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お猫様はどこに消えた!?
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翌朝――
「ヴィー! シロが戻って来たよ!」
ヴィクトールは興奮したスノウの声で、穏やかなまどろみの中からたたき起こされた。
ヴィクトールよりも早く目覚めたスノウは、下のポストまでヴィクトールが購読している新聞を取りに行って、アパルトマンの目の前の道で、丸くなって眠っている白猫を発見したらしい。
「スノウ――、もう少し寝かせて……」
昨夜が遅かったヴィクトールは、スノウを引き寄せて腕の中に閉じ込め、再び眠りに落ちようとするが、スノウに鼻をつままれて眉を寄せる。
「だめ! もう朝です! 今日は一緒におでかけって言った!」
そう、確かにヴィクトールは言った。
律儀な公爵令息シオン・ハワードは、ミーア捜索の約束をしたときに、無償で仕事を頼むのは申し訳ないからと、捜査料金を支払おうとした。
しかし、国王からたんまりと前金を受け取っていて、なおかつ隣国の大臣から依頼された仕事でそれ以上の金を手に入れていたヴィクトールは、金よりももっと有意義なものを手に入れようと考えたのだ。
そして、ハワード家が所有しているどこかの別荘を貸してくれと頼んでみたところ、そんなことはお安いご用だと、シオンが一月ほど湖の近くにある別荘を貸してくれたのである。
しばらくゆっくりするつもりのヴィクトールは、今日からそこへ向かうつもりで、昨日のうちにスノウに身支度を整えておくように告げていた。
留守の間、部屋の管理はビビアンに頼んである。
広い邸と、豊かな自然の中、スノウとのんびりする予定に変更はないが――、さすがに朝が早すぎやしないだろうか。
ヴィクトールはカーテンの隙間から日差しが差し込んでいないのを確認すると、スノウに訊ねる。
「スノウ、おひさまは登っていた?」
「ううん、まだ暗かったよ」
「……」
いつもなら、スノウはこの時間は夢の中なのに、一人で目を覚ましたのは、よほどお出かけが楽しみなのだろう。――が、ヴィクトールは、まだ眠たい。
ヴィクトールは少し考え――、スノウの手首を掴んだまま、くるりと体制を変えた。
「う?」
ヴィクトールに組み敷かれたような形となったスノウは、大きな目をさらに大きくさせて戸惑ったようだった。
ヴィクトールは構わず、むき出しの白い首筋に唇を落とす。
「ぴっ」
スノウが小さく声をあげて、慌ててヴィクトールの腕の中から逃れようとするが、膝を割られ、しっかりと押さえつけられているので逃げられない。
ヴィクトールはあわあわしているスノウにかまわず、その細い腰を撫でて、太ももに手のひらを滑らせる。
「ヴィ―! ヴィ―! 朝なのっ」
ヴィクトールの下で必死に朝アピールをするスノウが、うるうると涙目になっている。
(あー……、かわいい)
おとなしくさせるために悪戯を仕掛けてみたが、このまま本当にスノウの中に押し入りたくなってくる。
しかし、お出かけを楽しみにしているスノウに無茶をさせて、起き上がれなくさせてしまえば、きっとスノウはものすごく怒るだろう。
仕方なくヴィクトールはスノウの耳元に唇を寄せてささやいた。
「このまま僕とイイことをするのと、もう少し一緒に仲良く朝寝を楽しむのと、スノウはどっちがいいかな?」
「ヴィ―、いじわる……」
スノウは恨めし気にヴィクトールを睨んだが、朝から疲れることをしてお出かけの予定が頓挫する危険性はわかっているのだろう、ヴィクトールの腕の中でおとなしくなると、「お日様が昇るまでだからね!」と言って、二人で朝寝を楽しむことを選んだ。
ヴィクトールはくすくすと笑いながら、スノウを抱きしめて、彼女の頭をゆっくりと撫でる。
寝つきのいいスノウが、ヴィクトールよりも先に、くぅくぅと寝息をたてはじめると、彼はその愛らしい頬にキスをした。
カーテンの隙間から見える窓外では、空がだんだんと白みはじめている。
ヴィクトールはスノウとすごす一か月の別荘生活に思いをはせながら、ふわりと欠伸をひとつして、ゆっくりと目を閉ざした。
もうじき、ロゼインブルグに夏が来る――
「ヴィー! シロが戻って来たよ!」
ヴィクトールは興奮したスノウの声で、穏やかなまどろみの中からたたき起こされた。
ヴィクトールよりも早く目覚めたスノウは、下のポストまでヴィクトールが購読している新聞を取りに行って、アパルトマンの目の前の道で、丸くなって眠っている白猫を発見したらしい。
「スノウ――、もう少し寝かせて……」
昨夜が遅かったヴィクトールは、スノウを引き寄せて腕の中に閉じ込め、再び眠りに落ちようとするが、スノウに鼻をつままれて眉を寄せる。
「だめ! もう朝です! 今日は一緒におでかけって言った!」
そう、確かにヴィクトールは言った。
律儀な公爵令息シオン・ハワードは、ミーア捜索の約束をしたときに、無償で仕事を頼むのは申し訳ないからと、捜査料金を支払おうとした。
しかし、国王からたんまりと前金を受け取っていて、なおかつ隣国の大臣から依頼された仕事でそれ以上の金を手に入れていたヴィクトールは、金よりももっと有意義なものを手に入れようと考えたのだ。
そして、ハワード家が所有しているどこかの別荘を貸してくれと頼んでみたところ、そんなことはお安いご用だと、シオンが一月ほど湖の近くにある別荘を貸してくれたのである。
しばらくゆっくりするつもりのヴィクトールは、今日からそこへ向かうつもりで、昨日のうちにスノウに身支度を整えておくように告げていた。
留守の間、部屋の管理はビビアンに頼んである。
広い邸と、豊かな自然の中、スノウとのんびりする予定に変更はないが――、さすがに朝が早すぎやしないだろうか。
ヴィクトールはカーテンの隙間から日差しが差し込んでいないのを確認すると、スノウに訊ねる。
「スノウ、おひさまは登っていた?」
「ううん、まだ暗かったよ」
「……」
いつもなら、スノウはこの時間は夢の中なのに、一人で目を覚ましたのは、よほどお出かけが楽しみなのだろう。――が、ヴィクトールは、まだ眠たい。
ヴィクトールは少し考え――、スノウの手首を掴んだまま、くるりと体制を変えた。
「う?」
ヴィクトールに組み敷かれたような形となったスノウは、大きな目をさらに大きくさせて戸惑ったようだった。
ヴィクトールは構わず、むき出しの白い首筋に唇を落とす。
「ぴっ」
スノウが小さく声をあげて、慌ててヴィクトールの腕の中から逃れようとするが、膝を割られ、しっかりと押さえつけられているので逃げられない。
ヴィクトールはあわあわしているスノウにかまわず、その細い腰を撫でて、太ももに手のひらを滑らせる。
「ヴィ―! ヴィ―! 朝なのっ」
ヴィクトールの下で必死に朝アピールをするスノウが、うるうると涙目になっている。
(あー……、かわいい)
おとなしくさせるために悪戯を仕掛けてみたが、このまま本当にスノウの中に押し入りたくなってくる。
しかし、お出かけを楽しみにしているスノウに無茶をさせて、起き上がれなくさせてしまえば、きっとスノウはものすごく怒るだろう。
仕方なくヴィクトールはスノウの耳元に唇を寄せてささやいた。
「このまま僕とイイことをするのと、もう少し一緒に仲良く朝寝を楽しむのと、スノウはどっちがいいかな?」
「ヴィ―、いじわる……」
スノウは恨めし気にヴィクトールを睨んだが、朝から疲れることをしてお出かけの予定が頓挫する危険性はわかっているのだろう、ヴィクトールの腕の中でおとなしくなると、「お日様が昇るまでだからね!」と言って、二人で朝寝を楽しむことを選んだ。
ヴィクトールはくすくすと笑いながら、スノウを抱きしめて、彼女の頭をゆっくりと撫でる。
寝つきのいいスノウが、ヴィクトールよりも先に、くぅくぅと寝息をたてはじめると、彼はその愛らしい頬にキスをした。
カーテンの隙間から見える窓外では、空がだんだんと白みはじめている。
ヴィクトールはスノウとすごす一か月の別荘生活に思いをはせながら、ふわりと欠伸をひとつして、ゆっくりと目を閉ざした。
もうじき、ロゼインブルグに夏が来る――
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