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第10章 異国の大決戦編
44.ワニアの戦い(36)
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連合軍の人質となってしまった政武。
彼の身の解放と引き換えに連合軍の撤退という取引をアテヌは持ちかける。
祐永はその条件を飲み、兵を収めようと考えていた。
すると政武が祐永らに対して声を上げる。
アテヌのような男の要求になど応える必要などない。
そう言うと政武はアテヌの体を掴み返し、丘下の濁流目掛けて身を投げる。
次の瞬間、丘下では凄まじい爆発音が鳴り響く。
そして辺りでは爆発によってみるみるうちに大きな水柱が立っていた。
それは一瞬の出来事であり、丘下は先程と変わらない濁流へと戻っていた。
祐永
「政武、お前…」
ドヴェルク
「あぁ、なんということだ…」
祐永とドヴェルクらは、丘下の濁流の前で呆然と立ち尽くしていた。
やがて祐永が口を開き始める。
祐永
「政武め、勝手に一人で逝く奴があるか…このたわけ者、たわけ者めが…」
結果的には政武の行動によって祐永ら連合軍の者たちの身は助けられた。
だが、これは余りにも身勝手過ぎるのでは無いか。
祐永は目を潤ませながらそう呟いていた。
宗重
「政武、何故じゃ!何故に一番若いお前が死なねばならぬというのじゃ!くそっ!くそっ…」
若い者は先に死すべき存在では無いのだ。
それが何故、お前には分からぬというのだ…
宗重は目を真っ赤にしながらそう声を上げていた。
崇房
「政武殿は、我らを救おうとかようなことをなされたのでござるな。政武殿、かたじけない…真にかたじけのうございます…」
政武は、自らが犠牲となる事で祐永や長継ら連合軍の者たちの命を守り通したのだ。
その事を知らされた崇房は、その場で頭を深々と下げながら何度も何度も感謝の言葉を述べていた。
すると、何かに気付いたのであろうか、長継が声を上げ始める。
長継
「はっ!あ、あれをご覧くだされ!」
長継は、ヘルト城の方角を指差していた。
ドヴェルク
「何やら、兵たちが武器を収めておりますね…」
ヘルト城には、カルロスらの軍勢が居た。
先程の闘争心に燃える目つきからは一転し、彼らは皆が穏やかな表情をしていた。
そして、手にしていた武器を次々と収めていく。
祐永
「確かにそうではござるが…果たしてそうなのであろうか…」
カルロス含むヘルト軍の兵たちのこの変わり様に祐永は半信半疑ではあった。
まさか、先程の爆発でアテヌが死んだ事により、彼によってかけられていた洗脳が解けたというのか。
そうした事が彼の頭の中をよぎっていた。
やがて、カルロスが彼らの居る丘の方角に対して深々と頭を下げていた。
その様子からは、連合軍に対して敵意を抱いていないという事が窺える。
祐永
「あれは…カルロス殿?ふむ、どうやら我らと刀を交えるつもりはもう無いようにござるな。」
カルロスの様子を見た祐永は、ヘルト軍の者たちが正気を取り戻したという事を確信していた。
長継
「では、セビカは…セビカはこれで救われたのじゃな…」
今回の黒幕とも言えるアテヌが亡くなった事により、セビカ国滅亡の危機は何とか乗り越えた。
そう思った長継は、安堵の表情を浮かべていた。
すると、そんな長継を横目に祐永が声を詰まらせながら言う。
祐永
「じゃが、その代償は最も大きくついたようではあるがな…」
宗重
「うううぅぅ…政武、政武…」
宗重の目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。
彼の身の解放と引き換えに連合軍の撤退という取引をアテヌは持ちかける。
祐永はその条件を飲み、兵を収めようと考えていた。
すると政武が祐永らに対して声を上げる。
アテヌのような男の要求になど応える必要などない。
そう言うと政武はアテヌの体を掴み返し、丘下の濁流目掛けて身を投げる。
次の瞬間、丘下では凄まじい爆発音が鳴り響く。
そして辺りでは爆発によってみるみるうちに大きな水柱が立っていた。
それは一瞬の出来事であり、丘下は先程と変わらない濁流へと戻っていた。
祐永
「政武、お前…」
ドヴェルク
「あぁ、なんということだ…」
祐永とドヴェルクらは、丘下の濁流の前で呆然と立ち尽くしていた。
やがて祐永が口を開き始める。
祐永
「政武め、勝手に一人で逝く奴があるか…このたわけ者、たわけ者めが…」
結果的には政武の行動によって祐永ら連合軍の者たちの身は助けられた。
だが、これは余りにも身勝手過ぎるのでは無いか。
祐永は目を潤ませながらそう呟いていた。
宗重
「政武、何故じゃ!何故に一番若いお前が死なねばならぬというのじゃ!くそっ!くそっ…」
若い者は先に死すべき存在では無いのだ。
それが何故、お前には分からぬというのだ…
宗重は目を真っ赤にしながらそう声を上げていた。
崇房
「政武殿は、我らを救おうとかようなことをなされたのでござるな。政武殿、かたじけない…真にかたじけのうございます…」
政武は、自らが犠牲となる事で祐永や長継ら連合軍の者たちの命を守り通したのだ。
その事を知らされた崇房は、その場で頭を深々と下げながら何度も何度も感謝の言葉を述べていた。
すると、何かに気付いたのであろうか、長継が声を上げ始める。
長継
「はっ!あ、あれをご覧くだされ!」
長継は、ヘルト城の方角を指差していた。
ドヴェルク
「何やら、兵たちが武器を収めておりますね…」
ヘルト城には、カルロスらの軍勢が居た。
先程の闘争心に燃える目つきからは一転し、彼らは皆が穏やかな表情をしていた。
そして、手にしていた武器を次々と収めていく。
祐永
「確かにそうではござるが…果たしてそうなのであろうか…」
カルロス含むヘルト軍の兵たちのこの変わり様に祐永は半信半疑ではあった。
まさか、先程の爆発でアテヌが死んだ事により、彼によってかけられていた洗脳が解けたというのか。
そうした事が彼の頭の中をよぎっていた。
やがて、カルロスが彼らの居る丘の方角に対して深々と頭を下げていた。
その様子からは、連合軍に対して敵意を抱いていないという事が窺える。
祐永
「あれは…カルロス殿?ふむ、どうやら我らと刀を交えるつもりはもう無いようにござるな。」
カルロスの様子を見た祐永は、ヘルト軍の者たちが正気を取り戻したという事を確信していた。
長継
「では、セビカは…セビカはこれで救われたのじゃな…」
今回の黒幕とも言えるアテヌが亡くなった事により、セビカ国滅亡の危機は何とか乗り越えた。
そう思った長継は、安堵の表情を浮かべていた。
すると、そんな長継を横目に祐永が声を詰まらせながら言う。
祐永
「じゃが、その代償は最も大きくついたようではあるがな…」
宗重
「うううぅぅ…政武、政武…」
宗重の目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。
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