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第10章 異国の大決戦編
28.ワニアの戦い(20)
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祐永が用いた雷神によってたちまちヘルト城付近では豪雨が発生。
それから数刻の時が経ったが雨脚が弱まる気配は見せようとせず、むしろ強まる一方であった。
降り続ける雨に対してカルロスが思わず呟き始める。
カルロス
「それにしても、やけに長い雨であるな…」
このワニアの地は、一年を通して雨季である。
それ故に雨に見舞われる事がしばしばあった。
だが、これほどの豪雨が長く続くという事は非常に珍しいようであり、少し不安げな表情でカルロスはそう言っていた。
するとアテヌが頷いた後に口を開き始める。
アテヌ
「確かに…ですが、豪雨に紛れて奴らに攻撃を仕掛けられる故に、我が軍にとっては好都合かと。」
この豪雨の中で城外に構える連合軍は恐らく城の攻略にあぐねいているのであろう。
そこを我がヘルト軍が追い打ちをかける事でさらなる優勢へと導く事が出来るのだ。
それ故に、全軍による攻撃を今すぐ行うべし。
アテヌはそう言っていた。
だが、カルロスは穏やかではない表情をして答え始める。
カルロス
「それが…伝令より、敵兵らの姿が見当たらぬとの情報が入ってきたようで…」
つい先刻前にカルロスの前に伝令が来ていた。
伝令は、城門前に構えていた連合軍は全軍が撤退していたと伝えていた。
この悪天候の中での攻城戦では攻勢側が不利と判断しての事であろうか。
伝令による情報を聞いたカルロスはそう考えているようであった。
これにはアテヌは少し驚いた様子ではあったが、すぐに冷静な表情を見せながら言う。
アテヌ
「何と、我らの襲撃を恐れて早々に兵を引き上げたか…まあ良い、この雨が止むまでしばし待ってやろうではないか。」
この状況をいち早く察知し、早々に兵を引き上げるとは実に懸命な判断を下したものだ。
アテヌは連合軍の総指揮である祐永に対し、見事な決断力であると思わず称賛の声を上げていた。
一方、連合軍の本陣には城門付近に先程まで居た軍勢が集結していた。
祐永
「皆の者よ、無事に我の軍勢と合流出来たようじゃな。」
全軍が集まった事で祐永は、まずは一安心といった表情を浮かべていた。
その様子に長継が問い掛けの言葉を発する。
長継
「祐永殿、これから我らは一体どうすればよろしいのでございますか?」
祐永
「なに、じきに分かる故に、ここでヘルト軍の様子を見ておるが良い。」
焦らずとももうすぐどうなるかの結果が明らかになるであろう。
その問い掛けに対して祐永はそう一言答えていた。
政武
「ちっ、せっかくヘルトの奴らをぶちのめしてやろうと思っておったのに…」
祐永の悠長な言葉を耳にした政武は、突然の撤退命令に不服な態度であった。
すると崇房がそんな彼に対して諭すように言う。
崇房
「政武殿よ、そう急がれるでない。あのまま攻撃を続けておらば、我ら軍勢は危うきものであったのかも知れぬぞ。」
あの豪雨の中では城内に兵を構える守勢側が有利。
そうした状況で戦いを挑めば我ら軍勢は痛い目を見る事となるであろう。
崇房は、先程の祐永による撤退命令に対して賛同している様子であった。
それからほどなくして何かに気付いたのであろうか、宗重が口を開き始める。
宗重
「むっ、あれは…もしや祐永様は、あれを待たれておるのでは…」
祐永
「よし、もうじきじゃ!もうじきにござるぞ…」
祐永は、ヘルト城を見つめながら何度もそう呟いていた。
それから数刻の時が経ったが雨脚が弱まる気配は見せようとせず、むしろ強まる一方であった。
降り続ける雨に対してカルロスが思わず呟き始める。
カルロス
「それにしても、やけに長い雨であるな…」
このワニアの地は、一年を通して雨季である。
それ故に雨に見舞われる事がしばしばあった。
だが、これほどの豪雨が長く続くという事は非常に珍しいようであり、少し不安げな表情でカルロスはそう言っていた。
するとアテヌが頷いた後に口を開き始める。
アテヌ
「確かに…ですが、豪雨に紛れて奴らに攻撃を仕掛けられる故に、我が軍にとっては好都合かと。」
この豪雨の中で城外に構える連合軍は恐らく城の攻略にあぐねいているのであろう。
そこを我がヘルト軍が追い打ちをかける事でさらなる優勢へと導く事が出来るのだ。
それ故に、全軍による攻撃を今すぐ行うべし。
アテヌはそう言っていた。
だが、カルロスは穏やかではない表情をして答え始める。
カルロス
「それが…伝令より、敵兵らの姿が見当たらぬとの情報が入ってきたようで…」
つい先刻前にカルロスの前に伝令が来ていた。
伝令は、城門前に構えていた連合軍は全軍が撤退していたと伝えていた。
この悪天候の中での攻城戦では攻勢側が不利と判断しての事であろうか。
伝令による情報を聞いたカルロスはそう考えているようであった。
これにはアテヌは少し驚いた様子ではあったが、すぐに冷静な表情を見せながら言う。
アテヌ
「何と、我らの襲撃を恐れて早々に兵を引き上げたか…まあ良い、この雨が止むまでしばし待ってやろうではないか。」
この状況をいち早く察知し、早々に兵を引き上げるとは実に懸命な判断を下したものだ。
アテヌは連合軍の総指揮である祐永に対し、見事な決断力であると思わず称賛の声を上げていた。
一方、連合軍の本陣には城門付近に先程まで居た軍勢が集結していた。
祐永
「皆の者よ、無事に我の軍勢と合流出来たようじゃな。」
全軍が集まった事で祐永は、まずは一安心といった表情を浮かべていた。
その様子に長継が問い掛けの言葉を発する。
長継
「祐永殿、これから我らは一体どうすればよろしいのでございますか?」
祐永
「なに、じきに分かる故に、ここでヘルト軍の様子を見ておるが良い。」
焦らずとももうすぐどうなるかの結果が明らかになるであろう。
その問い掛けに対して祐永はそう一言答えていた。
政武
「ちっ、せっかくヘルトの奴らをぶちのめしてやろうと思っておったのに…」
祐永の悠長な言葉を耳にした政武は、突然の撤退命令に不服な態度であった。
すると崇房がそんな彼に対して諭すように言う。
崇房
「政武殿よ、そう急がれるでない。あのまま攻撃を続けておらば、我ら軍勢は危うきものであったのかも知れぬぞ。」
あの豪雨の中では城内に兵を構える守勢側が有利。
そうした状況で戦いを挑めば我ら軍勢は痛い目を見る事となるであろう。
崇房は、先程の祐永による撤退命令に対して賛同している様子であった。
それからほどなくして何かに気付いたのであろうか、宗重が口を開き始める。
宗重
「むっ、あれは…もしや祐永様は、あれを待たれておるのでは…」
祐永
「よし、もうじきじゃ!もうじきにござるぞ…」
祐永は、ヘルト城を見つめながら何度もそう呟いていた。
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