50 / 63
第一部 悪役令嬢未満、お兄様と結婚します!
墓地の妖精 5
しおりを挟む
……熱い‼
灼熱に全身が包まれる激痛が走る。
「レベルが低いと言うことを聞いてくれません」って注意書きがあったサラマンダーだけど、わたしごと燃やせという雑なお願いは聞いてくれたらしい。
まあ、もしかしたらお願いを聞いてくれたのではなくて、本能であたりを燃やし尽くそうとしただけなのかもしれないけどね。
わずか六秒で消えた炎だが、アンデットを燃やし尽くすには充分だった。
幸か不幸か、アンデットに飲まれかけていたわたしは、わたしを包んでいたアンデットが壁になって、全身が燃やされるということはなかった。
でも、しっかり火傷は負ったみたいで、炎が消え去るとほぼ同時にその場に力なく倒れ込む。
「マリア‼」
お兄様が悲鳴のような声を上げてわたしに駆け寄って来た。
お兄様のそんな声、はじめて聞いたような――いや、ずっと昔に、同じような声を聞いたことが、あるような。
「マリアッ」
アレクサンダー様まで、そんな悲痛な声を上げて、変なの。
意識が朦朧としているわたしは、目の前にキラキラとした粉が舞っていることに気が付いた。
サラマンダーの炎でわたしの服は結構燃えちゃってて、どうやらポケットに入れていたハイライドの鱗粉を入れていた巾着袋も、燃えて破れてしまったみたい。
鱗粉が燃えていないのは、さすが妖精の翅の鱗粉ってところかしら。
……ああ、それにしても、綺麗ね。
きらきらと星屑のように降り注ぐ金粉に、わたしは震える手を何とか持ち上げて指をさす。
「アレク、サンダーさ、ま……、妖精の、鱗粉……だと思います……。集めて……」
風魔法を使えば、簡単に集められるはずだ。
予定とは違うが、アレクサンダー様に無事にハイライドの鱗粉を渡せたことにホッとする。
そう、ホッと、したからだろう。
急速に体が重たくなって、持ち上げていた腕ががくんと力なく落ちる。
「マリア! マリア‼」
お兄様の叫び声がだんだん遠くなって――
「マリア――‼」
わたしは、意識を失った。
灼熱に全身が包まれる激痛が走る。
「レベルが低いと言うことを聞いてくれません」って注意書きがあったサラマンダーだけど、わたしごと燃やせという雑なお願いは聞いてくれたらしい。
まあ、もしかしたらお願いを聞いてくれたのではなくて、本能であたりを燃やし尽くそうとしただけなのかもしれないけどね。
わずか六秒で消えた炎だが、アンデットを燃やし尽くすには充分だった。
幸か不幸か、アンデットに飲まれかけていたわたしは、わたしを包んでいたアンデットが壁になって、全身が燃やされるということはなかった。
でも、しっかり火傷は負ったみたいで、炎が消え去るとほぼ同時にその場に力なく倒れ込む。
「マリア‼」
お兄様が悲鳴のような声を上げてわたしに駆け寄って来た。
お兄様のそんな声、はじめて聞いたような――いや、ずっと昔に、同じような声を聞いたことが、あるような。
「マリアッ」
アレクサンダー様まで、そんな悲痛な声を上げて、変なの。
意識が朦朧としているわたしは、目の前にキラキラとした粉が舞っていることに気が付いた。
サラマンダーの炎でわたしの服は結構燃えちゃってて、どうやらポケットに入れていたハイライドの鱗粉を入れていた巾着袋も、燃えて破れてしまったみたい。
鱗粉が燃えていないのは、さすが妖精の翅の鱗粉ってところかしら。
……ああ、それにしても、綺麗ね。
きらきらと星屑のように降り注ぐ金粉に、わたしは震える手を何とか持ち上げて指をさす。
「アレク、サンダーさ、ま……、妖精の、鱗粉……だと思います……。集めて……」
風魔法を使えば、簡単に集められるはずだ。
予定とは違うが、アレクサンダー様に無事にハイライドの鱗粉を渡せたことにホッとする。
そう、ホッと、したからだろう。
急速に体が重たくなって、持ち上げていた腕ががくんと力なく落ちる。
「マリア! マリア‼」
お兄様の叫び声がだんだん遠くなって――
「マリア――‼」
わたしは、意識を失った。
563
お気に入りに追加
2,093
あなたにおすすめの小説
婚約破棄にも寝過ごした
シアノ
恋愛
悪役令嬢なんて面倒くさい。
とにかくひたすら寝ていたい。
三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。
そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。
それって──最高じゃない?
ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい!
10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。
これで完結となります。ありがとうございました!
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。
百谷シカ
恋愛
「君には『華』というものがない。そんな妻は必要ない」
いるんだかいないんだかわからない、存在感のない私。
ニネヴィー伯爵令嬢ローズマリー・ボイスは婚約を破棄された。
「無難な妻を選んだつもりが、こうも無能な娘を生むとは」
父も私を見放し、母は意気消沈。
唯一の望みは、年末に控えた王家主催の舞踏会。
第1王子フランシス殿下と第2王子ピーター殿下の花嫁選びが行われる。
高望みはしない。
でも多くの貴族が集う舞踏会にはチャンスがある……はず。
「これで結果を出せなければお前を修道院に入れて離婚する」
父は無慈悲で母は絶望。
そんな私の推薦人となったのは、ゼント伯爵ジョシュア・ロス卿だった。
「ローズマリー、君は可愛い。君は君であれば完璧なんだ」
メルー侯爵令息でもありピーター殿下の親友でもあるゼント伯爵。
彼は私に勇気をくれた。希望をくれた。
初めて私自身を見て、褒めてくれる人だった。
3ヶ月の準備期間を経て迎える王家主催の舞踏会。
華がないという理由で婚約破棄された私は、私のままだった。
でも最有力候補と噂されたレーテルカルノ伯爵令嬢と共に注目の的。
そして親友が推薦した花嫁候補にピーター殿下はとても好意的だった。
でも、私の心は……
===================
(他「エブリスタ」様に投稿)
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる