シンデレラは貧乏性~結婚に必要な条件は『金銭感覚』です!~

狭山ひびき@バカふり200万部突破

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隣国の王子は好敵手

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 次の日――

「くしゅん!」

「風邪ですねぇ」

 ベッドの上でくしゃみをくり返すリチャードの額に手を当てて、カレンはそう判断した。それほど高くはないが熱もありそうだ。

 暖炉に薪をくべて、部屋の中を温かくし、暖炉の上に水の入った鍋をかけて部屋の中を加湿する。

 ロゼウスに事情を説明すると侍医が呼ばれて、リチャードに今日一日の安静を告げた。

 侍医はカレンに薬を手渡すと部屋を出て行き、ロゼウスにはリチャードを頼むと告げられる。彼はリチャードの仕事でかわりにできるものを担当するそうだ。

 カレンは食事を運んできてくれる兵士にポリッジを頼み、お湯に蜂蜜を溶かしてレモンを絞り、ベッドに上体を起こしているリチャードに差し出す。

「喉が痛いのがおさまりますから、飲んでくださいね」

 リチャードは素直にカップを受け取ると、ぼんやりした表情を浮かべながらちびちびと飲みはじめた。

「風邪なんて、久しぶりに引いた……」

「昨日は寒かったですからね」

 リチャードの方に上着をかけて、カレンはからになったカップを受け取る。

 粥を持った兵士がやってきたので、ワゴンを受け取って中に入った。

 ワゴンには粥のほかに、ジャガイモのポタージュとリンゴジュースが乗っている。

 粥より味の濃いスープを先に飲むと粥が味気なく感じてしまうため、カレンは先に粥の入った皿をリチャードに手渡した。

 あまり食欲がないと言ったリチャードだが、時間をかけて粥とポタージュ、リンゴジュースを完食して横になる。

「今日は勉強を休みにするから、この部屋にいてくれ」

 どうやら風邪を引いて心細いらしい。

 カレンが頷くと、リチャードはやがて安心したように寝息をかきはじめた。

 カレンは自室から本を持ってくると、リチャードのベッドサイドに椅子を引っ張って行ってそこで本を開く。

 時折リチャードの様子を見ながら、苦しそうな表情をしていないかどうかを確認して、本に視線を落とす――、しばらくの間そうしてすごしていたが、ふとリチャードの前髪が汗で張り付いていることに気がつき立ち上がった。

 額に手を当てると、さっきより熱が上がっている気がする。

「冷やすもの、取ってきた方がよさそうね」

 カレンは椅子の上に本をおいて、そっと部屋から抜け出した。
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