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第10章 異国の大決戦編

19.ワニアの戦い(11)

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ヘルト城の東側では長継ら連合軍とカルロス率いるヘルト軍の戦いが繰り広げられていた。
やがて連合軍に追い込まれた事でカルロスはアテヌに援軍を要請。
ほどなくしてアテヌはカルロスの軍勢の元に到着。
彼の姿は上空に浮かんだ状態という、にわかにも信じがたい登場で連合軍を驚かせていた。

それは、自身の部下であるカーネルが製作した装置によって実現出来ている事をアテヌによって連合軍はすぐに知る事となった。
だが、仕掛けは分かったところで連合軍は手も足も出ないであろうと考えたアテヌは挑発的な態度を見せていた。

アテヌ
「さあ、貴殿らもこれより空の上から降り注ぐ地獄の炎の餌食となるでしょう。」

そう言うとアテヌの手からたちまち炎が現れ始めた。

長継
「いかん!このままでは我らも宗重殿らと同じように炎に焼かれてしまうぞ!」

先刻前に彼らは燃え盛る炎に宗重らの軍勢がすっぽりと包まれる光景を目にしていた。
それと同じ出来事が今まさにこの場で再び起きようとしている事に対して長継は焦りの声を上げていた。

すると崇房は突然に声を上げ始める。

崇房
「そうはさせぬ!それっ!」

その掛け声と共に手にしていた鉄砲をアテヌに向けて砲撃した。
発射された弾丸は、アテヌを目掛けて一直線に飛び始める。
次の瞬間、アテヌは素早い動きを見せた。

アテヌ
「おや?それで私を撃ち落とそうとしているのですか?無駄ですよ。ふふふふ…」

どうやらアテヌは弾丸を器用にかわしていたようである。

崇房
「ええい!ならば当たるまで貴様を狙い続けるまでよ!」

たとえ一発目が駄目であろうとも、数多く打てば必ず当たるであろう。
そう考えた崇房は素早く弾込めを行い、再びアテヌに狙いを定めていた。

その様子を見ていた祐永が声を上げ始める。

祐永
「よし、拙者も応戦いたす!アテヌ・ブラウスよ、覚悟するが良い!」

祐永もまた鉄砲を手にし、アテヌ目掛けて砲撃を行った。
辺りには二挺の鉄砲による砲撃音が等間隔で鳴り響き始める。

そうしてしばらくの時が過ぎていたが、弾丸は一向にアテヌに命中しないのであった。

アテヌ
「無駄だということが分からないのですかね?」

なおも必死で鉄砲を構えて撃ち続ける崇房と祐永らに対してアテヌは静かにそう言っていた。

祐永
「なんと素早き動きであるか…これでは手も足も出せぬぞ。どうすれば良いのじゃ…」

幾度も狙いを定めて砲撃すれど命中する気配は無し。
祐永は素早い動きで空を舞うアテヌの姿を見ながらそう呟いていた。
アテヌによる素早さが余程のものであったという事が良く分かる。

崇房
「はぁ…はぁ…はぁ…くそっ、何か打つ手は無いのか…」

この短い時間に何発も鉄砲を撃っていた事もあってか、崇房は息を切らしながらそう言っていた。
そんな祐永と崇房らの様子を見たアテヌが軽く首を傾げながら口を開き始める。

アテヌ
「ほう、これで終わりですか?それでは次は私の番ですね。ふっふっふっふっふっ…」

そう言うとアテヌの手から発生していた炎は勢いを増し始める。
その炎は、まるで獲物を得ようとする獰猛な獣のようであったという。

長継
「万事休す…にござる…」

長継は燃え盛る炎を前に覚悟を決めた表情であった。
すると次の瞬間、辺りに大きな音が鳴り響いた。

アテヌ
「ぐっ…なっ、なんだと…」

アテヌは驚きの表情を見せていた。
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