【旦那様は魔王様 外伝】魔界でいちばん大嫌い~絶対に好きになんて、ならないんだから!~

狭山ひびき@バカふり200万部突破

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魔界で一番愛してる

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 ミリアムはふかふかの絨毯じゅうたんの上で膝を抱えて、猫の子のように丸くなっていた。

 ミリアムの自室の半分ほどの広さしかない部屋の中の床には、モスグリーンの毛足の長い絨毯が敷かれ、簡素なベッドと小さなテーブルがおいてある。

 城の裏手にある山の中の、小さな家の中だった。

 ミリアムが産まれる前に、両親が二人きりでのんびり過ごすためだけに建てたらしい。数年前に母から教えられて、以来、愛馬を走らせるついでに、ミリアムはたまにここに訪れていた。

 山の中だからかとても静かで、鳥のさえずる声や、虫の音しか聞こえない。

 ガーネットのせいでささくれ立った心を落ち着けるには、もってこいの静けさだった。

「花嫁……候補……」

 ミリアムには結婚してくれなんて一言も言わないくせに。

「アスヴィルの、馬鹿。きらい。嘘つき。裏切りもの」

 ごろん、とミリアムは絨毯の上を転がる。

 ショックを受けてあふれた涙は引っ込んだが、まだ心がじくじく痛い。

 別に、ガーネットの「花嫁候補」という言葉をすべて真に受けているわけでない。

 あの不器用で朴念仁な男が、器用に二股をかけられるなんて思っていないからだ。

 だが、ガーネットが「花嫁候補」というにはそれなりに理由があるはずで―――きっとそれは、ミリアムが手に入らなかったときの保険なんだろうなと思うと、すごく腹が立った。

 確かに、ミリアムはこの十一年間、アスヴィルの愛しているという言葉を無視し続けてきた。だからと言って、保険をかけておくのはひどすぎる。

 アスヴィルの「愛している」を、少し信じられるようになったのに、また信じられなくなった。

「アスヴィル……」

 ミリアムはつぶやいて、そっと目を閉じた。
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