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第10章 異国の大決戦編
30.ワニアの戦い(22)
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ヘルト城周辺では豪雨が降り続けていた。
これを受けた連合軍とヘルト軍それぞれの軍勢は、動きを止め始める。
豪雨による視界不良、落雷による被害などが両軍勢の中で相次いでいた為である。
それから数刻の時が経ったが、依然として雨は降り続けている。
この雨は一体、何時になれば止むのであろうか…
カルロスがそう口にした次の瞬間、城内での異変に気付き始める。
さらにアテヌも続けてその異変に気付き、たちまち二人は悲鳴の声を上げていた。
ヘルト城外に陣を構えている祐永がその様子を見ながら言う。
祐永
「ようやく動き始めたようじゃな。これぞ正しく、自然の脅威…」
ヘルト城の北側には、城を挟んで流れる川があった。
この川はかつてワニア王が統治していた時代に天然の堀として利用していたという。
このように城の防御力を高める役割を果たす堀ではあったが、先刻による豪雨によって川は増水し始めて水位は急激に上昇。
やがて堤防は決壊し、辺りには大量の水が注ぎ込まれようとしていた。
一方、ヘルト城内ではアテヌが信じられない様子で口を開き始める。
アテヌ
「堀が…川が…氾濫しただと?そんなことが、あるというのか…」
ワニアは一年を通して雨の多い雨季だ。
その為に治水工事は他の地域とは比べ物にならぬ程に徹底して行われており、川が氾濫するなどといった水害に遭う事などは無かったのである。
その川が今まさに氾濫を始めたという。
いかに今回の豪雨が凄まじいものであったかが分かるであろう。
長継
「この雨は、我ら連合軍である志太幕府軍が呼び寄せたものにござる。」
先刻から降り続けるこの豪雨は、連合軍の志太幕府軍が雷神を用いて引き起こされたものである。
長継は混乱するアテヌに対してそう淡々と述べていた。
アテヌ
「な、なんだと?志太の者が?そのようなこと、あるはずが…」
長継によるその説明を聞いたアテヌは、さらに混乱し始めていた。
一人の人間の手によって周辺の天候を自在に操ったというのであるから無理も無い話だ。
するとカルロスがそんなアテヌに対して必死の形相で声を上げ始める。
カルロス
「いかん!アテヌよ!このままでは我ら軍勢は水に飲み込まれてしまうぞ!かくなるうえは…」
どうやら氾濫によって川から溢れ出た水が彼らのすぐ目の前に迫って来ているようである。
ここも濁流に飲み込まれるのも時間の問題であろう。
そしてカルロスが続けて軍勢たちに対して声を上げる。
カルロス
「えぇい、やむを得ん!全ての城門を開けよ!城内の水を外に流し出し、少しでも被害を抑えるのだ!」
そう言うとヘルトの兵たちは一斉に各城門へと向かった。
そして全ての城門が開門されたのであった。
その様子を見た祐永が口を開き始める。
祐永
「どうやらヘルト軍は我の思い通り、城門を開けたようじゃな。」
城内に川から溢れた水を溜め込んでしまえば軍勢は壊滅するであろう。
その水を外に逃がす為に全ての城門を開け放したヘルト軍は賢明な判断であったと言えよう。
そして自身の思い通りとなった事に対して祐永は得意気な表情をしていた。
やがて祐永は引き締まった表情を見せながら軍勢に対して声を上げる。
祐永
「我らもこの場におっては危うき故、直ちにここから離れるのじゃ!さぁ、急ぐのじゃ!」
そう言うと連合軍の軍勢たちは迫り来る水から逃げるようにして一斉に動き始めていた。
アテヌ
「おのれセビカの奴らめ!覚えておれ!」
アテヌは連合軍の軍勢を睨みつけながらそう言っていた。
これを受けた連合軍とヘルト軍それぞれの軍勢は、動きを止め始める。
豪雨による視界不良、落雷による被害などが両軍勢の中で相次いでいた為である。
それから数刻の時が経ったが、依然として雨は降り続けている。
この雨は一体、何時になれば止むのであろうか…
カルロスがそう口にした次の瞬間、城内での異変に気付き始める。
さらにアテヌも続けてその異変に気付き、たちまち二人は悲鳴の声を上げていた。
ヘルト城外に陣を構えている祐永がその様子を見ながら言う。
祐永
「ようやく動き始めたようじゃな。これぞ正しく、自然の脅威…」
ヘルト城の北側には、城を挟んで流れる川があった。
この川はかつてワニア王が統治していた時代に天然の堀として利用していたという。
このように城の防御力を高める役割を果たす堀ではあったが、先刻による豪雨によって川は増水し始めて水位は急激に上昇。
やがて堤防は決壊し、辺りには大量の水が注ぎ込まれようとしていた。
一方、ヘルト城内ではアテヌが信じられない様子で口を開き始める。
アテヌ
「堀が…川が…氾濫しただと?そんなことが、あるというのか…」
ワニアは一年を通して雨の多い雨季だ。
その為に治水工事は他の地域とは比べ物にならぬ程に徹底して行われており、川が氾濫するなどといった水害に遭う事などは無かったのである。
その川が今まさに氾濫を始めたという。
いかに今回の豪雨が凄まじいものであったかが分かるであろう。
長継
「この雨は、我ら連合軍である志太幕府軍が呼び寄せたものにござる。」
先刻から降り続けるこの豪雨は、連合軍の志太幕府軍が雷神を用いて引き起こされたものである。
長継は混乱するアテヌに対してそう淡々と述べていた。
アテヌ
「な、なんだと?志太の者が?そのようなこと、あるはずが…」
長継によるその説明を聞いたアテヌは、さらに混乱し始めていた。
一人の人間の手によって周辺の天候を自在に操ったというのであるから無理も無い話だ。
するとカルロスがそんなアテヌに対して必死の形相で声を上げ始める。
カルロス
「いかん!アテヌよ!このままでは我ら軍勢は水に飲み込まれてしまうぞ!かくなるうえは…」
どうやら氾濫によって川から溢れ出た水が彼らのすぐ目の前に迫って来ているようである。
ここも濁流に飲み込まれるのも時間の問題であろう。
そしてカルロスが続けて軍勢たちに対して声を上げる。
カルロス
「えぇい、やむを得ん!全ての城門を開けよ!城内の水を外に流し出し、少しでも被害を抑えるのだ!」
そう言うとヘルトの兵たちは一斉に各城門へと向かった。
そして全ての城門が開門されたのであった。
その様子を見た祐永が口を開き始める。
祐永
「どうやらヘルト軍は我の思い通り、城門を開けたようじゃな。」
城内に川から溢れた水を溜め込んでしまえば軍勢は壊滅するであろう。
その水を外に逃がす為に全ての城門を開け放したヘルト軍は賢明な判断であったと言えよう。
そして自身の思い通りとなった事に対して祐永は得意気な表情をしていた。
やがて祐永は引き締まった表情を見せながら軍勢に対して声を上げる。
祐永
「我らもこの場におっては危うき故、直ちにここから離れるのじゃ!さぁ、急ぐのじゃ!」
そう言うと連合軍の軍勢たちは迫り来る水から逃げるようにして一斉に動き始めていた。
アテヌ
「おのれセビカの奴らめ!覚えておれ!」
アテヌは連合軍の軍勢を睨みつけながらそう言っていた。
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