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第9章 創天国の魂編

89.託した願い

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一方その頃、創天国の八光御所では祐宗と幕臣らの姿があった。
祐永ら率いる幕府軍が創天国を出発してから半月ほどの日が経った。
今回はその事に対しての話し合いを行うべく、祐宗は八光御所に各藩の幕臣たちを集めていたのである。

幕臣たちを前にして祐宗が口を開き始める。

祐宗
「我ら幕府軍によるセビカへの援軍について少し余から話が有る故、皆に集まっていただいた次第じゃ。」

貞広
「はっ、その御話とは一体どのようなものにございましょうか?」

すると祐宗は深刻な表情をして言う。

祐宗
「セビカへの派兵じゃが、必要があらば軍勢の増援をせねばならぬと余は考えておる。」

つい半月ほど前に志太幕府は祐永を主として同盟国であるセビカへの援軍を派兵した。
その軍勢の数は三千人ほどであったという。

これは、援軍としてはかなりの大兵力であると言っても良いであろう。
だが、それでも軍勢の増援が必要になってくるのでは無いかと祐宗は考えていたようである。

貞広
「増援、にございますか…」

崇冬
「上様は、今の軍勢の数では不足とお考えでありましょうか?」

貞広や崇冬らは祐宗の言葉が予想外であったのか、驚きの表情を見せていた。
すると祐宗は首を横に振って答える。

祐宗
「いや、此度の幕府軍の編成は確かなものであると余も思うてはおる。思うてはおるのじゃが…」

続けて祐宗が言葉を詰まらせながら言う。

祐宗
「異国の地で…我が幕府軍の力が果たして存分に発揮出来るのであろうかとも考えておってな…」

激しい戦国の乱世を生き抜いて来た者や、その者が持つ能力をしっかりと受け継いだ者。
果ては不屈の精神を持ち、負け知らずであった海賊衆の頭領。
こうした精鋭揃いの者たちで編成した軍勢は、最早非の打ち所がない完璧なものであると言っても良いであろう。

だが、そうした肩書きは自国である創天国に限った話。
異国の地で彼らの能力が果たしてそこまで通用するのであろうか。
「井の中の蛙大海を知らず」と言った状態では無かろうか。
祐宗はそう考えているようであった。

すると貞広が祐宗に食い下がるようにして言う。

貞広
「上様、此度の幕府軍の総指揮は祐永様、軍団長は宗重殿。いずれも我が幕府の創設に尽力なされた立派な御方たちにございます故、心配は無用かと存じます。」

志太祐永に宮本宗重。
この者たちはいずれも志太幕府を創設するにあたっては様々な功績を残している。
そうした実績が有れば今回の任務も難無くこなしてくれるはずであろう。

あくまでも貞広個人としての考えではあったが、他の者たちも深く頷き始めていた。
どうやら彼らが残した数々の功績を思い返す事で納得をし始めている様子であった。

崇冬
「うむ、拙者も貞広殿に同じく。そして此度は守常殿らのしっかりとされたお支えもございます故、ご安心くださいませ。」

そして崇冬も貞広の言葉には賛同している様子であり、さらに彼は守常の存在についても言及し始めていた。

天下の発明家として名を残した九条信常を父に持つ守常。
彼は幼き頃から父と同じ発明家を目指すべく日々修行を積んで行きて来た。
その甲斐もあってか今では父 信常と肩を並べるほどの能力を持ち合わせるようになった。

今回の派兵では彼の発明した大船を用いており、軍勢らの身の安全を確保させている。
こうした支えの上で我が幕府軍は成り立っているのだ。
崇冬はそう言っていた。

守常
「ははっ、真に有難きことを…拙者は発明家としての冥利に尽きまする。」

崇冬による言葉を聞いた守常は頭を深々と下げながらそう言っていた。
やがて貞広は自身に満ちた表情を見せて祐宗に対して声を上げる。

貞広
「上様、たとえ異国の地であろうとも我ら幕府の力が劣ることなどは決してございませぬぞ!」

祐宗
「幕府の力、か…うむ、分かった。祐永らが勝利を収めてこの地に戻って来ることを待とうではないか!」

どうやら祐宗も先程に貞広らが述べていた事に対して納得をしている様子であった。

祐宗
「頼んだぞ。我が弟、祐永よ…」

祐宗は真剣な表情でそう呟いていた。
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