【旦那様は魔王様 外伝】魔界でいちばん大嫌い~絶対に好きになんて、ならないんだから!~

狭山ひびき@バカふり200万部突破

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降ってきた妖精

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(なんだって、お見合いなんて……)

 アスヴィルは心の中で父親に向かって悪態をついた。

 明日の見合いが憂鬱で仕方がない。

 アスヴィルは別に女が嫌いなわけではないし、今まで交際した女性は何人かいたが、結婚とは別の話なのだ。

 こういう言い方をすれば今まで交際した女性に失礼かもしれないが、誰一人として、アスヴィルの心を動かした女性はいなかった。

 嫌いではないが好きにはなれない―――アスヴィルにとって女性とはそういう生き物だった。結婚したところで、その女性を愛せる自信がない。

 アスヴィルはとぼとぼと城の庭に降りた。

 正直、見合いなんてすっぽかしてしまいたい。

 だが、鼻息荒く、「結婚!」とせっついている父が、アスヴィルの逃亡を許すはずはなかった。

「はあ……」

 アスヴィルは誰も見ていないのをいいことに、盛大なため息を吐いた。

 その時だった。

 頭上から、ガサガサガサ、という音が聞こえたかと思えば、

「きゃあああああ!」

 という悲鳴とともに、上から何かが降ってきた。

 アスヴィルは反射的に顔を上げ、慌てて落ちてきたものを受け止めた。

 水色のドレスを着たそれは、ふんわりと軽く、愛らしく、柔らかかった。

 ――アスヴィルは一瞬、それを妖精だと思った。
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