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聖女の座を悪役令嬢に譲ってスローライフ!のはずが、何故か王子と悪役令嬢がもれなく付いている模様です
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悪役令嬢のことが嫌いになれなかった――、と言えば、いったいどのくらいの人が同調してくれるのだろう。
たぶん、わたしって相当珍しいんじゃないかな、と思う。
森本友理奈あらため、リーゼロッテ・ラフィーニャ・ウイルシュタッド十七歳。はい、この時点でおわかりかもしれませんが、気がついたら異世界に転生していました。
え? どうして異世界ってわかったかって?
わかりますよ。だってここは――
友理奈であったころのわたしが大好きだった、乙女ゲームの世界ですから!
認めます。
友理奈であったころのわたしは、一言でいえば「腐女子」でした。
えーえー、そうです。妄想大好き、乙女ゲーム大好き。十八禁ゲーム? もちろん手を出していましたよ! 女の子向けのえっちぃ読み物もね!
だってしょうがないじゃない?
友理奈であったわたしは、お世辞にも可愛いって顔じゃなかった。ちょっぴり太めだったし、高校の時に好きだった男子が「森本? いいやつだけど、女として見れないよなー」と友達と話しているのも聞いたしね!
そんなわたしが、うふふあははな妄想の世界に憑りつかれたって、きっと誰も責められないでしょう! ……だよね?
生まれ変わったらすっごい美人がいいなー、たとえば乙女ゲーム「忘却の聖女」の主人公みたいなー、なぁんて妄想していましたよ!
それがまさか、現実になるとは思いもしなかったけどね!
ということで、えー、友理奈あらため、わたしリーゼロッテは、乙女ゲーム「忘却の聖女」の中の主人公に転生していました。
忘却の聖女っていうのは、この国、エヴァンジェル国を舞台にしていて、もう何百年も出ていない聖女が現れるという予言師の予言から物語がはじまるの。
国の滅亡を聖女が救うというから、国をあげて聖女を探しはじめて、聖女を名乗る偽物がたくさん現れたり、あれやこれやと大騒ぎしながら、最後の方で主人公が聖女の力に目覚めて、攻略対象者とラブラブな結婚式をむかえるというストーリーなんだけど、まあ乙女ゲーム(十八禁じゃなかったけど、なかなかきわどいところまで描かれるゲームだったからね!)にありがちといえばありがちな、あんまりストーリーは重要視されていないようなゲーム。
おい、国の滅亡どこ行った! くらいの軽い感じのストーリーで、攻略対象者の好感度を上げるために行うのはダンスパーティーやデートなどのイベント。聖女として目覚めたあとに攻略対象者と神殿で国の安寧を祈るイベントはあるけど、取って付けたみたいな感じで、まあ、はい。ストーリー評価はあまり高くない。ただ後半の甘々イチャイチャがうけて、続編が次々と展開されている人気作だった。
さて、ここで冒頭の話の戻るんだけど。
乙女ゲームにありがちの悪役令嬢は、忘却の聖女の中にも存在する。
そして、わたしはその悪役令嬢であるユーグレーナが嫌いじゃない。
理由は単純なんだけど――、忘却の聖女の二作目のおまけストーリーで、ユーグレーナにスポットがあたって、彼女が何を考えていたかが描かれていて、そりゃあえげつないことばかりしていた彼女が、実はどれだけ第一王子(攻略対象の一人)を思っていたかがわかって、ちょっぴり切なくなってしまったの。
大好きなのに、バッドエンドでさえユーグレーナと王子が結ばれることはなくって――、なんてかわいそうな子! と感情移入しちゃったわけ!
