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第10章 異国の大決戦編
25.ワニアの戦い(17)
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連合軍とヘルト軍による籠城戦が始まってから数刻の時が過ぎた。
ヘルト城の城門の破壊には至っておらず、連合軍としての進展が見られなかったようである。
これに対して志太幕府軍総指揮である志太祐永は、焦りを感じ始めていた。
何としてもこの状況を打破せねば連合軍の勝利は望めないであろう。
そう考えた祐永は、ヘルト城の周辺を見回し始める。
それからしばらくした後に彼はある物に目を付け、行動を起こそうとしていた。
どうやら自身の中で名案が閃いたようであった。
祐永
「城門の破壊に当たられている各々方よ、今一度軍勢を後退させよ!」
祐永は前線で戦いを繰り広げられている軍勢に対してそう声を上げていた。
それは、軍勢の一時後退を命じるというものであった。
宗重
「す、祐永様?我らの軍勢を後退させよとのことにございますか?」
祐永によるその命を耳にした宗重は、非常に驚いた表情であった。
そして政武は呆れた様子で口を開き始める。
政武
「おいおい祐永さんよ、一体どうしちまったんだ?まさか、アテヌのおっさんに怖気づいたっていうのかい?」
もしや、先刻に感じたアテヌの強さに恐れをなして撤退するのではあるまいか。
そう考えた政武は祐永に対してそのような言葉を投げ掛けていた。
すると崇房が政武に対して答え始める。
崇房
「いや、祐永様は何かお考えがあられてのことにございましょう。ひとまず我らの軍勢を後退させましょうぞ。」
もし今、ここで撤退するという中途半端な事を行えば、志太幕府連合軍として名折れであろう。
総指揮である祐永もその事は重々に承知しているはず。
必ずや何らかの策があった故の今回の命令に間違いは無いであろう。
崇房によるその言葉を聞いた宗重ら連合軍の軍勢は納得し、一斉に後退を始めていた。
一方、城の西側に居る長継とドヴェルクらの軍勢は祐永による声を聞いた事で皆が手を止めていた。
長継
「何?後退じゃと?一体、祐永殿は何を考えられておるというのじゃ…」
ヘルト軍との籠城戦において今現在は、自軍としても致命的な被害もさほど受けてはいない。
にも関わらず、軍勢を後退させよという祐永からの命が下されたのである。
何故の判断なのであろうか…
これには長継は思わず首を傾げながらそう声を漏らしていた。
混乱した様子を見せ始める長継に対してドヴェルクが言う。
ドヴェルク
「後退することで軍勢を一度立て直して再び戦いに望むということでは無いでしょうか?」
長継も考えているように自軍は劣勢の状態に陥ったわけでは決して無い。
だが、このままの状態が長引けば攻勢側である連合軍は間違いなく疲弊する。
ヘルト軍はそのすきを突いて一気に我ら軍勢へと襲いかかってくる事が危惧される。
それ故に祐永は、兵たちの士気を立て直す為にもここは一旦退くべきであるという判断に至ったのであろう。
長継
「うむ、なるほどドヴェルク殿の申される通りかも知れぬな…よし、では我ら軍勢よ、後退を始めよ!」
形勢が逆転する事で自軍の被害を最小限にまで抑える為故の策なのでは無かろうか。
ドヴェルクによる考えを聞いた長継は深く頷いた後、命令を下して後退を始めるのであった。
そして連合軍本陣では祐永が兵たちの前で声を上げる。
祐永
「では例の物を直ちに用意するのじゃ!信常殿が作られた、あれをな。」
ヘルト城の城門の破壊には至っておらず、連合軍としての進展が見られなかったようである。
これに対して志太幕府軍総指揮である志太祐永は、焦りを感じ始めていた。
何としてもこの状況を打破せねば連合軍の勝利は望めないであろう。
そう考えた祐永は、ヘルト城の周辺を見回し始める。
それからしばらくした後に彼はある物に目を付け、行動を起こそうとしていた。
どうやら自身の中で名案が閃いたようであった。
祐永
「城門の破壊に当たられている各々方よ、今一度軍勢を後退させよ!」
祐永は前線で戦いを繰り広げられている軍勢に対してそう声を上げていた。
それは、軍勢の一時後退を命じるというものであった。
宗重
「す、祐永様?我らの軍勢を後退させよとのことにございますか?」
祐永によるその命を耳にした宗重は、非常に驚いた表情であった。
そして政武は呆れた様子で口を開き始める。
政武
「おいおい祐永さんよ、一体どうしちまったんだ?まさか、アテヌのおっさんに怖気づいたっていうのかい?」
もしや、先刻に感じたアテヌの強さに恐れをなして撤退するのではあるまいか。
そう考えた政武は祐永に対してそのような言葉を投げ掛けていた。
すると崇房が政武に対して答え始める。
崇房
「いや、祐永様は何かお考えがあられてのことにございましょう。ひとまず我らの軍勢を後退させましょうぞ。」
もし今、ここで撤退するという中途半端な事を行えば、志太幕府連合軍として名折れであろう。
総指揮である祐永もその事は重々に承知しているはず。
必ずや何らかの策があった故の今回の命令に間違いは無いであろう。
崇房によるその言葉を聞いた宗重ら連合軍の軍勢は納得し、一斉に後退を始めていた。
一方、城の西側に居る長継とドヴェルクらの軍勢は祐永による声を聞いた事で皆が手を止めていた。
長継
「何?後退じゃと?一体、祐永殿は何を考えられておるというのじゃ…」
ヘルト軍との籠城戦において今現在は、自軍としても致命的な被害もさほど受けてはいない。
にも関わらず、軍勢を後退させよという祐永からの命が下されたのである。
何故の判断なのであろうか…
これには長継は思わず首を傾げながらそう声を漏らしていた。
混乱した様子を見せ始める長継に対してドヴェルクが言う。
ドヴェルク
「後退することで軍勢を一度立て直して再び戦いに望むということでは無いでしょうか?」
長継も考えているように自軍は劣勢の状態に陥ったわけでは決して無い。
だが、このままの状態が長引けば攻勢側である連合軍は間違いなく疲弊する。
ヘルト軍はそのすきを突いて一気に我ら軍勢へと襲いかかってくる事が危惧される。
それ故に祐永は、兵たちの士気を立て直す為にもここは一旦退くべきであるという判断に至ったのであろう。
長継
「うむ、なるほどドヴェルク殿の申される通りかも知れぬな…よし、では我ら軍勢よ、後退を始めよ!」
形勢が逆転する事で自軍の被害を最小限にまで抑える為故の策なのでは無かろうか。
ドヴェルクによる考えを聞いた長継は深く頷いた後、命令を下して後退を始めるのであった。
そして連合軍本陣では祐永が兵たちの前で声を上げる。
祐永
「では例の物を直ちに用意するのじゃ!信常殿が作られた、あれをな。」
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