45 / 99
超年の差結婚だけど幸せでした! でも短すぎる夫婦生活だったのでやり直しを希望します!
3
しおりを挟む
「記憶喪失ぅ?」
旦那様――もとい、サイファス様は、素っ頓狂な声をあげた。
サイファス様によると、どうやらここはわたしがいた時間から四十年前――ちょうど戦争が終わったころの時代だった。
未来から来ましたなんてもちろん言えないし、でもなんとかしてこのままサイファス様と一緒にいたいわたしは、苦し紛れに「記憶喪失」と言うことにした。
サイファス様はあきれていたけれども、四十年前の世界のことなんてわたしは知らないから、意外と押し通すのは簡単だった。
名前だけは覚えていると言って、まんまとサイファス様に「ベル」と呼んでもらうことに成功したわたしは、「不安だ」「一人にしないで」とサイファス様にまとわりついて、彼の邸に連れて帰ってもらった。
「いいか、お嬢ちゃん。記憶が戻ったら出ていくんだぞ?」
ということは、ずっと記憶喪失のふりをしていたら、ずっと置いてくれるのかしら?
うんうんと頷くわたしに、サイファス様は「お嬢ちゃんの顔、誰かに似てるんだよなぁ」って頭をかいている。
うーん、たぶんそれ、おじいさまだと思うわ。
目元がよく似ているってお父様が言っていたもの。
でも、国王様の未来の孫娘ですなんて言えるはずがないから、にこにこと笑って誤魔化しておいたけど。
四十年前だから、旦那様は三十二歳か。若いころの旦那様もかっこいいなぁ。
サイファス様にもう一度会えたのが嬉しくて、どこに行くにも雛鳥みたいにあとをくっついて歩いていたら、とうとう笑われてしまった。
「ベル、変わってるって言われないか?」
「どうして?」
「普通、ベルみたいな若い娘は、俺のこの顔を怖がるんだがなぁ」
あー、確かにサイファス様の顔は一見すると怖いけど、でも、わたしは昔からたくさん遊んでもらったし、結婚してからはとっても優しくしてもらったし、全然怖くないわよ? あ、もちろん怒らせたら怖いのは知ってるけどね。
「怖くありませんわ」
わたしが平然と笑うものだから、サイファス様は虚を突かれたような顔をして、ぷいっと横を向いてしまった。ふふ、目元が少し赤くなっているわ、旦那様。
そしてまた、わたしがうしろをちょこちょこついて歩いていると、とうとうお腹を抱えて笑い出してしまった。
こうして、わたしとサイファス様の生活がはじまった――
旦那様――もとい、サイファス様は、素っ頓狂な声をあげた。
サイファス様によると、どうやらここはわたしがいた時間から四十年前――ちょうど戦争が終わったころの時代だった。
未来から来ましたなんてもちろん言えないし、でもなんとかしてこのままサイファス様と一緒にいたいわたしは、苦し紛れに「記憶喪失」と言うことにした。
サイファス様はあきれていたけれども、四十年前の世界のことなんてわたしは知らないから、意外と押し通すのは簡単だった。
名前だけは覚えていると言って、まんまとサイファス様に「ベル」と呼んでもらうことに成功したわたしは、「不安だ」「一人にしないで」とサイファス様にまとわりついて、彼の邸に連れて帰ってもらった。
「いいか、お嬢ちゃん。記憶が戻ったら出ていくんだぞ?」
ということは、ずっと記憶喪失のふりをしていたら、ずっと置いてくれるのかしら?
うんうんと頷くわたしに、サイファス様は「お嬢ちゃんの顔、誰かに似てるんだよなぁ」って頭をかいている。
うーん、たぶんそれ、おじいさまだと思うわ。
目元がよく似ているってお父様が言っていたもの。
でも、国王様の未来の孫娘ですなんて言えるはずがないから、にこにこと笑って誤魔化しておいたけど。
四十年前だから、旦那様は三十二歳か。若いころの旦那様もかっこいいなぁ。
サイファス様にもう一度会えたのが嬉しくて、どこに行くにも雛鳥みたいにあとをくっついて歩いていたら、とうとう笑われてしまった。
「ベル、変わってるって言われないか?」
「どうして?」
「普通、ベルみたいな若い娘は、俺のこの顔を怖がるんだがなぁ」
あー、確かにサイファス様の顔は一見すると怖いけど、でも、わたしは昔からたくさん遊んでもらったし、結婚してからはとっても優しくしてもらったし、全然怖くないわよ? あ、もちろん怒らせたら怖いのは知ってるけどね。
「怖くありませんわ」
わたしが平然と笑うものだから、サイファス様は虚を突かれたような顔をして、ぷいっと横を向いてしまった。ふふ、目元が少し赤くなっているわ、旦那様。
そしてまた、わたしがうしろをちょこちょこついて歩いていると、とうとうお腹を抱えて笑い出してしまった。
こうして、わたしとサイファス様の生活がはじまった――
28
お気に入りに追加
729
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。



ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる