500 / 549
第10章 異国の大決戦編
03.遺した物
しおりを挟む
セビカ・志太幕府連合軍は、ワニア島を目指してセラージュの港より船によって進軍を開始。
先日の軍議において宗重の提案した航路に従い、軍勢は海の上を進んでいた。
今回の航路は比較的短い航路である故に、時間をかけること無くワニア島へと上陸が出来そうに思えた。
軍勢はワニア島西部への上陸を検討しているようである。
だが、この上陸場所はセラージュから海に面して隣接している事から、敵軍であるヘルトの警戒地区である可能性が高いのである。
本当に宗重の提案した航路で問題は無いのであろうか…
宗重の提案する航路を採用してはいたが彼以外の者たちはこうした疑問を少なからずは抱いていたようであった。
宗重
「さてさて、此度もこれを使うとするかな。」
そう言うと宗重はある物を素早く取り出し、船に投げつけた。
するとたちまち煙が発生し、あっという間に船を包み込んでいった。
どうやら宗重は、主に忍者が用いるとされる「煙幕」を使用したようである。
この煙幕は、以前に宗重と政武らがワニア島潜入時に用いられたものである。
煙が発生させた者たちには視界を遮られずくっきりと見渡せ、それでいて外部からの姿を消す事ができるという。
そしてその煙は発動場所に応じて動き続ける事でその効果は長時間に渡って持続化する。
今回は船の上で使用する事により、姿を消しての進軍を可能にしたのである。
得意げな表情を見せながら宗重が皆に対して言い放つ。
宗重
「この煙幕は今は亡き天下の発明家、九条信常殿の作にござる。」
九条信常。
その名前を聞いた長継が思わず声を上げる。
長継
「なんと!九条殿が航海に関する発明をされておったというのは耳にしたことがあったが、かような煙幕であったとは…」
この煙幕は、信常が村上島(現在の志栄島)の村上家に仕えていた頃に作られていた。
島という場所もあってか船を用いる事が多かった為、こうした煙幕のような航海に関する物がこの頃は多く発明されていたようである。
村上家当主 村上長馬の子としてこの地に生まれた長継も噂ではあったものの、その存在は知ってはいたという。
そして、今こうして彼の発明品を目にした事で九条信常という人間の底知れぬ能力を改めて知らされたのであった。
ドヴェルク
「創天国にはそのような素晴らしい発明をなされるお方がいらっしゃったのですね。」
ここまでに素晴らしい発明品を生み出す人物が創天国に居るというのか。
我が国セビカにも様々な能力に長けた者たちは居るが、彼のような能力には到底及ばないのでは無かろうか…
今回、その存在を知った事でドヴェルクは信常に対して尊敬の念を抱かずには居られなかった。
崇房
「亡くなられてもなお、我ら幕府をお守りいただけるとは…信常殿は今も生きておられるということにござろうな。」
信常が遺した発明品の数々が幕府を守ろうとしている。
たとえ死してその肉体が滅びようとも、その発明品たちには彼の魂が間違いなく宿っている事であろう。
崇房はそんな信常に対して神々しさを感じているようであった。
祐永
「我ら志太幕府の為に、か。実に有難きことにござる。」
志太家による幕府の為、ひいては泰平の世の為に我は発明を続けるものである。
生前にこのような言葉を信常は口にしていたという。
そうした事からも信常の幕府に対する忠誠心は相当なものであったと言えよう。
祐永
「信常殿、心より感謝いたすぞ…」
祐永は船の上で創天国の方角を向いて深々と頭を下げていた。
先日の軍議において宗重の提案した航路に従い、軍勢は海の上を進んでいた。
今回の航路は比較的短い航路である故に、時間をかけること無くワニア島へと上陸が出来そうに思えた。
軍勢はワニア島西部への上陸を検討しているようである。
だが、この上陸場所はセラージュから海に面して隣接している事から、敵軍であるヘルトの警戒地区である可能性が高いのである。
本当に宗重の提案した航路で問題は無いのであろうか…
宗重の提案する航路を採用してはいたが彼以外の者たちはこうした疑問を少なからずは抱いていたようであった。
宗重
「さてさて、此度もこれを使うとするかな。」
そう言うと宗重はある物を素早く取り出し、船に投げつけた。
するとたちまち煙が発生し、あっという間に船を包み込んでいった。
どうやら宗重は、主に忍者が用いるとされる「煙幕」を使用したようである。
この煙幕は、以前に宗重と政武らがワニア島潜入時に用いられたものである。
煙が発生させた者たちには視界を遮られずくっきりと見渡せ、それでいて外部からの姿を消す事ができるという。
そしてその煙は発動場所に応じて動き続ける事でその効果は長時間に渡って持続化する。
今回は船の上で使用する事により、姿を消しての進軍を可能にしたのである。
得意げな表情を見せながら宗重が皆に対して言い放つ。
宗重
「この煙幕は今は亡き天下の発明家、九条信常殿の作にござる。」
九条信常。
その名前を聞いた長継が思わず声を上げる。
長継
「なんと!九条殿が航海に関する発明をされておったというのは耳にしたことがあったが、かような煙幕であったとは…」
この煙幕は、信常が村上島(現在の志栄島)の村上家に仕えていた頃に作られていた。
島という場所もあってか船を用いる事が多かった為、こうした煙幕のような航海に関する物がこの頃は多く発明されていたようである。
村上家当主 村上長馬の子としてこの地に生まれた長継も噂ではあったものの、その存在は知ってはいたという。
そして、今こうして彼の発明品を目にした事で九条信常という人間の底知れぬ能力を改めて知らされたのであった。
ドヴェルク
「創天国にはそのような素晴らしい発明をなされるお方がいらっしゃったのですね。」
ここまでに素晴らしい発明品を生み出す人物が創天国に居るというのか。
我が国セビカにも様々な能力に長けた者たちは居るが、彼のような能力には到底及ばないのでは無かろうか…
今回、その存在を知った事でドヴェルクは信常に対して尊敬の念を抱かずには居られなかった。
崇房
「亡くなられてもなお、我ら幕府をお守りいただけるとは…信常殿は今も生きておられるということにござろうな。」
信常が遺した発明品の数々が幕府を守ろうとしている。
たとえ死してその肉体が滅びようとも、その発明品たちには彼の魂が間違いなく宿っている事であろう。
崇房はそんな信常に対して神々しさを感じているようであった。
祐永
「我ら志太幕府の為に、か。実に有難きことにござる。」
志太家による幕府の為、ひいては泰平の世の為に我は発明を続けるものである。
生前にこのような言葉を信常は口にしていたという。
そうした事からも信常の幕府に対する忠誠心は相当なものであったと言えよう。
祐永
「信常殿、心より感謝いたすぞ…」
祐永は船の上で創天国の方角を向いて深々と頭を下げていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる