架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第10章 異国の大決戦編

18.ワニアの戦い(10)

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宗重と政武らの軍勢は、アテヌが作り出した炎に包まれていた。
その様子は、ヘルト城の西側に軍勢を構える長継ら連合軍も気付き始める。
やがて彼らはアテヌの術によって宗重と政武らの軍勢が犠牲となった事を知る。

空を飛び、手からは炎をも作り出す…
物の怪の力を借りてこの術を会得したというのか、はたまた何かの仕掛けが有るというのであろうか。
連合軍の者たちは、考えれば考えるほど混乱し始めていた。
そしてほどなくするとカルロスが声を上げ始める。

カルロス
「おぉアテヌよ、よくぞ来てくれたな!待っておったぞ!」

どうやらアテヌが連合軍の前に姿を現したようである。

ドヴェルク
「アテヌ・ブラウス、ついに来たか…それにしても…」

長継
「見事なまでに空に浮かんでおる。これは一体、何が起きておるというのじゃ…」

アテヌはなおも空中に浮かび続けている。
この現実離れした状況にドヴェルクや長継は、戸惑いの表情を見せていた。

祐永
「やはりアテヌと申す男は物の怪の能力を身に着けておるのでは無かろうか…」

よもや創天国と同じような物の怪がセビカ国にも存在しているのか。
そして、その者たちの力を借りる事でこうした能力を会得したというのであろうか…
祐永は、再び考えれば考えるほどに混乱し始めていた。

だが、崇房だけはただ一人冷静にアテヌをしげしげと見つめながら祐永に対して言う。

崇房
「祐永様、かようなことが出来るはずなぞ有り得ませぬ。必ず…必ず何かあるはずにございます…」

今のアテヌの行動は、生身の人間が到底出来るはずの無い事である。
それ故に、何か必ずそれを可能にする仕掛けがあるはずだ。
そう考えていた崇房は、なおもアテヌの姿を注意深く見ていた。

するとやがて何かに気付いたのであろうか、突然崇房が声を上げ始める。

崇房
「むむっ!見えた!仕掛けが見えたぞ!あれじゃ!」

その声を聞いた長継もたちまち気付き始める。

長継
「うむ、奴の後ろに何か装置のような物が見えますな。」

するとアテヌがにやりと笑いながら言う。

アテヌ
「ふふふふ…貴殿らはどうもこの仕掛けが気になっているようだな。」

アテヌの背中には、ある物を背負っていた。
それは、我々の世界の映画などで目にする飛行装置である「ロケットベルト」のような物であった。
この装置を背負う事で空中の浮遊を可能にしていたのである。
そしてアテヌが自慢気な表情で続けて喋り始める。

アテヌ
「これは我が配下、カーネル・ギーズが私だけの為に作ったものである。」

どうやらアテヌが使用しているこの装置は、自身の部下であるカーネル・ギーズが製作したものであるという。
この世界において人間が自在に空を飛ぶ装置が発明され、それが公式に実用化にまで至るのは最も近代になってからである。
にも関わらず、この時代に既にそうした技術がカーネルによって実現させていたという。

当時の出来事を記した文献にはこの装置の存在は確認されてはいるが矛盾点が多く目立ち、信憑性に乏しい。
それ故に、あくまで創作上の話であったのでは無いかというのが現代においての見解とされている。

ドヴェルク
「何と、やはりカーネルが絡んでいたか…だとすれば、これは相当厄介なこととなりそうですね…」

先刻による自身の考えが真であったという事にドヴェルクは思わずそう口にしていた。
そして同時にカーネルという有能な人物が今回の一件に関与しているという事実を知り、次第に曇った表情へと切り替わっていった。

アテヌ
「だが、仕掛けが分かったとてどうにもできまい?」

アテヌは、連合軍に対して挑発的な態度を見せながらそう言っていた。
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