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訓練とうさ耳 2
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訓練をはじめてから十日。
今日は、城で聖女……つまり、わたしのお披露目を兼ねたパーティーがある。
わたしは少しずつだが浄化の力の使い方がわかって来て、それに伴って、ライナルト殿下のうさ耳が黒から白に変化した。
……色が白くなったってことは、うさ耳が消えるまでもうちょっとってことよね。
残念な気もするけど――というよりかなり残念だけど、ライナルト殿下が帽子をかぶらずに通常の生活が送れるように頑張るよ!
鏡の前で、興味深そうに白くなったうさ耳を引っ張ってるライナルト殿下の姿にキュンキュンしながら、わたしは決意を新たにする。
ライナルト殿下は、タイの色をわたしのドレスの色に合わせるからと言って、わたしの部屋にやって来たのだけど、タイより耳が気になるのか鏡の前でしきりに耳を気にしているのだ。
「……なんか、感覚が薄くなっている気がする」
耳をぐいーっと引っ張って、ライナルト殿下が言う。
可愛い。
可愛い可愛い。
わたしも触りたい!
いまだにわたしはライナルト殿下の耳を触れていない。
消えてしまう前に一度は、と思っていたのだが、今がそのチャンスではなかろうか⁉
「そうなんですか? わたしも触ってみていいですか?」
うん、今のはさりげなく言えたよね? 耳フェチの変態っぽくなかったよね? 引かれてないよね? 大丈夫だよね?
ドキドキしていると、ライナルト殿下が振り返り、「うん」と頷く。
笑顔なので、引かれてはいないっぽい。よかった!
内心でガッツポーズを上げながら、けれども顔がにやけないように気をつけつつ、わたしはライナルト殿下につつつ、と近づく。
ライナルト殿下が耳に触れやすいように軽く上体を倒してくれたので、ドクンドクンと大きく高鳴る自分の心臓の音を聞きながら、そーっと手を伸ばした。
……わ! わ‼ ふわっふわ‼ 柔らかい‼ 気持ちいい‼
さわさわと触れていると、ライナルト殿下がくすくすと笑う。
「ちょっとくすぐったいかな。でも、やっぱり感覚が薄くなった気がする」
「感覚が薄いってことは、消えかかっているんですかね?」
言いながら、少しでも多くを堪能しようと、さわさわと耳を触り続ける。消えかかっているのならなおのこと、今のうちにしっかりと堪能しておくのである。
「そうかもしれない。色も変化したし、ヴィルのおかげだね」
ライナルト殿下が上体を起こしてしまったので、わたしの手からするりと耳が逃げていく。
……ああ、もう終わってしまった。
残念に思っていると、ライナルト殿下が実にさりげなくわたしの背中に腕を回した。
抱きしめられたわけではないけど、この、ふわっと包み込まれる感じに、わたしはボッと赤くなる。
「さすがに今日は帽子が必要だろうけど、このまま順調に変化していけば、ヴィルと一緒にロヴァルタ国に行けるかな?」
わたしとライナルト殿下の婚約は、ロヴァルタ国王の承認がなければ正式に発表できない。
伯父様はすでに承認済みなので、あとはロヴァルタ国王から許可をもぎ取るだけだ。
……おじい様にもお伝えしたいし、できるだけ早く承認がもらいたいから、聖女の力をコントロールする訓練が終われば行こうと思ってたのよね。
ライナルト殿下が一緒に来てくれるなら、こんなに嬉しいことはない。
ライナルト殿下はもう一度うさ耳をぐいーっと引っ張って、「もうちょっとな気がするんだけどなぁ~」と呟いていた。
今日は、城で聖女……つまり、わたしのお披露目を兼ねたパーティーがある。
わたしは少しずつだが浄化の力の使い方がわかって来て、それに伴って、ライナルト殿下のうさ耳が黒から白に変化した。
……色が白くなったってことは、うさ耳が消えるまでもうちょっとってことよね。
残念な気もするけど――というよりかなり残念だけど、ライナルト殿下が帽子をかぶらずに通常の生活が送れるように頑張るよ!
鏡の前で、興味深そうに白くなったうさ耳を引っ張ってるライナルト殿下の姿にキュンキュンしながら、わたしは決意を新たにする。
ライナルト殿下は、タイの色をわたしのドレスの色に合わせるからと言って、わたしの部屋にやって来たのだけど、タイより耳が気になるのか鏡の前でしきりに耳を気にしているのだ。
「……なんか、感覚が薄くなっている気がする」
耳をぐいーっと引っ張って、ライナルト殿下が言う。
可愛い。
可愛い可愛い。
わたしも触りたい!
いまだにわたしはライナルト殿下の耳を触れていない。
消えてしまう前に一度は、と思っていたのだが、今がそのチャンスではなかろうか⁉
「そうなんですか? わたしも触ってみていいですか?」
うん、今のはさりげなく言えたよね? 耳フェチの変態っぽくなかったよね? 引かれてないよね? 大丈夫だよね?
ドキドキしていると、ライナルト殿下が振り返り、「うん」と頷く。
笑顔なので、引かれてはいないっぽい。よかった!
内心でガッツポーズを上げながら、けれども顔がにやけないように気をつけつつ、わたしはライナルト殿下につつつ、と近づく。
ライナルト殿下が耳に触れやすいように軽く上体を倒してくれたので、ドクンドクンと大きく高鳴る自分の心臓の音を聞きながら、そーっと手を伸ばした。
……わ! わ‼ ふわっふわ‼ 柔らかい‼ 気持ちいい‼
さわさわと触れていると、ライナルト殿下がくすくすと笑う。
「ちょっとくすぐったいかな。でも、やっぱり感覚が薄くなった気がする」
「感覚が薄いってことは、消えかかっているんですかね?」
言いながら、少しでも多くを堪能しようと、さわさわと耳を触り続ける。消えかかっているのならなおのこと、今のうちにしっかりと堪能しておくのである。
「そうかもしれない。色も変化したし、ヴィルのおかげだね」
ライナルト殿下が上体を起こしてしまったので、わたしの手からするりと耳が逃げていく。
……ああ、もう終わってしまった。
残念に思っていると、ライナルト殿下が実にさりげなくわたしの背中に腕を回した。
抱きしめられたわけではないけど、この、ふわっと包み込まれる感じに、わたしはボッと赤くなる。
「さすがに今日は帽子が必要だろうけど、このまま順調に変化していけば、ヴィルと一緒にロヴァルタ国に行けるかな?」
わたしとライナルト殿下の婚約は、ロヴァルタ国王の承認がなければ正式に発表できない。
伯父様はすでに承認済みなので、あとはロヴァルタ国王から許可をもぎ取るだけだ。
……おじい様にもお伝えしたいし、できるだけ早く承認がもらいたいから、聖女の力をコントロールする訓練が終われば行こうと思ってたのよね。
ライナルト殿下が一緒に来てくれるなら、こんなに嬉しいことはない。
ライナルト殿下はもう一度うさ耳をぐいーっと引っ張って、「もうちょっとな気がするんだけどなぁ~」と呟いていた。
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