20 / 36
婚約していないのに婚約破棄された私
魔物討伐 7
しおりを挟む
ケツァルコアトル――
それは、翼の生えた蛇の魔物だ。
討伐難易度はグリフォンを超えるSランク。
その昔、とある国では神としてあがめられていた、個体数の少ない伝説の魔物である。
グリフォン以上に、普通に生活していたら遭遇するはずもない魔物だった。
……いやいやいや、意味がわかんないから! Sランクとか、お母様でも無理よ‼
わたしは茫然としそうになったが、今はそれどころではない。
いくらなんでもグリフォン二体を相手にするのは危険だ。早くフェヴァン様に加勢しなければ、彼の元に二体が向かってしまう。
お父様の周りには結界を張ったから、グリフォンの攻撃の直撃を食らわない限りは大丈夫のはずだ。
わたしはフェヴァン様と反対方向に向かって走りながら、風の魔術を練り上げる。
魔術の気配がすれば、危険だと察知してグリフォンの方からこちらへ向かって来るだろう。
案の定、フェヴァン様に向かっていた二体のうち、一体が弾かれた様にわたしの方へ向かって来た。
グリフォンは風系統の魔物だから、風の魔術はききにくい。
しかしこの場で火属性の魔術を使えば大惨事になりそうだし、土の魔術は風属性相手だと威力が半減する。水の魔術はもっと相性が悪い。
ならば同系統の風魔術で対処するしかない。
わたしがカマイタチを放てば、グリフォンも同系統の風の刃を放ってくる。
攻撃が相殺し、グリフォンが警戒したようにその金色の瞳をすがめた。
高く鳴いて、グリフォンが空に舞い上がる。
距離を取って攻撃することにしたようだが、わたしからすれば好都合だった。
相手が空にいるなら、大規模なものでなければ火の魔術も使える。
わたしはグリフォンが地上に降りてくる前に決着をつけようと急いで火の魔術を練り上げた。
そして、一気に放つ。
わたしの放った火球がグリフォンに命中し、甲高い声が響いた。
その、直後――
「アドリーヌ‼」
わたしの火球で羽を焼かれたグリフォンが、怒り狂って空から真っ逆さまに滑空してきた。
フェヴァン様の切羽詰まった声がして、わたしとグリフォンの間に身を滑り込ませた彼が、大きく剣を振りかぶる。
斬撃が光のように輝いて、直撃を食らったグリフォンが後方に吹き飛ばされた。
「……よかった、間に合った」
振り返ったフェヴァン様が、ホッと息を吐いてから笑う。
見れば、フェヴァン様が相手をしていたグリフォンはすでに討伐されていて、わたしが相手をしていたほうも、先ほどの一撃が止めだったようだ。
……わたしの方が、足手まといだったようね。
フェヴァン様がこれほど強いとは思わなかった。
まあ、ケツァルコアトルを討伐したことがあるのだから当然と言えば当然か。
いったいどこでそのような最上位の魔物とであったのかは聞いてみたいところだが、今はそれどころではないだろう。
グリフォンが討伐されたとなれば、身を潜めていた魔物たちも動きはじめる。
目的の月歌草と……、グリフォンをこのまま放置しておくのはもったいなさすぎるので、これらを回収して邸に戻った方がよさそうだ。
……グリフォン二体の死体なんて持って帰ったらお母様……はいいとして、使用人のみんなが悲鳴を上げそうだけどね。
お父様の周りの結界を解けば、一目散にわたしの元に走って来て、怪我はないかと騒ぎ出す。
わたしはお父様をなだめで、月歌草の素材を採取すると、巨大なグリフォンの死体を風の魔術で宙に浮かせて、お母様の待つ邸に帰ることにした。
それは、翼の生えた蛇の魔物だ。
討伐難易度はグリフォンを超えるSランク。
その昔、とある国では神としてあがめられていた、個体数の少ない伝説の魔物である。
グリフォン以上に、普通に生活していたら遭遇するはずもない魔物だった。
……いやいやいや、意味がわかんないから! Sランクとか、お母様でも無理よ‼
わたしは茫然としそうになったが、今はそれどころではない。
いくらなんでもグリフォン二体を相手にするのは危険だ。早くフェヴァン様に加勢しなければ、彼の元に二体が向かってしまう。
お父様の周りには結界を張ったから、グリフォンの攻撃の直撃を食らわない限りは大丈夫のはずだ。
わたしはフェヴァン様と反対方向に向かって走りながら、風の魔術を練り上げる。
魔術の気配がすれば、危険だと察知してグリフォンの方からこちらへ向かって来るだろう。
案の定、フェヴァン様に向かっていた二体のうち、一体が弾かれた様にわたしの方へ向かって来た。
グリフォンは風系統の魔物だから、風の魔術はききにくい。
