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愛していると言わないで
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それは突然起こった。
朝食後、ミリアムが窓際で読書を楽しもうと思っていた時のことである。
ドカアアアアアンッ
聞いたこともないような爆音が響き渡り、さすがのミリアムも血相を変えて廊下に飛び出した。
「なんなの!?」
廊下は騒然となっていた。使用人たちが右往左往し、捕まえて情報を得ようにも、誰一人としてまともな回答をしない。
仕方なくミリアムは、音がした方へ行ってみることにした。
城の裏手に回って、ミリアムは唖然とした。
まるで隕石でも降ってきたかのように、城が大きくえぐれている。
城の残骸が裏庭に山のように降り積もり、ところどころ焦げたような色になっていた。
「なんなの、これ……」
茫然としたミリアムの前に、犯人たちはすぐに現れた。
この城の残骸を前にしても、まだ臨戦態勢で、火の玉やら氷の刃やらを出現させ、睨みあっている。
ミリアムは両手で頭を抱えた。
セリウスとアスヴィルだ。
彼ら睨みあい、互いに距離を取りながら、怒鳴りあっていた。
「人の妹のそばを、性懲りもなくちょろちょろと! 二度とミリアムの姿が拝めないよう、その両目をつぶしてやるから覚悟しろ!」
「殿下の方こそ、いい年して妹にべたべたべたべたと! 恥ずかしくないんですか! いい加減妹離れしたらどうですか、シスコンも度を超すと気持ち悪いんですよ!」
なるほど、いつもこうやって喧嘩をしていたのか。ミリアムはあきれてものも言えなかった。
「気持ち悪いのはお前の方だろう! 強面のくせに乙女趣味の方がよっぽど質が悪いわ!」
「人の趣味をとやかく言わないでいただきたい! 殿下こそ、その傍迷惑で唯我独尊的な性格を少しは矯正したらどうですか!」
「予定変更だ! 目だけではなくその喉もつぶしてやる!」
「やれるものならやってみなさい!」
ミリアムはハッとした。二人が、それぞれに生み出した火の玉やら氷の刃を使って、攻撃しようとしていることに気が付いたからである。
これ以上ここでぶつかり合っては、この城すべてが破壊されかねない。
「や、やめ―――」
やめなさい、とミリアムが止めようとした時だった。
「いい加減にしろ―――!!」
耳をつんざくような怒号が響きわたり、セリウスとシヴァが生み出していた火の玉や氷の刃が一瞬で消え去った。
びりびりと肌が焼けるような怒りを感じ、ミリアムは恐る恐る声のした方を見た。
そこには、腕を組んで額に青筋を浮かべ、仁王立ちで立っているシヴァの姿があった。
シヴァは裏庭の惨状を見、えぐれた城を見上げ、その元凶であるセリウスとアスヴィルを鋭く睨みつけた。
「これはどういうことだ!?」
魔王に睨まれて、さすがの二人も青くなった。
めったにない、シヴァの本気の怒りだ。これはまずい。
アスヴィルは慌ててその場に膝をつき、頭を下げた。
「申し訳ございません……」
「謝れとは言っていない。これはどういうことだと訊いているんだ。セリウス!」
「あ……。ちょっと、やりすぎちゃって……。すいません」
「これのどこがちょっとだ!」
シヴァはびしっと破壊された城を指さした。
「いいかお前ら、責任をもって、これを元通りにしろ! いいな!? それが終わったら、それぞれ処罰を言い渡すから、覚悟しておけ!!」
魔王の逆鱗に触れた彼らは、肩を落として頷いた。
――それから一週間のち、セリウスとアスヴィルの魔力をもってして城が元通りになると、セリウスは向こう十年間、城への出入りを禁止されたのだった。
朝食後、ミリアムが窓際で読書を楽しもうと思っていた時のことである。
ドカアアアアアンッ
聞いたこともないような爆音が響き渡り、さすがのミリアムも血相を変えて廊下に飛び出した。
「なんなの!?」
廊下は騒然となっていた。使用人たちが右往左往し、捕まえて情報を得ようにも、誰一人としてまともな回答をしない。
仕方なくミリアムは、音がした方へ行ってみることにした。
城の裏手に回って、ミリアムは唖然とした。
まるで隕石でも降ってきたかのように、城が大きくえぐれている。
城の残骸が裏庭に山のように降り積もり、ところどころ焦げたような色になっていた。
「なんなの、これ……」
茫然としたミリアムの前に、犯人たちはすぐに現れた。
この城の残骸を前にしても、まだ臨戦態勢で、火の玉やら氷の刃やらを出現させ、睨みあっている。
ミリアムは両手で頭を抱えた。
セリウスとアスヴィルだ。
彼ら睨みあい、互いに距離を取りながら、怒鳴りあっていた。
「人の妹のそばを、性懲りもなくちょろちょろと! 二度とミリアムの姿が拝めないよう、その両目をつぶしてやるから覚悟しろ!」
「殿下の方こそ、いい年して妹にべたべたべたべたと! 恥ずかしくないんですか! いい加減妹離れしたらどうですか、シスコンも度を超すと気持ち悪いんですよ!」
なるほど、いつもこうやって喧嘩をしていたのか。ミリアムはあきれてものも言えなかった。
「気持ち悪いのはお前の方だろう! 強面のくせに乙女趣味の方がよっぽど質が悪いわ!」
「人の趣味をとやかく言わないでいただきたい! 殿下こそ、その傍迷惑で唯我独尊的な性格を少しは矯正したらどうですか!」
「予定変更だ! 目だけではなくその喉もつぶしてやる!」
「やれるものならやってみなさい!」
ミリアムはハッとした。二人が、それぞれに生み出した火の玉やら氷の刃を使って、攻撃しようとしていることに気が付いたからである。
これ以上ここでぶつかり合っては、この城すべてが破壊されかねない。
「や、やめ―――」
やめなさい、とミリアムが止めようとした時だった。
「いい加減にしろ―――!!」
耳をつんざくような怒号が響きわたり、セリウスとシヴァが生み出していた火の玉や氷の刃が一瞬で消え去った。
びりびりと肌が焼けるような怒りを感じ、ミリアムは恐る恐る声のした方を見た。
そこには、腕を組んで額に青筋を浮かべ、仁王立ちで立っているシヴァの姿があった。
シヴァは裏庭の惨状を見、えぐれた城を見上げ、その元凶であるセリウスとアスヴィルを鋭く睨みつけた。
「これはどういうことだ!?」
魔王に睨まれて、さすがの二人も青くなった。
めったにない、シヴァの本気の怒りだ。これはまずい。
アスヴィルは慌ててその場に膝をつき、頭を下げた。
「申し訳ございません……」
「謝れとは言っていない。これはどういうことだと訊いているんだ。セリウス!」
「あ……。ちょっと、やりすぎちゃって……。すいません」
「これのどこがちょっとだ!」
シヴァはびしっと破壊された城を指さした。
「いいかお前ら、責任をもって、これを元通りにしろ! いいな!? それが終わったら、それぞれ処罰を言い渡すから、覚悟しておけ!!」
魔王の逆鱗に触れた彼らは、肩を落として頷いた。
――それから一週間のち、セリウスとアスヴィルの魔力をもってして城が元通りになると、セリウスは向こう十年間、城への出入りを禁止されたのだった。
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