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追放された聖女は滅亡した妖精の国を蘇らせる

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 ウェーダル国第一王子が聖女エリーゼを伴って帰還したのは、それから一か月後ーー、ウェーダルがバーミリオンの手に落ちてからは実に半年ぶりのことだった。

 その時にはウェーダルはすでに、国土の多くを砂に飲み込まれていた。

 そうーー

 大樹を見上げながらアバロンが「一月待て」と告げた、その一月後。

 木々が枯れ砂の山と化した山々の大量の砂が、大きな竜巻に巻き上げられて、まるで蛇のごとくにウェーダルを襲った。

 そのころすでにバーミリオンは謎の病に侵されて床に就いており、逃げることもできずに襲いかかってきた砂によって城もろとも生き埋めにされたのである。

 不思議とウェーダルの自国民たちへの被害はほとんどなく、砂は狙ったようにバーミリオンの国の人間ばかりを襲い、三日続いた砂嵐の影響で国はほぼ壊滅状態に陥った。

 生き残った砂漠の民たちは聖女の呪いだと騒ぎ立てながら自分たちの国へ逃げ帰った。

 ロベルトはあまりの惨状に言葉を失ったが、アバロンを責めることはできなかった。

 エリーゼとともに傷だらけの国に戻った彼は、ウェーダルの民たちに迎えられて王になった。

 そしてーー

「エリーゼ、君には本当に驚かされる」

 エリーゼは砂に埋もれた国を見て嘆き、膝をついて祈りをささげた。

 侵略者が消え、新たな王の誕生に、ウェーダルの民たちが絶望の中にありながら小さな希望を見出していたその時だった。

 ロベルトの横で指を組んで祈りをささげていたエリーゼの体から淡い光があふれだして、砂に埋もれた大地に次々と草木が芽吹きはじめたのである。

 枯れたと思われた川には瞬く間に水があふれ、芽吹いた草木は急速に成長しはじめる。

 孤島の、妖精の国からやってきた妖精たちが歌いながら国中を踊り、それにあわせて山や川、田畑までもが、まるで時間を遡るかのように元の姿に戻っていく。

 人々は聖女の起こした奇跡にむせび泣き、歓声をあげて、新たなウェーダル国王と聖女を深くたたえたのだった。





 すっかり元通りになったウェーダルでは、今まさに国を挙げての一大行事がはじまろうとしていた。

 純白の花嫁衣装に身を包んだエリーゼは、ロベルトの手を取って微笑む。

 聖女である女性はその生涯を神殿ですごす。聖女の祈りは神殿でなくては聞き届けられないと言われていたからだ。

 けれどもエリーゼは、皆が見ている中で奇跡を起こした。

 ロベルトはその直後にエリーゼの手を取って求婚し、人々は聖女が王妃になることを受け入れたのである。

 聖堂の天井からは、先ほどから白い小さな花が舞い落ちていた。何もないところから降ってくる花々は、妖精たちの仕業に違いないが、すでに奇跡とともに妖精が受け入れられたウェーダルでは誰も驚きはしなかった。

 聖女エリーゼは妖精に祝福されたこの国の王妃である。

 人々は子々孫々までそう語り継ぎ、ウェーダルに起こった奇跡を忘れなかった。

 エリーゼは妖精たちと国民たちに見守られながら、そっと夫となる国王と口づけを交わした。




  ~~~完~~~

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