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第10章 異国の大決戦編

17.ワニアの戦い(9)

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ヘルト城の南側において宗重と政武らの軍勢は、激しく燃え盛る炎になおも包まれている。

大きな掛け声と共に宙に浮き始めるアテヌ。
そして彼は自らの手から炎を発生させた後、上空から宗重らを目掛けて火を放つ。
このにわかに信じがたい出来事が、つい先刻に起きていたのであった。

崇房
「くっ、宗重殿…政武殿…」

城の南側でなおも激しく燃え盛る炎を見ながら崇房は呆然としている。
先程までは取り乱した様子を見せてはいた彼ではあったが、この状況を見た事で最早どうにもならないと悟っているようであった。

やがてカルロスが皆に対して口を開き始める。

カルロス
「いかがでございましたかな?我が側近のアテヌ・ブラウスの術は?」

カルロスは冷静な表情をして連合軍の者たちに対してそう問い掛けていた。

長継
「数多くの術を会得しておるとは噂には聞いておったが、かような術というものは始めて見たわい…」

長継は、アテヌの術に度肝を抜かれている様子であった。

祐永
「アテヌと申す男は、物の怪らの力を借りてかような術を使ったというのであろうか…」

空を飛び、手からは炎を作り出す。
こうした超常現象を起こす事が出来るアテヌは一体、何者なのだ。
よもや、妖怪たちと手を組んで術を会得したというのであろうか…
酷く混乱した様子で祐永はそう口にしていた。

すると崇房が首を横に振って祐永に対して言う。

崇房
「いや、そのようなことなどは断じて有り得ぬでしょう。必ずや何か仕掛けがありましょうぞ…」

アテヌの術は、妖怪や物の怪の類の仕業などでは決して無い。
必ず何処かに仕掛けというものが存在しているはずだ。

自身の父である崇冬は元来、こうした類の存在には否定的であったという。
それ故に彼もまた父と同じ考えを持っており、論理的な分析を行っていた。

するとドヴェルクが何かに気付いた様子で口を開き始める。

ドヴェルク
「仕掛け…もしや、あの者が絡んでいるのでは…」

崇房
「む、ドヴェルク殿よ、何か思い当たることがございますか?」

ドヴェルクは頷き、続けて喋り始める。

ドヴェルク
「アテヌを陰で支える人物。その名は、カーネル・ギーズ。」

・カーネル ギーズ
アテヌ・ブラウスの部下。
ワニア島の移住者で出生地は明らかにされていない。
彼の持つ類まれなる多彩な才能に可能性を感じたアテヌが自らの部下として採用したという。
特に創作の能力に長けていたとされており、様々な道具が生み出されたという。

祐永
「ほう。そのカーネルと申す者は、我ら創天国でいえば九条信常殿のような者でござるな。」

祐永は、ドヴェルクの話にあったカーネル・ギーズという男にある者の存在が頭に浮かんだ。
それは、天下の発明家として名高い九条信常である。
彼が持つ斬新でかつ奇抜な発想のもとで様々な道具が発明され、その度に新たな技術革新が生まれていたという。

崇房
「九条殿…かような者がこのセビカにも居るというわけにござるか…」

崇房もまた祐永に同じく信常の存在を頭に浮かべていたようである。
同時に、世界には信常のような才能の持ち主の人間が存在しているという事に対して驚いていた。

そうしてほどなくした後にカルロスが彼らに対して再び口を開き始める。

カルロス
「どうやらアテヌが来たようですね。もう一度言います。皆さん、覚悟は出来ていますか?」

なおもカルロスは冷静な表情であった。
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