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第一部 悪役令嬢未満、お兄様と結婚します!
二日目 メインイベント魔物討伐 1
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さすがにオリエンテーション中ずっと自分たちで料理をしろと言うほど鬼畜な学園ではないので、翌朝は普通に朝食が提供された。
……うーん、いい朝ね!
朝食は各自の部屋に運ばれてくるので、わたしはヴィルマに頼んで朝食をバルコニーに運んでもらった。
だって、バルコニーからはキラキラと輝く湖と、青々とした新緑が美しい山々が見渡せるんですもの! この美しい景色を眺めながら食事をしない手はないわ!
……だって、昨日の夕食は地獄だったからね。気分転換は必要なのよ。
昨日のわたしは、別に悪いことをしたわけではない。そのはずだ。それなのに、生の野菜をかじっているアレクサンダー様たちは、わたしにものすごく冷たい視線を注いでいた。
まるでわたしが、三人にだけ食事を提供しなかったかのような恨みがましい視線だった。
あんまりである。
「そう言えばお嬢様。わたくしども使用人たちの間で、昨日の夜にお嬢様が一人だけ美味しい食事を食べて他の人たちに生の野菜をかじらせたって噂が広まっていますよ」
ぐはあ‼
わたしは口に含んだスープを噴き出しそうになった。
「ヴィルマヴィルマヴィルマ‼ それはいったいどういうことなのかしら⁉」
「どうと言われましても、わたしはほかのご令嬢の侍女からお話をきいただけですから、真偽のほどはわかりませんけど、本当にそんなことをなさったんですか? さすがはお嬢様ですね!」
いや、ヴィルマ、親指を立てているところ申し訳ないけど、それ褒めてないからね。
「誤解よ誤解‼ アレクサンダー様たち三人は、自分から生の野菜をかじることを選択しただけで、わたしが強要したわけじゃないわ‼」
「でも、お嬢様だけ美味しいものを食べたという点においては正解なんですね」
「自分で作ったものを自分で食べただけよ‼ そしてお兄様も食べたわ‼」
おかしい。アレクサンダー様たちは自分の選択を貫いただけだし、わたしとお兄様は学園の指示に従って自分で料理したものを食べただけだ。
だというのに、なんでわたしがわたし以外の班のメンバーを虐げたみたいに噂されてるの⁉
……噂の出所はどこだよ⁉
キッチンのあるあの部屋の中にいたのはわたしを含めた五人のメンバーだけだ。つまりはそのメンバーの誰かが犯人である可能性は高い……けども、はあ、犯人捜しはやめよ。そんなことをすればまたわたしが誰かをいじめているみたいな嫌な噂が立つんだわ。
人の噂も七十五日。そのうち忘れるだろう。
そもそも、すでに数えきれないくらいの悪評があるわたしに悪い噂が一つ増えたところで大差はない。
しゃくしゃくと焼き立てのクロワッサンを口に運ぶ。
嫌な噂なんて、美味しいご飯を食べて忘れてしまおう。
「ヴィルマ、今日は午後から魔物討伐があるから、服を出しておいてくれない」
「お嬢様が買った悩殺系衣装は全部置いてきちゃったじゃないですか」
「普通のよ、ふ・つ・う・の‼ 学園の実技用の制服があるでしょう⁉ それでいいから‼」
お前はいったいわたしに何を着せる気だった⁉ いや、買ったのはわたしですけどね‼
ヴィルマはつまらなそうな顔をして、学園の実技のときに着る服を出す。学園のロゴの入ったシャツにベストにズボンにブーツで、実技の邪魔にならないよう、装飾は一切ない代物だ。
……以前のわたしはとってもおバカさんだから、実用性より派手さを取って、その制服の上にじゃらじゃらとアクセサリーをぶら下げてたけどね。もうそんなことなしないよ。邪魔だもん。
ヴィルマは変なものを見るような目でわたしを見た後で、ふっと生暖かい視線になった。
「お嬢様も少し大人になったんですね。結婚って、偉大ですね。ダメダメなお嬢様でも成長できるんですから」
ヴィルマ、あんたは本当に、わたしを主だとは思っていませんね‼
わたしはがっくりと肩を落とすと、気を取り直してバルコニーの外を眺める。
あー、とってもすがすがしい、いい朝だわ~!
……うーん、いい朝ね!
朝食は各自の部屋に運ばれてくるので、わたしはヴィルマに頼んで朝食をバルコニーに運んでもらった。
だって、バルコニーからはキラキラと輝く湖と、青々とした新緑が美しい山々が見渡せるんですもの! この美しい景色を眺めながら食事をしない手はないわ!
……だって、昨日の夕食は地獄だったからね。気分転換は必要なのよ。
昨日のわたしは、別に悪いことをしたわけではない。そのはずだ。それなのに、生の野菜をかじっているアレクサンダー様たちは、わたしにものすごく冷たい視線を注いでいた。
まるでわたしが、三人にだけ食事を提供しなかったかのような恨みがましい視線だった。
あんまりである。
「そう言えばお嬢様。わたくしども使用人たちの間で、昨日の夜にお嬢様が一人だけ美味しい食事を食べて他の人たちに生の野菜をかじらせたって噂が広まっていますよ」
ぐはあ‼
わたしは口に含んだスープを噴き出しそうになった。
「ヴィルマヴィルマヴィルマ‼ それはいったいどういうことなのかしら⁉」
「どうと言われましても、わたしはほかのご令嬢の侍女からお話をきいただけですから、真偽のほどはわかりませんけど、本当にそんなことをなさったんですか? さすがはお嬢様ですね!」
いや、ヴィルマ、親指を立てているところ申し訳ないけど、それ褒めてないからね。
「誤解よ誤解‼ アレクサンダー様たち三人は、自分から生の野菜をかじることを選択しただけで、わたしが強要したわけじゃないわ‼」
「でも、お嬢様だけ美味しいものを食べたという点においては正解なんですね」
「自分で作ったものを自分で食べただけよ‼ そしてお兄様も食べたわ‼」
おかしい。アレクサンダー様たちは自分の選択を貫いただけだし、わたしとお兄様は学園の指示に従って自分で料理したものを食べただけだ。
だというのに、なんでわたしがわたし以外の班のメンバーを虐げたみたいに噂されてるの⁉
……噂の出所はどこだよ⁉
キッチンのあるあの部屋の中にいたのはわたしを含めた五人のメンバーだけだ。つまりはそのメンバーの誰かが犯人である可能性は高い……けども、はあ、犯人捜しはやめよ。そんなことをすればまたわたしが誰かをいじめているみたいな嫌な噂が立つんだわ。
人の噂も七十五日。そのうち忘れるだろう。
そもそも、すでに数えきれないくらいの悪評があるわたしに悪い噂が一つ増えたところで大差はない。
しゃくしゃくと焼き立てのクロワッサンを口に運ぶ。
嫌な噂なんて、美味しいご飯を食べて忘れてしまおう。
「ヴィルマ、今日は午後から魔物討伐があるから、服を出しておいてくれない」
「お嬢様が買った悩殺系衣装は全部置いてきちゃったじゃないですか」
「普通のよ、ふ・つ・う・の‼ 学園の実技用の制服があるでしょう⁉ それでいいから‼」
お前はいったいわたしに何を着せる気だった⁉ いや、買ったのはわたしですけどね‼
ヴィルマはつまらなそうな顔をして、学園の実技のときに着る服を出す。学園のロゴの入ったシャツにベストにズボンにブーツで、実技の邪魔にならないよう、装飾は一切ない代物だ。
……以前のわたしはとってもおバカさんだから、実用性より派手さを取って、その制服の上にじゃらじゃらとアクセサリーをぶら下げてたけどね。もうそんなことなしないよ。邪魔だもん。
ヴィルマは変なものを見るような目でわたしを見た後で、ふっと生暖かい視線になった。
「お嬢様も少し大人になったんですね。結婚って、偉大ですね。ダメダメなお嬢様でも成長できるんですから」
ヴィルマ、あんたは本当に、わたしを主だとは思っていませんね‼
わたしはがっくりと肩を落とすと、気を取り直してバルコニーの外を眺める。
あー、とってもすがすがしい、いい朝だわ~!
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