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大妖精の妻

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 メリーエルの目の前で、ユリウスだったものがゆらりと揺れる。

 ユリウスだったものは黒い靄になり、やがて姿を変えて、黒いフード付きの外套をまとったひょろりと背の高い男になった。

「やっぱりユリウスのふりをしていたのね! あんた誰よ!」

 おそらく泉ではユリウスとはぐれたあと、森で再開したときにはすでに別人だったとメリーエルは思う。だけど、本当にユリウスそっくりだった。鏡に映ったユリウスそのものだと言ってもいいほどに。

 男はフードに指をかけて顔の半分を覆い隠したまま答えた。

「あなたの言う『ユリウス』に化けていたわけではありませんよ。あなたが私にあなたの言うところの『ユリウス』を見ていただけ」

「はあ?」

「私は霧男。見たものの一番大切な存在を見せる。あなたが私に『ユリウス』を見たのならば、あなたが一番大切なものが『ユリウス』だっただけ」

 謎かけのようなセリフに目を丸くしたメリーエルだったが、徐々にその頬が赤らんでいく。

「な……、何を言っているの?」

 メリーエルの大切な存在がユリウス? ありえない。あいつはただの自称保護者だ。

(大切じゃないわけではないけど……、一番なわけないわっ)

 メリーエルには父も母もいて――、ユリウスは出会って一年ほど。彼はただの気まぐれな龍族の王子だ。

 メリーエルは狼狽える。――それが、悪かった。

 メリーエルの見つめる先――七色の光を放つ柱のそばにいた男が、その一瞬の隙をついて、彼女の視界から消えた。

 気づいたときには目の前にいて――

「あなたで最後だ。ようやく――、悲願がかなう」

 男の両手がメリーエルの首にかかり――、ぐっと力が、こめられた。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

しおん
2019.08.29 しおん

復讐の仕方が痛快(笑)
笑いました!

狭山ひびき@バカふり160万部突破
2019.08.29 狭山ひびき@バカふり160万部突破

お読みいただきありがとうございます!
楽しんでいただけてよかったです!

解除

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