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金色の蛇は退屈している
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時刻は少し前に遡る。
ルノディック国に到着し、マリアベル姫が行方知れずになったと聞き、まさかの妖精の登場――。慌ただしい展開に疲れて、また時間も時間だったために、メリーエルたちは翌日に改めて話をしようということになった。
ルノディックの国王は、愛娘を救い出せるのがメリーエルただ一人だと信じ切っているのか、メリーエルとユリウスに与えられた部屋は国賓をもてなすのかというほどに豪華だった。
部屋はユリウスと続き部屋で――これは自称保護者ユリウスが譲らなかった――、広い部屋の中には大きなベッドがある。人が五人は余裕で眠れそうなベッドに圧倒されたメリーエルは、しかし次の瞬間うずうずして、ベッドまで全速力で駆けて行くと、その上にぼふんっとダイブした。
弾力のあるベッドの上で、ポンポンとメリーエルの体が跳ねる。楽しくなって大笑いをしているメリーエルにユリウスは「子供か」とあきれていたが、彼も与えられた部屋には満足していたようだ。
何かあれば呼べよと言って、続き扉からさっさと自分の部屋に戻って言ったユリウスの後姿を見ながらメリーエルはふと考える。
(そういえばユリウスって王子だった。龍の国ラナドーンにはこんな豪華な私室があるのかなぁー?)
そんな贅沢な暮しを捨てて、どうしてメリーエルにくっついて来たのか、彼女はいまだにわからない。蛇は気まぐれだが、龍はどちらかと言えば警戒心が強く、人のそばには近寄りたがらないものだ。どうしてメリーエルの保護者を名乗りはじめたのだろうと今更ながらに不思議になった。
ごろんとベッドの上を転がって、メリーエルは考える。
(王子様なんだもん、国には婚約者とかいるのかなー? そんなんでわたしにくっついてきて大丈夫なのかなあ?)
あの容姿だ。ラナドーンでもモテたに違いない。もとの姿も白銀の美しい龍だった。口うるさいのは玉に瑕だが、それを差し引いても、まあ、いい男なんだろうと思う。
「変なユリウス。どうしてわたしなんかと一緒にいるんだか……」
魔女とはいえ魔力はほとんどなく、できることは魔法薬を作ることだけ。メリーエルのそばにいても彼には何のメリットもない。
胸の中がざわざわする。なぜユリウスはメリーエルと一緒にいるのだろう。この不思議な関係がはじまったときと同じように、いつか唐突にこの関係は解消されるのではないだろうか。――そう思うと、メリーエルの心はチクチクと棘が刺さったように痛む。
ユリウスは口うるさいけど――彼のそばは居心地がいい。
何があってもユリウスが守ってくれるんだという安心感がある。
その心地よさを知ってしまったから――もしも突然、ユリウスがメリーエルのそばを去る時が来たとしたら、メリーエルは笑っていられないかもしれない。
ばいばい、と。今までありがとう、と。見送れる自信がない。
「あいつが餌付けなんてするから――」
メリーエルはふんっと鼻を鳴らして、頭のてっぺんまで布団をかぶった。
もやもやして、少し腹立たしく、そしてちょっと怖い――。そんな思いを持て余して、メリーエルは布団の中で「ユリウスのばーか」とつぶやいた。
ルノディック国に到着し、マリアベル姫が行方知れずになったと聞き、まさかの妖精の登場――。慌ただしい展開に疲れて、また時間も時間だったために、メリーエルたちは翌日に改めて話をしようということになった。
ルノディックの国王は、愛娘を救い出せるのがメリーエルただ一人だと信じ切っているのか、メリーエルとユリウスに与えられた部屋は国賓をもてなすのかというほどに豪華だった。
部屋はユリウスと続き部屋で――これは自称保護者ユリウスが譲らなかった――、広い部屋の中には大きなベッドがある。人が五人は余裕で眠れそうなベッドに圧倒されたメリーエルは、しかし次の瞬間うずうずして、ベッドまで全速力で駆けて行くと、その上にぼふんっとダイブした。
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何かあれば呼べよと言って、続き扉からさっさと自分の部屋に戻って言ったユリウスの後姿を見ながらメリーエルはふと考える。
(そういえばユリウスって王子だった。龍の国ラナドーンにはこんな豪華な私室があるのかなぁー?)
そんな贅沢な暮しを捨てて、どうしてメリーエルにくっついて来たのか、彼女はいまだにわからない。蛇は気まぐれだが、龍はどちらかと言えば警戒心が強く、人のそばには近寄りたがらないものだ。どうしてメリーエルの保護者を名乗りはじめたのだろうと今更ながらに不思議になった。
ごろんとベッドの上を転がって、メリーエルは考える。
(王子様なんだもん、国には婚約者とかいるのかなー? そんなんでわたしにくっついてきて大丈夫なのかなあ?)
あの容姿だ。ラナドーンでもモテたに違いない。もとの姿も白銀の美しい龍だった。口うるさいのは玉に瑕だが、それを差し引いても、まあ、いい男なんだろうと思う。
「変なユリウス。どうしてわたしなんかと一緒にいるんだか……」
魔女とはいえ魔力はほとんどなく、できることは魔法薬を作ることだけ。メリーエルのそばにいても彼には何のメリットもない。
胸の中がざわざわする。なぜユリウスはメリーエルと一緒にいるのだろう。この不思議な関係がはじまったときと同じように、いつか唐突にこの関係は解消されるのではないだろうか。――そう思うと、メリーエルの心はチクチクと棘が刺さったように痛む。
ユリウスは口うるさいけど――彼のそばは居心地がいい。
何があってもユリウスが守ってくれるんだという安心感がある。
その心地よさを知ってしまったから――もしも突然、ユリウスがメリーエルのそばを去る時が来たとしたら、メリーエルは笑っていられないかもしれない。
ばいばい、と。今までありがとう、と。見送れる自信がない。
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