シンデレラは貧乏性~結婚に必要な条件は『金銭感覚』です!~

狭山ひびき@バカふり200万部突破

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王子の体質改善係

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「俺を探していたのは、金貨目的……?」

 いまだかつて、こんなに屈辱的な思いをしたことがあっただろうか――、いや、ない。

 リチャードはニワトリを抱きしめてよしよしと首元を撫でている可憐な少女を見つめた。

 天使みたいな顔をしているのに、悪魔のような娘だ。

 確かに、リチャードも「蕁麻疹が出ない」というだけでカレンに求婚したけれど、しかし「賞金の金貨」目的でリチャードを探していた彼女も彼女だ。

(俺がいつまでたっても相手を決めないから、父上が賞金を出していたのは知っていたけど……)

 まさか、「王子とダンス」よりも「賞金」につられる娘がいるとは思わなかった。

(俺の価値は金貨五十枚以下……)

 自分と金貨が天秤にかけられてあっさり金貨に傾くさまを想像して、リチャードは泣きたくなる。

 しかも、振られた理由が「金銭感覚」が違うから。なんだそれは。金銭感覚? そんなものを気にしなくてもいいだろう。城で帳簿をつけろなんて言っていないのだから!

 花やドレス、宝石に囲まれて、毎日楽しくきらびやかに生活することの何が嫌なのだ。世のほとんどの女性が夢見る光景じゃないのか?

(でも、だからと言って、この子を諦めるわけには……)

 リチャードにはあとがない。触れて蕁麻疹が出なかった女性なんて、今まで誰一人としていなかった。五歳児に触れられても蕁麻疹が出るのだ。リチャードにとって彼女は奇跡そのもの。何としても手に入れる必要がある。

 だが、楽しくニワトリと触れ合っている彼女を頷かせるにはどうすればいい。

(金貨と言っていたな……。もしかして、金が欲しいのか?)

 リチャードはぐるぐる考える。認めるにはものすごく矜持にダメージを受けるが、どうやら彼女はリチャードよりも金。つまりは、金で釣ればなんとかなるかもしれない。

 しかし、花嫁を金で買う男というのはどれほど最低な男だろう。

(……後がないとはいえ、最悪だ)

 リチャードは内心で頭を抱える。

 カレンはほしい。この先、彼女のように触れても蕁麻疹の出ない女性が現れる可能性はかなり低い。ここで手に入れなければ一生後悔することになる。でも、金で女性を買うのはプライドが許さないし、何より罪悪感がある。

 リチャードは考えた末、カレンを自分に惚れさせればいいのだと言う結論にたどり着いた。だが、伯爵邸と王城、離れた場所で生活し、接点がなければ、惚れさせることなど不可能に近い。

 リチャードはじっとカレンを見つめて、そして言った。

「金が欲しいなら、城で働かないか?」

 カレンはニワトリを抱いたまま、きょとんと目を丸く見開いた。
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