えない。
メイドに預けられていた昨日と今日、ハイライドはペレットと水しか与えてもらえず、それが大変不満だったようなのだ。
……でもさ、ハイライドって食べなくても生きていけるんでしょ?
ペレットが食べたくないなら食べなきゃいいのにと思うが、食い意地が張っているハイライドは、食べるものがなかったらペレットを口にする。そしてまずいまずいと怒るのだ。面倒くさい。
ヴィルマが控室に下がった後で、わたしは二日間放置したお詫びにハイライドお気に入りのクッキーを差し出した。
鳥かごから出て、お気に入りの自分専用クッションの上でくつろぎながら、ハイライドは満足そうにクッキーをかじっている。
わたしはその隙に、枕の下からスマホを取り出した。
このスマホ、わたし以外の人間には見えないようなのだが、ハイライドも例外ではないようだ。
……これ、本当に何なのかしらね~?
疑問は残るものの、スマホでレベルアップができるとわかったので使わない手はない。
わたしはステータス画面を開いて、ポイントを確認した。
……うふふ、溜まっているわ! そうじゃないかと思ったのよ! だって昨日と今日で、たくさんお勉強したもの!
お兄様のお仕置きが怖かったとも言うが、お兄様のスパルタ教育に頑張ってついて行ったのである。
その結果、何と六十二ポイントというポイントをゲットしていた。
……ここはレベルか、それとも習得魔法レベルか。
悩んだわたしは、ひとまずちょっとずつレベルの方にポイントを加算して、レベルが三から四になるところで止めることにした。
その結果、二十七ポイントを加算したところでレベルが上がった。前回加算したポイントを足すた結果、レベルが三から四に上がるには、合計四十ポイントが必要だと言うことがわかった。
と言うことは、レベル四から五に上がるには四十ポイント以上のポイントが必要な計算になるので、今のポイントを全部入れても上がらない。
明日の中間試験までに極力レベルアップしておきたいので、残りの三十五ポイントは習得魔法レベルに加算した方がいい気がする。
……よし、加算っと!
すると、わたしのレベルはこうなった。
名前 マリア・アラトルソワ
誕生日 四月一日
称号 アラトルソワ公爵令嬢
レベル 四
魔力 三十六
習得魔法レベル 三
習得魔法レベルが一から三になりましたよ!
するとつまり、扱える魔法が増えたはずですね!
わくわくしながら、わたしは「詳細」タブをぽちっとする。
火 ファイアーボール 消費魔力 五
土 ストーンブレット 消費魔力 十三
水 なし
風 なし
やったー! 魔法が増えたー!
これで実技試験は怖いものなしだわ! 何もできなくて恥をかくことはまずないはずよ!
扱える魔法が一つ増えただけで、とっても強くなった気がするから不思議だ。
わたしはレベルが上がったことに満足すると、スマホを枕の下に納める。
すると、クッキーを食べ終えたハイライドがじっとこちらを見つめていた。
ハイライドの視線に気が付いたわたしは、そこでふと「資格持ち」について思い出した。
……わたしは、ハイライドが見える。ということはわたしは「資格持ち」なのよね。
つまり、ハイライドが力を貸してくれたら、光魔法も操れるんじゃないかしら。
わたしの中でむくむくと興味が湧く。
「ねえハイライド」
「うん? 何だ」
「わたしって、資格持ちなのよね」
「そうだ。だから俺が見えるんだろう?」
「じゃあさじゃあさ、わたし、光魔法が扱えるの?」
ハイライドはきょとんとした顔になって、それから腕を組んでうーんと唸る。
「……扱えないこともないと思うが、試してみるか?」
「うん!」
もちろん、試しますとも!
わたしはベッドから飛び降りて、てってってっとハイライドの側に駆け寄った。
ハイライドがひらりとわたしの肩に飛び乗る。
「手のひらを上にかざして、『ライト』と唱えてみろ」
「それだけ? 長い呪文とかいらないの?」
「精霊に力を借りる時のような呪文か? そのようなものは不要だ。そもそも、呪文で呼びかけられたところで妖精は力を貸したりしない。妖精が力を貸すのは、選ばれたもののみだ」
へー、よくわかんないけど、「ライト」だけでいいなんて、他の魔法より簡単なのね。
火土水風の魔法も、上級者になれば詠唱破棄で魔法が使えるが、最初から不要なんてなんて素敵なのかしら。あの呪文、長ったらしくて舌を噛みそうだったんだもん。
わたしは言われたまま手のひらを上に向けて「ライト」と唱える。
すると、0・一秒くらいのほんの僅かな時間だけぴかっと光った。
「……これだけ?」
「ふむ」
ハイライドは神妙な顔をして一瞬だけ光った虚空を見た後で、わたしの肩の上に立ち上がると、ぽんぽんとわたしの頬を撫でた。
「どうやら、魔力不足だな」
……光魔法を操るには、わたしはまだまだレベル不足のようだった。
522
お気に入りに追加
2,054
あなたにおすすめの小説

気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる