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温泉旅行はどきどきがいっぱいです
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しおりを挟むイリアとクラヴィス、アマルベルダ、それから白狐ポチは、二つくっつけた大きなベッドに川の字に横になった。
イリアを真ん中に、クラヴィスとアマルベルダ、そしてイリアの頭の上でポチが丸くなっている。
クラヴィスとアマルベルダは、いまだに納得がいかないようだったが、お互い一歩も引かない主張は堂々巡りで、百歩譲ってイリアの意見を飲むことにしたようだった。
(いい案だと思ったのに……)
二人は何が気に入らないのだろう。イリアは不思議だったが、みんなで一緒に眠るなんて、なんだかピクニックみたいで楽しかったので、彼女は深く考えなかった。
くわっと大きなあくびをしたポチは、そのままくーくーと寝息をたてはじめた。
イリアの左手は、布団の下でクラヴィスが握っている。
(ふふ、なんだか楽しい)
イリアはポチの寝息と、クラヴィスに握ってもらった手のぬくもりに安心して、しばらくするとすやすやと眠りに落ちた。
イリアが眠りに落ちて少しして、クラヴィスは彼女の顔を覗き込むと、「おやすみ」と彼女の額にキスを落とす。
そして、こちらを見ているアマルベルダに気づいた。
「で、あたしとの約束はどうなってる?」
クラヴィスはイリアの頭を撫でながら答えた。
「問題ない」
「本当だろうね」
「少しずつ情報は集めている。……お前だって、そう簡単なことじゃないのはわかっているだろう」
アマルベルダは肩をすくめた。
「まあね。簡単なことなら、あんたに頼むまでもなく、あたしが自分でどうにかできたよ」
「そうだろうな」
クラヴィスにはこの魔女が、「魔法」以外でもそれなりに有能であることを見抜いていた。そのアマルベルダがクラヴィスに、自分ではどうにもならないからと条件として出したことである。――正直、かなり骨が折れる。
だが、クラヴィスにも気になることがあった。
「だが、何だってお前は――」
けれどもアマルベルダは、その続きを言わせなかった。
「誰にでも秘密はあるもんさ。女の秘密を知ろうなんて、モテないよ」
クラヴィスはフンと鼻を鳴らすと、仰向けになって天井を見上げた。
「誰が女だ。安心しろ、男のくせに魔女なんてやっている奇妙な奴の秘密なんて、僕には興味がない」
アマルベルダは小さく笑って、「じゃあ頼んだよ」と目を閉じた。
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