上 下
490 / 549
第9章 創天国の魂編

82.到着目前

しおりを挟む
幕府軍が航海を始めて数日が経った。
その途中で激しい嵐に見舞われるなどしてはいたが先の守常によって発明された大船のおかげもあり、難なくこれらを突破。
今現在も安定を保ちながらセビカへと向かうべく航海が続けられていた。

崇房
「進めど進めど周りは海。セビカと申す国は真に我ら創天国から遠き場所に有るのじゃな…」

崇房は苦い表情を浮かべながらそう言っていた。
どうやらこの数日間を船の上で過ごしている事に対して少し疲れた様子を見せている。
そしてそれは崇房に限った話では無かった。

祐永
「ふむ、あれからもう何日も海の上を進み続けておるが…まだセビカには着かぬようであるな…」

祐永もまた崇房と同じく、依然として目的地であるセビカに到着する気配が見られぬ事に対してそうした言葉を漏らしていた。

創天国とセビカまでは相当な距離がある為、長期間の航海となる事は間違い無い。
それ故に、気を緩める事無く航海を続けるべし。
祐永は創天国からの出港前に皆に対してそう促していた。
だが、今のこの状況下に置かれた事で祐永自身までもが不安を抱き始めているようであった。

一方、宗重らの乗った船では宗重が静かに口を開き始める。

宗重
「政武よ、セビカが見えてくるのはもうじきぞ。向こうでの準備はできておるか?」

政武
「あぁ、言われなくとも俺も分かってるよ爺さん。セビカに着くは間もなくということはな。」

宗重と政武らは一度、創天国から海を渡ってセビカを訪問していた。
それ故に現在の自身たちが今る場所をある程度把握していたのであろうか、目的地であるセビカに近付いて来ている事を感じているようであった。

政武
「全く退屈で仕方が無い故、早いとこ陸地に足を着けたいものじゃ。」

宗重
「ほう、奇遇であるな。儂もお前と同じことを考えておったところじゃ。」

宗重は、珍しくお互いの考えている事が一致していた事に対して軽く笑いながらそう言っていた。

宗重
「間もなく我ら創天幕府の軍勢が助太刀に参ります故に長継殿にドヴェルク殿、今しばらくの辛抱にござるぞ…」

長継やドヴェルク、そしてセビカ国王のアルド。
今、彼らはいつ襲われるかも知れぬ敵国 ヘルト独立勢力の脅威に怯えて眠れぬ日々を過ごしているであろう。
だが、それも我々創天幕府の援軍がセビカに到着するまでの話だ。
それまではもうしばらくの辛抱である故に、何としてでも持ち堪えてくれ…
宗重は真剣な表情をしてそう呟いていた。

すると今度は政武が笑いながら宗重に対して言葉をかける。

政武
「へへっ、爺さんよ。俺もちょうどあんたと同じことを考えていたぜ。珍しい日もあったもんじゃな。」

どうやら政武もまた宗重と同じ考えを持っていたようであり、たまらず笑いながらそう言っていた。
こうも珍しくお互いの思っている事が一致する事に対し、和やかな雰囲気へと切り替わった。
以前は意見が食い違うなどして口論に至った事も多々あったが、今は最早以心伝心と言っても良い程にまで至っている。
宗重と政武らは、たびたび共にこうして行動していた故の事であろう。

それから数刻の時が経っていた。
すると宗重が政武に対して声を上げ始める。

宗重
「おい政武、あそこを見てみよ!」

政武
「おぉ!ようやくこの船の上での生活からおさらばできるようじゃな!」

政武は喜びの声を上げていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也
ファンタジー
 高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!  戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。  持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。  推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。  ※毎日投稿。  ※歴史上に存在しない人物も登場しています。  小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

墨山事件

佐村孫千(サムラ マゴセン)
ミステリー
舞台は架空世界の現代。 とある地方で謎の集団失踪事件が発生。 それから四十数年の時が過ぎたが未だ真相解明には至っていない。 この未解決事件を解決すべく一人の若き探偵が立ち上がった...。 ※ この物語は、ネットの都市伝説である「鮫島事件」をモチーフに作者が独自のオリジナル要素を加えて執筆した作品です。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...