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第9章 創天国の魂編

85.国王の風格

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幕府軍はセビカ国セラージュに到着し、長継らと共にセリアー城へと向かった。
そこで国王であるアルドに謁見する事となった。

アルド
「私がセビカ国 国王 アルド・セリアーです。我が国の為に軍勢を出していただいた事には真に感謝しております。」

アルドは祐永らに対して頭を下げてそう言い、それと同時にドヴェルクは彼らに通訳を行っていた。
それを聞いた祐永はアルドに同じく深々と頭を下げながら答え始める。

祐永
「拙者、創天国 志太幕府 大老 志太祐永にございます。我ら盟友の為あらば、命を懸けてでもお守り通す次第にございます。」

セビカ国と創天国は共に同盟を結んだ盟友である故、どのような困難であったとしても決して逃げる事無く立ち向かう覚悟である。
すると今度はドヴェルクがアルドに対して祐永が言った言葉の通訳を行っていた。

それを聞いたアルドはさらに頭を深く下げていた。
彼の目には今にも溢れんばかりの涙が溜まっていたようである。
そしてドヴェルクもまた目を潤せながら祐永らに対して答える。

ドヴェルク
「兄上いや、我がセビカ国 国王 アルド様も大変喜ばれております。」

現在、セビカは敵国の侵略によって国家滅亡の危機にさらされていた。
それは一年後、一月後、いや明日かも知れぬと国民たちが怯える日々を過ごしている。
そうした中で先程の祐永による言葉が余程頼もしくそして有り難く感じたのであろうか、彼らは心より感謝の意を表していた。

すると崇房は思わず感嘆の声を漏らし始める。

崇房
「この御方がセビカ国王 アルド・セリアー殿にございますか。何ともまぁ、ご立派な御方であられるか…」

どうやら崇房はアルドの姿に対して国王らしい風格を感じているようであった。
そして宗重も胸を熱くしながら口を開き始める。

宗重
「これが代々にわたって国を治めておられる王であられる故の風格にございましょうな…」

セビカは数百年も昔に建国された国家である故に、代々の王たちは皆それらに相応しき風格を醸し出している。
長きにわたって国家を存続させて来られた所以がここには確かにあると言っても良いであろう。
宗重は自身らがアルドに謁見するのは畏れ多く、また実に光栄な事であると考えている様子であった。

だが、政武は彼らとは対照的な態度で口を開き始める。

政武
「ふふん、それにしてもあんたは実に王様らしい男であるのう。惚れ惚れするぜ。」

宗重
「政武!貴様は…いい加減にせぬか!」

するとアルドは政武に対して口を開き始める。

アルド
「マサタケ。アリガトウ。ワタシハ、ウレシイデス。」

片言ではあったものの、政武に対する精一杯の感謝の言葉を彼ら創天国の言葉でアルドは述べていた。
そしてそれに続いてドヴェルクも言う。

ドヴェルク
「頼もしい御方が味方に居て実に心強いですね。」

政武
「へへっ、あんたらもなかなかなもんじゃと思うぜ。王様にドヴェルクさんよ。」

政武は照れくさそうな顔を浮かべながらアルドらに対してそう答えていた。
そうしていると長継が神妙な顔で口を開き始める。

長継
「それでは幕府の御方たち、早速ではござるが軍議を始めましょうぞ。」

祐永
「うむ、そうでござった。では、始めて参りましょう。」

こうしてセビカ国と創天国による軍議が開かれる事となったのである。
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