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フェルナーンからの招待状

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 四泊五日の温泉旅行を終えて、イリアがアマルベルダの家に戻って、数日がたったある日のことだった。

 イリアはアマルベルダに呼ばれて、一階にある魔女の私室を訪れた。

 部屋に入ると魔女は棚の中を漁っている最中で、ぽいぽいと棚に入っていたものを後ろ手に投げては部屋の中に散乱させていた。

 イリアはアマルベルダが散らかしたものをかき集めながら、いったい何を探しているんだろうと不思議に思う。

 やがて魔女は「やっと見つけた」とほっとしたようにつぶやいて、くるりと振り返った。

「あんたにこれをあげるよ」

 魔女はそう言って、イリアに真っ赤なルビーの首飾りを差し出した。

 そのルビーの大きさと、その周りにキラキラと輝く小粒のダイアモンドに、イリアは目を丸くした。これは、相当値の張るものではないだろうか。王家の宝物庫にあってもおかしくないような見事な首飾りに、イリアは目の前で両手を振った。

「も、もらえません! そんな高価そうなもの……」

 こんな高価なものをアマルベルダが持っていることにも驚いたが、なによりも、それを「このキャンディーをあげようね」くらいのノリで差し出してくることにびっくりだ。

 しかし、アマルベルダは問答無用でイリアの手にその首飾りを押しつけた。

「いいから持っておいで。あたしの母親の形見なんだよ」

 そんなことを聞けば余計にもらえない。イリアはつき返そうとしたが、言うことを聞かない彼女にしびれを切らしたのか、アマルベルダは強引にイリアの首に首飾りをかけてしまった。

「アマルベルダ、だめです!」

 イリアは慌てて首飾りをはずそうとしたが、どういうことか、どうあっても首から外すことができない。何が起こっているのだろうと茫然としていると、アマルベルダは飄々と、

「あたしの魔法をかけたからねぇ。あたしにしか外せないのさ」

 と言った。

 イリアは目を白黒させたが、どうあってもアマルベルダはこの首飾りをイリアに押し付けるつもりらしい。

「あたしが持っていたってつけないからねぇ。あんたみたいな可愛らしい娘がつけた方が母も喜ぶってもんさ」

「でも……」

「いいから。持っておきな。それは何かあったときにきっとあんたを守ってくれる」

 イリアは、何故アマルベルダがこうも強引に首飾りを押しつけようとするのか理解できなかったが、この魔女にしか外せないのであれば、もう何を言っても無駄である。

 しかし、もらうわけにはいかなかったので、イリアは「じゃあ、預かっておきます」と答えた。

 アマルベルダは笑って、「まあ、それでもいいよ」と言ってイリアの頭をひと撫でしたのだった。
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