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透明人間になったわたしと、わたしに興味がない(はずの)夫の奇妙な三か月間
プロローグ
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「オレリア……」
切ない声でオレリアを呼んだ夫ルクレールが、視線を虚空に彷徨わせてから、そっと手のひらを宙にかざした。
オレリアは、自分が見えていない夫の手に、おずおずと手のひらを合わせる。
オレリアの手の感触もルクレールには感じられないだろうが、オレリアの手には、確かにルクレールの熱が感じられた。
――ここにいます。
開いたままの日記帳にペンを走らせると、ルクレールがそれを見てゆっくりと、オレリアの指をからめるように指を曲げた。
オレリアも、同じように彼には見えない手を、彼の大きな手にからめる。
オレリアの体が透明になって、もうすぐ一か月がすぎる。
オレリアの透明化が元に戻るまでは、あとおおよそ二か月だ。
(まだ二か月もあるなんて……)
こうして触れているのに、ルクレールの瞳にはオレリアは映らないし、感じてももらえない。
それがどうしようもなく苦しくて、オレリアはきゅっと唇をかんだ。
「オレリア。……オレリア。俺は、君に謝らないといけない」
ルクレールがかすれた声で告げる。
「俺はあの日……初夜の日、君にひどいことを言った。君を傷つけた。謝ったところで許されるわけではないとわかっているけれど……」
すまない、と。
震える声でルクレールが告げる。
「っ」
オレリアは彼とつないでいた手を離すと、反射的にルクレールに抱き着いた。
「そんなの、いいんです……!」
義母リアーヌから、ルクレールが過去に女性からひどく傷つけられたことがあると聞いた。
詳細まではわからないが、傷ついたルクレールが女性不信になっても、それは仕方のないことだ。
オレリアがいくら彼をぎゅっと抱きしめたところで、ルクレールには伝わらないだろう。
けれども、オレリアは小さく震える彼を、抱きしめずにはいられなかった。
「君が、俺との離縁を選んでも仕方がないとわかっている。でも……」
ルクレールはそこで言葉を詰まらせた。
オレリアはルクレールに抱き着いたまま、ぶんぶんと頭を横に振る。
ルクレールは、夏の空のような綺麗な青い瞳を揺らしながら、絞り出すように言った。
「……そばに、いてくれ…………」
切ない声でオレリアを呼んだ夫ルクレールが、視線を虚空に彷徨わせてから、そっと手のひらを宙にかざした。
オレリアは、自分が見えていない夫の手に、おずおずと手のひらを合わせる。
オレリアの手の感触もルクレールには感じられないだろうが、オレリアの手には、確かにルクレールの熱が感じられた。
――ここにいます。
開いたままの日記帳にペンを走らせると、ルクレールがそれを見てゆっくりと、オレリアの指をからめるように指を曲げた。
オレリアも、同じように彼には見えない手を、彼の大きな手にからめる。
オレリアの体が透明になって、もうすぐ一か月がすぎる。
オレリアの透明化が元に戻るまでは、あとおおよそ二か月だ。
(まだ二か月もあるなんて……)
こうして触れているのに、ルクレールの瞳にはオレリアは映らないし、感じてももらえない。
それがどうしようもなく苦しくて、オレリアはきゅっと唇をかんだ。
「オレリア。……オレリア。俺は、君に謝らないといけない」
ルクレールがかすれた声で告げる。
「俺はあの日……初夜の日、君にひどいことを言った。君を傷つけた。謝ったところで許されるわけではないとわかっているけれど……」
すまない、と。
震える声でルクレールが告げる。
「っ」
オレリアは彼とつないでいた手を離すと、反射的にルクレールに抱き着いた。
「そんなの、いいんです……!」
義母リアーヌから、ルクレールが過去に女性からひどく傷つけられたことがあると聞いた。
詳細まではわからないが、傷ついたルクレールが女性不信になっても、それは仕方のないことだ。
オレリアがいくら彼をぎゅっと抱きしめたところで、ルクレールには伝わらないだろう。
けれども、オレリアは小さく震える彼を、抱きしめずにはいられなかった。
「君が、俺との離縁を選んでも仕方がないとわかっている。でも……」
ルクレールはそこで言葉を詰まらせた。
オレリアはルクレールに抱き着いたまま、ぶんぶんと頭を横に振る。
ルクレールは、夏の空のような綺麗な青い瞳を揺らしながら、絞り出すように言った。
「……そばに、いてくれ…………」
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