架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第9章 創天国の魂編

86.悪循環の打破

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幕府軍の将たちはセビカ国 国王であるアルド・セリアーに謁見。
遥か遠くの異国の地から援軍を派兵してくれた創天国にアルドは感謝の意を表していた。
やがてヘルト独立勢力との戦いに向けてセビカ国と創天国の二か国による軍議が開かれていた。

まず始めに祐永が口を開く。

祐永
「して、セビカと我ら幕府軍が戦う相手であるヘルトについてですが…」

どうやら今回、幕府軍とセビカ軍の連合軍が戦を仕掛ける相手であるヘルトの状況を確認したいようである。
すると長継が答え始める。

長継
「現在のヘルトの情勢は拙者がお話しいたします。」

今から一月ほど前、セビカ国と同盟締結を行った後に幕府の使者たちが帰国していた。
それから間もなくしてヘルトによる軍事侵攻が再び始まったという。

これを受けてセビカ国は軍団を編成し、ヘルト軍に対して応戦。
だが、戦にはことごとく敗北。
結果的にセビカ国は三つの地域を失う事となった。

宗重
「儂らが創天国に戻った後にもヘルトは領土を拡大しておると申すか…」

深刻な様子で宗重はそう言っていた。

政武
「へっ、全くヘルトの連中は欲張りな奴らばかりじゃのう。」

政武は、徐々にセビカ国の領土を侵食していくヘルトに対して呆れた様子であった。
やがてドヴェルクが重々しい口調で喋り始める。

ドヴェルク
「このセラージュがヘルトに奪われてしまうのも時間の問題かと思われます…」

ヘルトによる軍事侵攻は今現在も継続中である。
それ故に国王の本拠地であるセラージュもヘルトによる攻撃を受ける可能性も充分に有り得る話だ。
セリアー城の陥落、それはセビカ国の滅亡を意味する。
こうした危機をドヴェルクは感じずには居られなかった。

すると崇房がすかさず意見を述べ始める。

崇房
「それにはまず、奪われた領土を取り返すが先決にございましょうかな。領土が無くば敵国とは戦えぬ故…」

領土の数は国力に比例すると言っても良い。
それ故に今は領土の復帰に尽力し、国力を高めるべきであろう。
崇房はそう考えていたようである。

それに対して長継が首を横に振って答える。

長継
「いえ、それでは戦いが長期化してしまいましょう…そうなってしまえば…」

ドヴェルク
「私も長継に同じく、仮に領土を取り戻せたとしても戦いが長引けば私どものセビカも自滅しかねません…」

ヘルトによって奪われた領土を取り戻す事が先決。
それなりの領土が無ければ国家としての力も充分に蓄えられないであろう。
故にヘルトに対して決戦をけしかけるには時期尚早では無いか。
確かに崇房の意見は一理ある。

しかし、そうなればヘルトとの戦いは間違い無く長期化するであろう。
長期化する事でかえってセビカの国力が疲弊するのでは無かろうか。
長継とドヴェルクはそうした危険性もはらんでいるという事を述べていた。

祐永
「しかし、これ以上敵国に領土を奪われてしまえばそなたたちの国であるセビカの存続も危うきものとなります故、まずはそうするしか道は無きかと…」

どうやら祐永も崇房の意見には賛成のようである。
これ以上、自国の領土を削られてしまう事となればセビカは間違いなく滅亡するであろう。
そうならぬ為にも今、我らが出来る事と言えば領土を取り戻す事である。

分かってはいる事ではあるが、果たしてそれが本当に正しい選択なのであろうか…
皆は頭を抱えながらしばらく沈黙状態となっていた。

そうしてしばらくの時が経った後、宗重がその沈黙を破り始める。

宗重
「いや、ここはヘルトの本拠地を攻めるがかえって良き選択かも知れぬぞ。」

長継
「何ですと!それでは、ワニア島に攻撃を仕掛けると申されますか?」

宗重は、奪われた領土の奪還を優先するのではなくヘルトの本拠地であるワニア島を攻めるべきであると言っていた。
先程の崇房や祐永らとは真逆の意見である。
これには思わず皆は驚きの表情を見せていた。

宗重
「うむ、儂は少し思うことがありましてな…」

宗重は続けて喋り始めるのであった。
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