架空戦国伝

第１０章 異国の大決戦編

22.ワニアの戦い（１４）

背負っていた飛行装置に銃弾が命中した事でアテヌの体は失速。
やがて地面へと墜落し、負傷していた。

連合軍はこれを好機とし、全軍でヘルト軍への攻撃を開始。
ヘルト軍は予想外の出来事によって混乱しており、戦局は一気に連合軍が優勢となっていた。
軍勢の壊滅を恐れたカルロスは、アテヌと共にヘルト城内への退却を始めていた。

政武
「アテヌ！貴様逃げるのか！この卑怯者めが！」

ヘルト軍が全軍城へと退却する様子を見た政武はアテヌに対して怒鳴り声を上げていた。
するとアテヌは一瞬足を止め、政武に対して見下した表情をしながら答える。

アテヌ
「何やら育ちの悪そうな鼠が鳴いていますね。放っておきましょう。」

言葉こそは分からないが、どうせ罵声の言葉を浴びせているのであろう。
今は相手になどせず、自軍を退却させる事が先決。
アテヌはあくまでも冷静さを保ちながらそう言っていた。

カルロス
「アテヌ！さあ早く城内へと戻るのだ！」

カルロスのその声により、軍勢はさらに退却の足を速めていくのであった。

やがてヘルト軍は全軍が城内へと退却。
その瞬間に全ての城門が閉められた。

ドヴェルク
「ヘルト城、ですか…これは厄介なことになりそうですね…」

固く閉ざされた城門を前にしてドヴェルクがそう呟いていた。
すると政武が軽く鼻で笑いながら言う。

政武
「ふん、こんな城なぞ俺たちが簡単に落としてくれるわ！」

たとえ籠城戦となったとて、我が軍勢の力をもってすれば攻略するのは容易な事であろう。
政武は好戦的な態度を見せている。

すると長継がそんな政武を静止するようにして口を挟み出す。

長継
「ヘルト城は普請が今もなお続けられておると聞いておる。それ故、相当堅固なものとなっておろう。我らが苦戦を強いられるは必定かと…」

カルロスによるワニアの統治下においてヘルト城は、頻繁に普請工事が行われているという。
それ故に城の防御力は相当なもので、攻略にあたっては一筋縄ではいかぬであろう…
長継は神妙な表情をしていた。

祐宗
「堅固な城…さすればあの墨山城…いや、それ以上なものなのであろうか…」

どうやら祐宗は、堅固なヘルト城が自国である創天国の墨山城に重なって目に見えているようであった。

墨山城。
かつて墨山国の外河家が本拠地としていた城である。
墨山城は城の大部分に鋼鉄が用いられており、そしてこの地一体で日常的に発生する濃い霧による視界不良も相まって「堅城」と呼ばれていた。
事実、志太家が攻略に至るまで二度の攻城戦が繰り広げられ、苦戦を強いられている。

宗重
「じゃとすれば長継殿が申される通り、我らは相当な苦戦を強いられるは必定。これは気を引き締めねばなるまい…」

祐宗の口から墨山城と耳にした事で宗重もまた深刻な表情を浮かべながらそう言っていた。

崇房
「墨山城は我が父から攻略には手を焼かされたと聞いております…」

墨山城の堅固さは自身の父である崇冬からはよく聞いていたと崇房は答えていた。
「墨山を超えし城はこの創天国には有らず」
崇冬は生前にこのような言葉を残していた事から、いかに墨山城が堅固であったかが分かるであろう。

するとそんな彼らの様子に対して政武が急かすように言う。

政武
「おいあんたらよ、ごちゃごちゃと言ってねぇでさっさとあの城を落とそうぜ。アテヌのおっさんが逃げ込んだあの城をな！」

政武はなおも好戦的な態度であった。