と、いうことで、わたしは悪役令嬢ユーグレーナにひどく同情しているのだ。
そして今、わたしは一大決心をして、公爵である父と、その夫人である母の前に立っている。
両親は居間に入って来るなり突然仁王立ちした愛娘に、目をまんまるにしていた。
わたしの一大決心、それは――
「お父様、お母様。わたし、田舎で楽しくのんびりライフをエンジョイします!」
ヒロインの座をユーグレーナに譲っちゃって、田舎で楽しくスローライフを送るというものだった。
たぶん、わたしって相当珍しいんじゃないかな、と思う。
森本友理奈あらため、リーゼロッテ・ラフィーニャ・ウイルシュタッド十七歳。はい、この時点でおわかりかもしれませんが、気がついたら異世界に転生していました。
え? どうして異世界ってわかったかって?
わかりますよ。だってここは――
友理奈であったころのわたしが大好きだった、乙女ゲームの世界ですから!
認めます。
友理奈であったころのわたしは、一言でいえば「腐女子」でした。
えーえー、そうです。妄想大好き、乙女ゲーム大好き。十八禁ゲーム? もちろん手を出していましたよ! 女の子向けのえっちぃ読み物もね!
だってしょうがないじゃない?
友理奈であったわたしは、お世辞にも可愛いって顔じゃなかった。ちょっぴり太めだったし、高校の時に好きだった男子が「森本? いいやつだけど、女として見れないよなー」と友達と話しているのも聞いたしね!
そんなわたしが、うふふあははな妄想の世界に憑りつかれたって、きっと誰も責められないでしょう! ……だよね?
生まれ変わったらすっごい美人がいいなー、たとえば乙女ゲーム「忘却の聖女」の主人公みたいなー、なぁんて妄想していましたよ!
それがまさか、現実になるとは思いもしなかったけどね!
ということで、えー、友理奈あらため、わたしリーゼロッテは、乙女ゲーム「忘却の聖女」の中の主人公に転生していました。
忘却の聖女っていうのは、この国、エヴァンジェル国を舞台にしていて、もう何百年も出ていない聖女が現れるという予言師の予言から物語がはじまるの。
国の滅亡を聖女が救うというから、国をあげて聖女を探しはじめて、聖女を名乗る偽物がたくさん現れたり、あれやこれやと大騒ぎしながら、最後の方で主人公が聖女の力に目覚めて、攻略対象者とラブラブな結婚式をむかえるというストーリーなんだけど、まあ乙女ゲーム(十八禁じゃなかったけど、なかなかきわどいところまで描かれるゲームだったからね!)にありがちといえばありがちな、あんまりストーリーは重要視されていないようなゲーム。
おい、国の滅亡どこ行った! くらいの軽い感じのストーリーで、攻略対象者の好感度を上げるために行うのはダンスパーティーやデートなどのイベント。聖女として目覚めたあとに攻略対象者と神殿で国の安寧を祈るイベントはあるけど、取って付けたみたいな感じで、まあ、はい。ストーリー評価はあまり高くない。ただ後半の甘々イチャイチャがうけて、続編が次々と展開されている人気作だった。
さて、ここで冒頭の話の戻るんだけど。
乙女ゲームにありがちの悪役令嬢は、忘却の聖女の中にも存在する。
そして、わたしはその悪役令嬢であるユーグレーナが嫌いじゃない。
理由は単純なんだけど――、忘却の聖女の二作目のおまけストーリーで、ユーグレーナにスポットがあたって、彼女が何を考えていたかが描かれていて、そりゃあえげつないことばかりしていた彼女が、実はどれだけ第一王子(攻略対象の一人)を思っていたかがわかって、ちょっぴり切なくなってしまったの。
大好きなのに、バッドエンドでさえユーグレーナと王子が結ばれることはなくって――、なんてかわいそうな子! と感情移入しちゃったわけ!
と、いうことで、わたしは悪役令嬢ユーグレーナにひどく同情しているのだ。
そして今、わたしは一大決心をして、公爵である父と、その夫人である母の前に立っている。
両親は居間に入って来るなり突然仁王立ちした愛娘に、目をまんまるにしていた。
わたしの一大決心、それは――
「お父様、お母様。わたし、田舎で楽しくのんびりライフをエンジョイします!」
ヒロインの座をユーグレーナに譲っちゃって、田舎で楽しくスローライフを送るというものだった。
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