39 / 99
拾ったわんこ(狼)が可愛すぎてモフりまくってたら襲われた(R18)
2
しおりを挟む
嫁き遅れるなんて、失礼しちゃうわ!
わたしはまだ十七歳なのに。まあ、十七歳から二十歳までが結婚適齢期とか言われているから、まだ婚約者が決まっていないわたしに、お父様が焦る気持ちもわかるけれど。
「結婚かぁー」
わたしは私室の部屋の絨毯の上にべたっと座って、寝そべったアレクサンダーを背もたれにしてゴロゴロしていた。
こんな様子を家庭教師のローザ夫人に見られたら一時間くらいお説教を食らいそうだけど、今日はお勉強がお休みだから見られる心配はない。
「アレクサンダー、一緒に行けるお家があるといいわね」
もふもふと彼の背中を撫でると、べろんと顔が舐められる。わたしは笑って身をよじると、アレクサンダーにぎゅっと抱きついた。
本当はわかっているの。
いつまでもこの条件を突き付けて縁談がまとまらなかったらお家が困るってことも。
だから、いつかは妥協しなくてはいけない。そうなったらアレクサンダーとはお別れだ。頻繁に実家に帰るわけにもいかないから、滅多に会うことができなくなる。
「ずっと一緒にいられればいいのに……」
ぽつんとつぶやいたわたしを、アレクサンダーの真っ赤な瞳がじっと見つめていた。
願いはかなうものだ。
「本当ですかお父様!」
先日お父様が持って来た縁談。その方がなんと、アレクサンダーと一緒でもいいとおっしゃっているらしい。
わたしはぱあっと顔を輝かせると、思わずお父様に抱きついた。
「なんて素敵な方! そのお話、お受けいたしますわ!」
どこの誰かもまったく聞いていない相手だが、こんな好条件は二度とないかもしれない。二つ返事で了承したわたしにお父様は少し複雑そうだが、お父様もこれを逃すと娘の嫁き遅れ確率がぐーんと上がることを充分わかっていて、先方にはお話を進めていただけるようにご連絡してくださるそうだ。
「それで、その方はどんな方ですの?」
縁談を決めてから相手のことを聞くのはいささか順番が逆な気がするが、例え相手がおじいちゃんであってもわたしは断る気はないのだから、べつにいい。
「ブラッドリー伯爵だよ」
「ブラッドリー伯爵?」
その名前はわたしも知っていた。
人嫌いで有名で、王都へは滅多にやってこない。いつも遠く離れた辺境の領地でおすごしとか。そのせいで、そのお姿を見た人はほとんどいない。謎に包まれたお方だった。
そんな方がどうしてわたしに縁談? と思わなくもなかったが、ブラッドリー伯爵とともに領地で暮らすことになるのであれば、王都よりも自由に走り回れてアレクサンダーも嬉しいはずだ。うん、お受けしてよかった。
お父様のお話だと、ブラッドリー伯爵の人嫌いは本当らしく、結婚式も上げたくないと言われているらしい。でも、大丈夫! ウエディングドレスにそれほど憧れはないし、政略結婚での結婚式の誓いなんて、心のこもっていない儀礼的なもの。むしろ面倒ごとがなくてラッキーだわ。
お父様はわたしのウエディングドレス姿がみたかったとかなんとかブツブツ言っているけれども、わたしはきれいさっぱり聞かなかったことにする。これからもアレクサンダーと一緒にいられることに大満足だった。
わたしはまだ十七歳なのに。まあ、十七歳から二十歳までが結婚適齢期とか言われているから、まだ婚約者が決まっていないわたしに、お父様が焦る気持ちもわかるけれど。
「結婚かぁー」
わたしは私室の部屋の絨毯の上にべたっと座って、寝そべったアレクサンダーを背もたれにしてゴロゴロしていた。
こんな様子を家庭教師のローザ夫人に見られたら一時間くらいお説教を食らいそうだけど、今日はお勉強がお休みだから見られる心配はない。
「アレクサンダー、一緒に行けるお家があるといいわね」
もふもふと彼の背中を撫でると、べろんと顔が舐められる。わたしは笑って身をよじると、アレクサンダーにぎゅっと抱きついた。
本当はわかっているの。
いつまでもこの条件を突き付けて縁談がまとまらなかったらお家が困るってことも。
だから、いつかは妥協しなくてはいけない。そうなったらアレクサンダーとはお別れだ。頻繁に実家に帰るわけにもいかないから、滅多に会うことができなくなる。
「ずっと一緒にいられればいいのに……」
ぽつんとつぶやいたわたしを、アレクサンダーの真っ赤な瞳がじっと見つめていた。
願いはかなうものだ。
「本当ですかお父様!」
先日お父様が持って来た縁談。その方がなんと、アレクサンダーと一緒でもいいとおっしゃっているらしい。
わたしはぱあっと顔を輝かせると、思わずお父様に抱きついた。
「なんて素敵な方! そのお話、お受けいたしますわ!」
どこの誰かもまったく聞いていない相手だが、こんな好条件は二度とないかもしれない。二つ返事で了承したわたしにお父様は少し複雑そうだが、お父様もこれを逃すと娘の嫁き遅れ確率がぐーんと上がることを充分わかっていて、先方にはお話を進めていただけるようにご連絡してくださるそうだ。
「それで、その方はどんな方ですの?」
縁談を決めてから相手のことを聞くのはいささか順番が逆な気がするが、例え相手がおじいちゃんであってもわたしは断る気はないのだから、べつにいい。
「ブラッドリー伯爵だよ」
「ブラッドリー伯爵?」
その名前はわたしも知っていた。
人嫌いで有名で、王都へは滅多にやってこない。いつも遠く離れた辺境の領地でおすごしとか。そのせいで、そのお姿を見た人はほとんどいない。謎に包まれたお方だった。
そんな方がどうしてわたしに縁談? と思わなくもなかったが、ブラッドリー伯爵とともに領地で暮らすことになるのであれば、王都よりも自由に走り回れてアレクサンダーも嬉しいはずだ。うん、お受けしてよかった。
お父様のお話だと、ブラッドリー伯爵の人嫌いは本当らしく、結婚式も上げたくないと言われているらしい。でも、大丈夫! ウエディングドレスにそれほど憧れはないし、政略結婚での結婚式の誓いなんて、心のこもっていない儀礼的なもの。むしろ面倒ごとがなくてラッキーだわ。
お父様はわたしのウエディングドレス姿がみたかったとかなんとかブツブツ言っているけれども、わたしはきれいさっぱり聞かなかったことにする。これからもアレクサンダーと一緒にいられることに大満足だった。
68
お気に入りに追加
731
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる