【旦那様は魔王様 外伝】魔界でいちばん大嫌い~絶対に好きになんて、ならないんだから!~

狭山ひびき@バカふり200万部突破

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やさしい夜と気づいた想い

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 薄く目を開いたアスヴィルは、腕の中で健やかな寝息を立てている最愛の女性の姿に、息を呑んで硬直した。

 記憶を手繰り寄せ、昨夜、酔ったミリアムと一緒に眠ったことを思い出す。

(もう、本当に死んでもいいかもしれない……)

 華奢で柔らかいミリアムをつぶさないよう、優しく抱きしめてみる。

 するとミリアムは、すりすりと子猫がすり寄るように甘えてきた。

「ああ……可愛すぎる……」

 あまりの幸せに、感動して目が潤んでくる。

 この一年、ミリアムに近づくことすら禁止されていたアスヴィルにとって、夢の中にいるような幸せだった。いや、夢かもしれない。アスヴィルはそう思い自分の頬をつねってみたが、痛みがあることを知ると、胸の内に幸福感が広がった。

(このまま時間が止まればいいのに……)

 アスヴィルはベッドに広がるミリアムの真っ赤な髪を、愛おしそうに指先で梳いた。

 いい匂いがする。甘い匂いだ。

 本当は、ミリアムが目覚める前に部屋から出て行った方がいいのかもしれない。だが、アスヴィルはこの幸せを、一秒でも長く堪能していたかった。

「ミリアム、愛してる……」

 アスヴィルはミリアムの耳元でささやいて、長いまつ毛に縁どられた彼女の双眸が開くその時まで、ミリアムの寝顔を見続けていたのだった。
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