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嫉妬とお仕置きと
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「あー、くそ、ばれちまったかい」
アマルベルダがそう言って頭をかくのを視界の端に捕えながらも、イリアはクラヴィスから視線を逸らすことができなかった。
「どう……して……」
かすれた声で、そう言葉を紡ぐのが、精いっぱいだった。
クラヴィスは腕を組んだままこちらへ歩いてくると、イリアの枕元で仁王立ちになった。
「麦農家だという割に身なりの整った男だったからな、不審に思ったがやっぱりだ。こんなにあっさり魔女の居所が知れたのは拍子抜けだったが、――あの男はなんだ、どこにいる?」
「あの男……?」
「背の高い、襟詰めの服を着た男だ。山から煙が上がるのを見て一目散に駆けて行った。おそらくこちらに来ているはずだろう?」
「え、えと……」
よくわからないが、クラヴィスは機嫌が悪いらしい。それはそうだろう。イリアが突然家出をしたのだから機嫌が悪くなるのも当然だ。しかし、イリアの家出に対する怒りよりも、もっと別の何かがあるような気がして、イリアは首をひねった。
「隠す気か? つまりはそう言うことだったんだろう。魔女になりたいなんて突拍子もないことを言いだしたのは。この家の中にいるのか? しらみつぶしに探せばわかることだ」
「あ、あの、クラヴィス……」
「護衛を巻いて僕一人で来たが、ここに兵を呼んでもいいんだぞ? 隠していないで、さっさと出せ」
「だ、出せって、だから、誰を……」
「まだ隠す気なのか。お前はその男のために家を出たんだろう!?」
イリアはびっくりして目を丸くした。しかし、イリアが反論するより前に、「ぷくくくく」という笑い声が聞こえてきて、二人はそちらに目を向けた。
見れば、アマルベルダが腹を抱えて笑っていた。必死で笑い声をおさえていたようだが、我慢の限界だったらしい。クラヴィスは怪訝そうな顔をした。
「そこの魔女、何がおかしい」
「なにがって、そりゃぁ……」
「今は取り込み中なんだ。お前にはあとで話がある。少し待っていろ」
「うーん。それでもいいけど、王子様、その前にあたしの顔をよぉーっく見てからにしたらどうだい?」
アマルベルダはまだにやにやと笑っていたが、一生懸命笑みを引っ込めようと頑張っているらしかった。肩がぴくぴく揺れているのがその証拠だ。
クラヴィスは不機嫌そうに眉を寄せて魔女の顔を睨みつけ、それから徐々に目を見開いた。
「―――」
「おや、気がついたようだね」
クラヴィスは驚愕に顔を引きつらせて、魔女に向かって指をさした。
「お前! 女だったのか!」
「残念、その逆」
アマルベルダは楽しそうに声をあげて笑った。
アマルベルダがそう言って頭をかくのを視界の端に捕えながらも、イリアはクラヴィスから視線を逸らすことができなかった。
「どう……して……」
かすれた声で、そう言葉を紡ぐのが、精いっぱいだった。
クラヴィスは腕を組んだままこちらへ歩いてくると、イリアの枕元で仁王立ちになった。
「麦農家だという割に身なりの整った男だったからな、不審に思ったがやっぱりだ。こんなにあっさり魔女の居所が知れたのは拍子抜けだったが、――あの男はなんだ、どこにいる?」
「あの男……?」
「背の高い、襟詰めの服を着た男だ。山から煙が上がるのを見て一目散に駆けて行った。おそらくこちらに来ているはずだろう?」
「え、えと……」
よくわからないが、クラヴィスは機嫌が悪いらしい。それはそうだろう。イリアが突然家出をしたのだから機嫌が悪くなるのも当然だ。しかし、イリアの家出に対する怒りよりも、もっと別の何かがあるような気がして、イリアは首をひねった。
「隠す気か? つまりはそう言うことだったんだろう。魔女になりたいなんて突拍子もないことを言いだしたのは。この家の中にいるのか? しらみつぶしに探せばわかることだ」
「あ、あの、クラヴィス……」
「護衛を巻いて僕一人で来たが、ここに兵を呼んでもいいんだぞ? 隠していないで、さっさと出せ」
「だ、出せって、だから、誰を……」
「まだ隠す気なのか。お前はその男のために家を出たんだろう!?」
イリアはびっくりして目を丸くした。しかし、イリアが反論するより前に、「ぷくくくく」という笑い声が聞こえてきて、二人はそちらに目を向けた。
見れば、アマルベルダが腹を抱えて笑っていた。必死で笑い声をおさえていたようだが、我慢の限界だったらしい。クラヴィスは怪訝そうな顔をした。
「そこの魔女、何がおかしい」
「なにがって、そりゃぁ……」
「今は取り込み中なんだ。お前にはあとで話がある。少し待っていろ」
「うーん。それでもいいけど、王子様、その前にあたしの顔をよぉーっく見てからにしたらどうだい?」
アマルベルダはまだにやにやと笑っていたが、一生懸命笑みを引っ込めようと頑張っているらしかった。肩がぴくぴく揺れているのがその証拠だ。
クラヴィスは不機嫌そうに眉を寄せて魔女の顔を睨みつけ、それから徐々に目を見開いた。
「―――」
「おや、気がついたようだね」
クラヴィスは驚愕に顔を引きつらせて、魔女に向かって指をさした。
「お前! 女だったのか!」
「残念、その逆」
アマルベルダは楽しそうに声をあげて笑った。
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