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義妹がわたくしを悪役令嬢というものにしたがるので
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カーリー伯爵邸の前に停められた馬車から、クリフォード様の手を借りて降りれば、華やかなワルツの音色が聞こえてまいりました。
今年の流行色であるローズピンクのドレスに身を包んだわたくしをエスコートしてくださるクリフォード様と玄関ホールをくぐれば、受付をしていた使用人が会場までを案内してくださいます。
「ここ、少し段差があるよ。足元に気をつけて」
クリフォード様が小さな段差を見つけてわたくしに教えてくださいました。
クリフォード様は小さな気遣いのできる、本当に素敵な方なのです。
背の高いクロフォード様を見上げてお礼を申し上げれば、にこりと微笑んでくださいます。
「オールポート伯爵が亡くなられてもうすぐ一年だが、家の方は大丈夫かい?」
「ええ。領地の方も今のところ問題ないようです。クリフォード様がお力添えくださっているおかげですね。ありがとう存じます」
お父様が亡くなって途方に暮れていたわたくしに代わり、クリフォード様は王家と交渉し爵位をわたくし預かりにするようにしてくださいました。わたくしが結婚したのちはクリフォード様に移りますが、それまでの間わたくし預かりになったおかげで、領地を一時的に王家に取り上げられることなく運営できているのにはとても助かっております。
領地の運営についてもクリフォード様や彼のお父君バロウズ伯爵が手を貸してくださっているので、今のところ大きな問題はございません。
これがわたくし一人だけの力で何とかしなければならないのであれば、きっと右も左もわからずおろおろしてしまっていたでしょう。お父様から領地経営について多少は学んでおりましたけれど、基本的にはクリフォード様の補佐をすることを考えておりましたので、補佐的なお仕事を学ぶことに重点を置いておりましたからね。
お義母様はそのあたりのことはさっぱりですし、シェリーは言わずもがな。
クリフォード様がいらっしゃらなければ、どうなっていたかわかりません。
「エレノーラの力になれているのならよかったよ」
「わたくしもクリフォード様が婚約者でとても嬉しいです」
こんなに素敵な方が婚約者で、わたくしはとても幸せ者でございますね。
会場に参りますと、わたくしとクリフォード様は一緒にお知り合いたちにご挨拶に参ります。
お父様がいなくなった今、次期伯爵であるクリフォード様とわたくしがオールポート伯爵家を盛り立てて行かねばなりません。若いわたくしたちにとって、社交はとっても大切なことなのです。
……お父様が懇意にされていた方が、わたくしたちに懇意にしてくださるかどうかはわかりませんからね。お父様の名前を頼るのだけではなく、わたくしたちで人脈を築き上げる必要があるのです。
たくさんの方にご挨拶に伺ったのち、少し疲れましたのでわたくしたちはドリンクを飲みながら休憩することにいたしました。
クリフォード様とドリンクを片手にバルコニーへ向かいますと、藍色の空に星々がきらめいております。
秋の空は夜空はとても綺麗ですね。
……こんな夜空を見ていると、お父様からクリフォード様を紹介され日のことを思い出します。
ほんの数年前のことですのにひどく懐かしく、銀色の中にほんの少しだけクリーム色を落としたような優しい色合いの月を見上げておりますと、わたくしと同じように空を見上げたクリフォード様が懐かしむように目を細めました。
「君を紹介されたのも、こんな日の夜だったね」
クリフォード様がわたくしと同じことを思い出していると知って嬉しくなりました。
――エレノーラの髪は、今日の月の色とよく似ていますね。
そう言って、クリフォード様が優しく微笑んでくださったのは、今からちょうど、三年前のことでしょうか。
今年の流行色であるローズピンクのドレスに身を包んだわたくしをエスコートしてくださるクリフォード様と玄関ホールをくぐれば、受付をしていた使用人が会場までを案内してくださいます。
「ここ、少し段差があるよ。足元に気をつけて」
クリフォード様が小さな段差を見つけてわたくしに教えてくださいました。
クリフォード様は小さな気遣いのできる、本当に素敵な方なのです。
背の高いクロフォード様を見上げてお礼を申し上げれば、にこりと微笑んでくださいます。
「オールポート伯爵が亡くなられてもうすぐ一年だが、家の方は大丈夫かい?」
「ええ。領地の方も今のところ問題ないようです。クリフォード様がお力添えくださっているおかげですね。ありがとう存じます」
お父様が亡くなって途方に暮れていたわたくしに代わり、クリフォード様は王家と交渉し爵位をわたくし預かりにするようにしてくださいました。わたくしが結婚したのちはクリフォード様に移りますが、それまでの間わたくし預かりになったおかげで、領地を一時的に王家に取り上げられることなく運営できているのにはとても助かっております。
領地の運営についてもクリフォード様や彼のお父君バロウズ伯爵が手を貸してくださっているので、今のところ大きな問題はございません。
これがわたくし一人だけの力で何とかしなければならないのであれば、きっと右も左もわからずおろおろしてしまっていたでしょう。お父様から領地経営について多少は学んでおりましたけれど、基本的にはクリフォード様の補佐をすることを考えておりましたので、補佐的なお仕事を学ぶことに重点を置いておりましたからね。
お義母様はそのあたりのことはさっぱりですし、シェリーは言わずもがな。
クリフォード様がいらっしゃらなければ、どうなっていたかわかりません。
「エレノーラの力になれているのならよかったよ」
「わたくしもクリフォード様が婚約者でとても嬉しいです」
こんなに素敵な方が婚約者で、わたくしはとても幸せ者でございますね。
会場に参りますと、わたくしとクリフォード様は一緒にお知り合いたちにご挨拶に参ります。
お父様がいなくなった今、次期伯爵であるクリフォード様とわたくしがオールポート伯爵家を盛り立てて行かねばなりません。若いわたくしたちにとって、社交はとっても大切なことなのです。
……お父様が懇意にされていた方が、わたくしたちに懇意にしてくださるかどうかはわかりませんからね。お父様の名前を頼るのだけではなく、わたくしたちで人脈を築き上げる必要があるのです。
たくさんの方にご挨拶に伺ったのち、少し疲れましたのでわたくしたちはドリンクを飲みながら休憩することにいたしました。
クリフォード様とドリンクを片手にバルコニーへ向かいますと、藍色の空に星々がきらめいております。
秋の空は夜空はとても綺麗ですね。
……こんな夜空を見ていると、お父様からクリフォード様を紹介され日のことを思い出します。
ほんの数年前のことですのにひどく懐かしく、銀色の中にほんの少しだけクリーム色を落としたような優しい色合いの月を見上げておりますと、わたくしと同じように空を見上げたクリフォード様が懐かしむように目を細めました。
「君を紹介されたのも、こんな日の夜だったね」
クリフォード様がわたくしと同じことを思い出していると知って嬉しくなりました。
――エレノーラの髪は、今日の月の色とよく似ていますね。
そう言って、クリフォード様が優しく微笑んでくださったのは、今からちょうど、三年前のことでしょうか。
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