上 下
539 / 549
第10章 異国の大決戦編

42.ワニアの戦い(34)

しおりを挟む
アテヌによって操られていた政武。
だが、連合軍の者たちの説得の言葉を聞いた事で我を取り戻し始めていた。

そして政武はアテヌに銃口を向けて発砲。
アテヌを敵として認識している事から、どうやら彼の催眠術は解けていたようである。

そして政武はアテヌの元に近寄り、静かに言う。

政武
「さてと、もう二度と催眠術が使えぬようにこいつにとどめを刺しておくとするかね…」

アテヌ
「うううぅぅ…かはっ…かはっ…」

銃弾を体に受けた事もあり、アテヌは苦しそうな様子である。
政武がアテヌの髪を掴んで言う。

政武
「よう、アテヌのおっさんよ。痛えか?俺たちの部下は、お前よりももっと苦しい思いをして逝ったんだぜ?そのこと、忘れんなよ?」

銃弾を受けた事でさぞかし痛かろう。
だが、それは先程にアテヌによって焼き払われた政武と宗重らの軍勢が受けた苦痛の比ではない。
そう言う政武は鬼のような形相をしていた。

そして髪を掴んでいた手を放し、アテヌを軽く突き飛ばす。

政武
「まあよい。これから地獄の鬼たちによる裁きを存分に受けるのじゃからな。」

己の悪行を地獄で存分に悔いるが良い。
そう言うと政武は刀を抜き、アテヌの首に刃を差し向けていた。

アテヌ
「うううぅぅ、鼠の分際で調子に乗ってくれますね…ぐらああああぁぁぁっ!」

アテヌは突然立ち上がり、政武の体をがっしりと掴み始める。

政武
「おっ、何だ何だ?おいおい、まだ俺とやり合おうって言うのかい?」

政武の放った銃弾は体を貫いていた事から、アテヌは致命傷を負っていると言っても良いはずだ。
にも関わらず立ち上がり、再び戦わんとする態度を見せている。
この彼の執念深さに政武は驚いていたようである。

するとアテヌが連合軍の者たちに対して声を上げる。

アテヌ
「貴殿たち、よく聞きなさい。私はただでは死にません!」

長継
「何を往生際の悪いことを…」

我はただでは死なぬ。
そう言い放つアテヌに対して長継は呆れた様子であった。

宗重は、アテヌの往生際の悪さ思わず溜息をついていた。
そしてアテヌによって拘束された政武に対して声を掛ける。

宗重
「やれやれ…おい政武よ、今助けてやるから動くでないぞ。」

そう言うと宗重は鉄砲を構え、アテヌに向けて照準を合わせていた。
するとアテヌが彼を制止するように喋り始める。

アテヌ
「おっと、下手な真似をすると…この爆弾で私と、この男の体もろとも木端微塵ですよ?ふふふふふ…」

アテヌは懐からある物を取り出す。
爆弾である。
それは非常に小型なものではあったが、周囲の人間を殺傷するには充分に値するほどの威力があるというのだ。

ドヴェルク
「アテヌ!貴様はどこまで卑怯な男というのだ!これがセビカに仕える者のやることか!」

人質をとり、相手に対して脅しをかける。
このような非人道的な行為は決して許される事では無い。
お前は泰平の世を築く為にセビカ国に従事していた者では無く、ただの無法者であったというのか。
ドヴェルクは、アテヌに対して罵声の言葉を浴びせていた。

崇房
「くそっ!またしてもこれでは手を出せぬではないか!」

先刻の窮地は何とか逃れたと思えば、また新たな窮地に立たされている。
このどうにもならぬ状況に崇房は、地団駄を踏んでいた。

祐永
「アテヌの奴め、一体何を企んでおるというのだ…」

するとアテヌが連合軍の者たちに対して静かに口を開き始める。

アテヌ
「さてセビカ並びに創天国の者たちよ、一つ私と取引をしませんかな?」

アテヌは不敵な笑みを浮かべていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也
ファンタジー
 高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!  戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。  持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。  推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。  ※毎日投稿。  ※歴史上に存在しない人物も登場しています。  小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

墨山事件

佐村孫千(サムラ マゴセン)
ミステリー
舞台は架空世界の現代。 とある地方で謎の集団失踪事件が発生。 それから四十数年の時が過ぎたが未だ真相解明には至っていない。 この未解決事件を解決すべく一人の若き探偵が立ち上がった...。 ※ この物語は、ネットの都市伝説である「鮫島事件」をモチーフに作者が独自のオリジナル要素を加えて執筆した作品です。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...