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湖には魔物がすんでいる!?
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焼きもち、と言われてスノウはキョトンとした。
(焼きもち……?)
突然言われた言葉に驚いて、怒っていることも忘れてパチパチと瞬きをくり返す。
瞬くたびにこぼれていく涙を、ヴィクトールが愛おしそうに唇ですくった。
よくわからずに、じっとヴィクトールを見つめていると、彼はなぜか嬉しそうに微笑みながら訊ねてくる。
「だってスノウ、僕がほかの女の子とおしゃべりしているの、いやだったんでしょう?」
「いや!」
「どうして?」
「……う?」
スノウは考えた。
どうして、と言われても困る。
胃のあたりがムカムカして、心がズキズキして不快な気分になった。ヴィクトールはいつもスノウをおいてどこかに行くくせに、スノウと違う女の子と仲良くしているのはひどいと思う。でも、どうして「いや」だったのかがわからない。でも「いや」なものは「いや」なのだ。
そう答えると、ヴィクトールはくすくす笑いながらさらに訊ねてきた。
「じゃあ、僕とビビアンさんがお話ししているのは、いや?」
スノウは少し考えて首を横に振る。
「今日みたいに、女の子とお話ししているのは?」
「いや!」
「それは何が違うんだろう?」
「……む?」
「ビビアンさんと僕がお話しするのは、スノウの言う『浮気』じゃないのかな?」
「違う」
「今日は?」
「浮気!」
ヴィクトールはまたくすくすと笑う。
どうしてヴィクトールは楽しそうなのだろう。スノウは怒っているのに。
「そっか……、スノウ、焼きもち焼いてくれたんだね」
ちゅっと頬にキスをされて、スノウはぷうっと頬を膨らませる。
まだヴィクトールのことは許してないのに、キスをされて嬉しいと思うのが悔しかった。
「ヴィー、すぐにどこかに行く」
悔しかったので、いつもは言わない愚痴も口をついて出てくる。
「いつも、わたしはお留守番。……いつも、浮気?」
口を尖らせて訊ねれば、ぷっとヴィクトールが吹き出した。
ぎゅーっとスノウを抱きしめて、くすくすと笑い続けるヴィクトールに、スノウは「むぅ」とする。
「ヴィー!」
「ああ、ごめんごめん。違うよ。浮気じゃない。今日だって、浮気じゃないよ?」
「楽しそうだった」
「でも、こんなことはしてないでしょ?」
ちゅっと尖らせたスノウの口に、ヴィクトールはキスを落とす。
「僕は、キスはスノウにしかしないよ」
「む?」
「僕が大好きなのもスノウだけ」
そのまま、ヴィクトールがキスを深めてくる。
スノウは最初口をつぐんでささやかな抵抗を見せていたが、やがて観念したように口を開いた。
優しく舌を絡めながら、ヴィクトールがスノウの手首を拘束していたガウンの紐を解いてくれる。
スノウはまだ少し納得がいかなかったが、大好きだよというヴィクトールのささやきを聞きながら、キスはスノウにしかしないのならば許してあげようと、体の力を抜いてヴィクトールを受け入れた。
(焼きもち……?)
突然言われた言葉に驚いて、怒っていることも忘れてパチパチと瞬きをくり返す。
瞬くたびにこぼれていく涙を、ヴィクトールが愛おしそうに唇ですくった。
よくわからずに、じっとヴィクトールを見つめていると、彼はなぜか嬉しそうに微笑みながら訊ねてくる。
「だってスノウ、僕がほかの女の子とおしゃべりしているの、いやだったんでしょう?」
「いや!」
「どうして?」
「……う?」
スノウは考えた。
どうして、と言われても困る。
胃のあたりがムカムカして、心がズキズキして不快な気分になった。ヴィクトールはいつもスノウをおいてどこかに行くくせに、スノウと違う女の子と仲良くしているのはひどいと思う。でも、どうして「いや」だったのかがわからない。でも「いや」なものは「いや」なのだ。
そう答えると、ヴィクトールはくすくす笑いながらさらに訊ねてきた。
「じゃあ、僕とビビアンさんがお話ししているのは、いや?」
スノウは少し考えて首を横に振る。
「今日みたいに、女の子とお話ししているのは?」
「いや!」
「それは何が違うんだろう?」
「……む?」
「ビビアンさんと僕がお話しするのは、スノウの言う『浮気』じゃないのかな?」
「違う」
「今日は?」
「浮気!」
ヴィクトールはまたくすくすと笑う。
どうしてヴィクトールは楽しそうなのだろう。スノウは怒っているのに。
「そっか……、スノウ、焼きもち焼いてくれたんだね」
ちゅっと頬にキスをされて、スノウはぷうっと頬を膨らませる。
まだヴィクトールのことは許してないのに、キスをされて嬉しいと思うのが悔しかった。
「ヴィー、すぐにどこかに行く」
悔しかったので、いつもは言わない愚痴も口をついて出てくる。
「いつも、わたしはお留守番。……いつも、浮気?」
口を尖らせて訊ねれば、ぷっとヴィクトールが吹き出した。
ぎゅーっとスノウを抱きしめて、くすくすと笑い続けるヴィクトールに、スノウは「むぅ」とする。
「ヴィー!」
「ああ、ごめんごめん。違うよ。浮気じゃない。今日だって、浮気じゃないよ?」
「楽しそうだった」
「でも、こんなことはしてないでしょ?」
ちゅっと尖らせたスノウの口に、ヴィクトールはキスを落とす。
「僕は、キスはスノウにしかしないよ」
「む?」
「僕が大好きなのもスノウだけ」
そのまま、ヴィクトールがキスを深めてくる。
スノウは最初口をつぐんでささやかな抵抗を見せていたが、やがて観念したように口を開いた。
優しく舌を絡めながら、ヴィクトールがスノウの手首を拘束していたガウンの紐を解いてくれる。
スノウはまだ少し納得がいかなかったが、大好きだよというヴィクトールのささやきを聞きながら、キスはスノウにしかしないのならば許してあげようと、体の力を抜いてヴィクトールを受け入れた。
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