しかしこの場で火属性の魔術を使えば大惨事になりそうだし、土の魔術は風属性相手だと威力が半減する。水の魔術はもっと相性が悪い。
ならば同系統の風魔術で対処するしかない。
わたしがカマイタチを放てば、グリフォンも同系統の風の刃を放ってくる。
攻撃が相殺し、グリフォンが警戒したようにその金色の瞳をすがめた。
高く鳴いて、グリフォンが空に舞い上がる。
距離を取って攻撃することにしたようだが、わたしからすれば好都合だった。
相手が空にいるなら、大規模なものでなければ火の魔術も使える。
わたしはグリフォンが地上に降りてくる前に決着をつけようと急いで火の魔術を練り上げた。
そして、一気に放つ。
わたしの放った火球がグリフォンに命中し、甲高い声が響いた。
その、直後――
「アドリーヌ‼」
わたしの火球で羽を焼かれたグリフォンが、怒り狂って空から真っ逆さまに滑空してきた。
フェヴァン様の切羽詰まった声がして、わたしとグリフォンの間に身を滑り込ませた彼が、大きく剣を振りかぶる。
斬撃が光のように輝いて、直撃を食らったグリフォンが後方に吹き飛ばされた。
「……よかった、間に合った」
振り返ったフェヴァン様が、ホッと息を吐いてから笑う。
見れば、フェヴァン様が相手をしていたグリフォンはすでに討伐されていて、わたしが相手をしていたほうも、先ほどの一撃が止めだったようだ。
……わたしの方が、足手まといだったようね。
フェヴァン様がこれほど強いとは思わなかった。
まあ、ケツァルコアトルを討伐したことがあるのだから当然と言えば当然か。
いったいどこでそのような最上位の魔物とであったのかは聞いてみたいところだが、今はそれどころではないだろう。
グリフォンが討伐されたとなれば、身を潜めていた魔物たちも動きはじめる。
目的の月歌草と……、グリフォンをこのまま放置しておくのはもったいなさすぎるので、これらを回収して邸に戻った方がよさそうだ。
……グリフォン二体の死体なんて持って帰ったらお母様……はいいとして、使用人のみんなが悲鳴を上げそうだけどね。
お父様の周りの結界を解けば、一目散にわたしの元に走って来て、怪我はないかと騒ぎ出す。
わたしはお父様をなだめで、月歌草の素材を採取すると、巨大なグリフォンの死体を風の魔術で宙に浮かせて、お母様の待つ邸に帰ることにした。
554
お気に入りに追加
1,193
あなたにおすすめの小説

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです
珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。
そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた
。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

私の婚約者を奪っておいて、新しく婚約した途端、アバズレだなんてあなたにだけは言われたくありません
珠宮さくら
恋愛
クリスティーナは、婚約者が仕事をしないどころか、男爵令嬢と話してばかりで、迷惑している話を聞いて恥ずかしく思いをしていた。そのことを婚約者に話すと喧嘩となってしまい……。
※全3話。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。

姉が私の婚約者と仲良くしていて、婚約者の方にまでお邪魔虫のようにされていましたが、全員が勘違いしていたようです
珠宮さくら
恋愛
オーガスタ・プレストンは、婚約者している子息が自分の姉とばかり仲良くしているのにイライラしていた。
だが、それはお互い様となっていて、婚約者も、姉も、それぞれがイライラしていたり、邪魔だと思っていた。
そこにとんでもない勘違いが起こっているとは思いもしなかった。
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◆エールありがとうございます!
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆なろうにも載せ始めました
◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです
珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。
令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる