544 / 549
第10章 異国の大決戦編
47.天下泰平
しおりを挟む
それから十年ほどの月日が流れた。
志太家による幕府政権が成立して十数年。
争いの無き泰平の世となった事で人々は、安寧の日々を過ごしていた。
そんなある日の夜の事である。
祐宗は一人、御所の庭に出ていた。
何やら物思いにふけっているようである。
しばらくすると祐永がやって来た。
彼は心配そうな表情で祐宗に対して声を掛ける。
祐永
「上様、いかがなされたのでございますか?」
このような夜更けの刻に一人でこの場に佇んでいる。
一体、彼は何をしているのであろうか。
そう考えている祐永に対して祐宗が笑いながら答える。
祐宗
「あぁ、ちと昔のことを思い出してな…」
そして続けて祐宗が喋り始める。
祐宗
「思えば、我らが幕府を開くまでは実に長く険しき道のりじゃったな…」
創天国の乱世は、前将軍である三浦家の権力衰退をきっかけに始まった。
やがては強き者が弱き者を滅ぼす下剋上の風潮が各地で生まれ、それは創天国全土に伝播する事となった。
当時の志太家は、大名ですら無い弱小の国人衆であった。
だが志太家は地方の統一から始まり、扇山国を収める大名、果ては将軍家の地位にまで上り詰めていた。
そこに至るまでは、数多くの困難や試練が彼らを襲った。
それでも志太家は負ける事無く走り続け、やがては天下を統一。
泰平の世を訪れさせたのである。
そう語る祐宗は感慨深い表情を見せていた。
祐永
「亡き御方たちも、必ずやこれで浮かばれることにございましょう。」
乱世を終結させる為には、数え切れぬほどの者たちが犠牲となった。
だが、そのお陰で今の泰平の世が造られたと言っても良い。
彼らの犠牲は、決して無駄なものなのでは無かったのである。
祐永はそのような言葉を口にしていた。
すると祐宗が深く頷いた後に口を開き始める。
祐宗
「うむ、父上や祖父上も、泰平の世となったことを喜ばれておるじゃろうな。」
祐宗は志太家の先代、先々代当主であった祐藤や祐村の名前を挙げていた。
彼らは泰平の世を誰よりも願い、それを実現させる為に尽力を惜しまず常に前を走り続けていた。
だがその思いも虚しく、いずれも志半ばでこの世を去っている。
そんな彼らも今の創天国を見れば、必ずや喜びの声を上げるであろう。
悲願であった泰平の世が訪れたのであるから…
祐宗はなおも感慨深い表情を見せながらそう言っていた。
祐永
「真にその通りにございましょうな、兄者…」
やがて祐宗が上を向いて祐永に対して言う。
祐宗
「おい祐永、見てみい。今宵はまた格別に綺麗じゃのう…」
彼らの頭上には、満点の星空が広がっていた。
輝く星々を眺めながら祐宗が言う。
祐宗
「この泰平の世が、いつまでも続くことを余は願うばかりじゃ。いつまでも、な…」
争い無き泰平の世。
こうした世が未来永劫に渡って続く事を彼は心より願っていると言っていた。
祐永
「ははっ、全くもって拙者も上様に同じくそう思いまする。この泰平の世、決して絶やしてはなりませぬな…」
この志太家による天下泰平の幕府政権は、以後三百年の長きに渡って続くのであった。
その間は大きな争いなどは無く、人々は平穏な日々を送っていたという。
彼らの願う「泰平の世」は、ここに確かに叶えられていた。
だが、幕末の動乱によって志太家は衰退の道を辿る事となるが、それはまだまだ先の話ではある。
志太家による幕府政権が成立して十数年。
争いの無き泰平の世となった事で人々は、安寧の日々を過ごしていた。
そんなある日の夜の事である。
祐宗は一人、御所の庭に出ていた。
何やら物思いにふけっているようである。
しばらくすると祐永がやって来た。
彼は心配そうな表情で祐宗に対して声を掛ける。
祐永
「上様、いかがなされたのでございますか?」
このような夜更けの刻に一人でこの場に佇んでいる。
一体、彼は何をしているのであろうか。
そう考えている祐永に対して祐宗が笑いながら答える。
祐宗
「あぁ、ちと昔のことを思い出してな…」
そして続けて祐宗が喋り始める。
祐宗
「思えば、我らが幕府を開くまでは実に長く険しき道のりじゃったな…」
創天国の乱世は、前将軍である三浦家の権力衰退をきっかけに始まった。
やがては強き者が弱き者を滅ぼす下剋上の風潮が各地で生まれ、それは創天国全土に伝播する事となった。
当時の志太家は、大名ですら無い弱小の国人衆であった。
だが志太家は地方の統一から始まり、扇山国を収める大名、果ては将軍家の地位にまで上り詰めていた。
そこに至るまでは、数多くの困難や試練が彼らを襲った。
それでも志太家は負ける事無く走り続け、やがては天下を統一。
泰平の世を訪れさせたのである。
そう語る祐宗は感慨深い表情を見せていた。
祐永
「亡き御方たちも、必ずやこれで浮かばれることにございましょう。」
乱世を終結させる為には、数え切れぬほどの者たちが犠牲となった。
だが、そのお陰で今の泰平の世が造られたと言っても良い。
彼らの犠牲は、決して無駄なものなのでは無かったのである。
祐永はそのような言葉を口にしていた。
すると祐宗が深く頷いた後に口を開き始める。
祐宗
「うむ、父上や祖父上も、泰平の世となったことを喜ばれておるじゃろうな。」
祐宗は志太家の先代、先々代当主であった祐藤や祐村の名前を挙げていた。
彼らは泰平の世を誰よりも願い、それを実現させる為に尽力を惜しまず常に前を走り続けていた。
だがその思いも虚しく、いずれも志半ばでこの世を去っている。
そんな彼らも今の創天国を見れば、必ずや喜びの声を上げるであろう。
悲願であった泰平の世が訪れたのであるから…
祐宗はなおも感慨深い表情を見せながらそう言っていた。
祐永
「真にその通りにございましょうな、兄者…」
やがて祐宗が上を向いて祐永に対して言う。
祐宗
「おい祐永、見てみい。今宵はまた格別に綺麗じゃのう…」
彼らの頭上には、満点の星空が広がっていた。
輝く星々を眺めながら祐宗が言う。
祐宗
「この泰平の世が、いつまでも続くことを余は願うばかりじゃ。いつまでも、な…」
争い無き泰平の世。
こうした世が未来永劫に渡って続く事を彼は心より願っていると言っていた。
祐永
「ははっ、全くもって拙者も上様に同じくそう思いまする。この泰平の世、決して絶やしてはなりませぬな…」
この志太家による天下泰平の幕府政権は、以後三百年の長きに渡って続くのであった。
その間は大きな争いなどは無く、人々は平穏な日々を送っていたという。
彼らの願う「泰平の世」は、ここに確かに叶えられていた。
だが、幕末の動乱によって志太家は衰退の道を辿る事となるが、それはまだまだ先の話ではある。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?


大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる