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第9章 創天国の魂編
80.嵐を受けて
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幕府軍がセビカ国を目指して航海を始めて数刻ほどの時が経ったところで政武が苦い表情をして言う。
「間もなくこの辺り一帯は嵐に見舞われるであろう。」
だが、宗重らは心配した様子を見せる事なく口を揃えて答える。
「嵐でも構うことなど何もない。守常殿の発明されたこの大船が必ずや守ってくれるのであるから。」
その言葉に対して半信半疑ではあったものの、政武は彼らの言うように海の上を進み続けるのであった。
政武
「爺さんよ、今一度聞くぞ。本当に大丈夫なんじゃな?」
政武はなおも心配そうな表情をして宗重に対してそう問い掛けていた。
すると宗重は胸を張って答え始める。
宗重
「何度も同じことを申させるな。まぁ、じきにお前も守常殿がいかに優れた御人であるか分かるであろう。」
心配には及ばないと先刻前にも言ったはずだ。
守常という男によって発明された船であらばこれから来る嵐など屁でもない、と。
やがて間もなくして政武が身構えながら言う。
政武
「もうじき来るぞ…嵐が…嵐がな…」
そうして嵐は政武らの船を目掛けて襲いかかろうとしていた。
政武
「むぅっ!この嵐は…俺の船が沈んだ時よりも幾分かは凄まじいぞ!」
どうやら今回の嵐は、先月に幕府と政武率いる亀去島海賊衆との戦いで遭った時のものよりも勢力は強いようである。
政武らの乗っていた船が見るも無惨な姿に破壊されたあの嵐よりも強いという事からも、いかに今回の嵐が凄まじいものであるかは分かるであろう。
だがそれでも宗重は焦る事は無く、むしろ余裕の表情を見せている。
宗重
「そう慌てるでない。政武よ、お前は仮にも海賊衆の頭であろうが。そのことを忘れたか?」
これしきの嵐で慌てるなどお前は本当に海賊衆の頭であったのか。
宗重はそう言いたげな様子であった。
もちろん海賊を生業としていた政武は、嵐などの不測の事態に怯む事は決して無かった。
だがそれも、先の嵐に遭った事で自身の船が沈没させてしまったという苦い経験をするまでではあるが。
政武は二度とこうした同じ過ちを犯さぬよう慎重になっていた。
むしろ慎重になり過ぎていたと言っても良いであろう…
その直後、嵐は凄まじい雨風の音を響かせながら幕府軍の船に襲いかかり始める。
政武
「いかん!もう嵐が来る!本当に沈んでしまうぞ!」
政武は必死の形相で声を上げていた。
この嵐によって自身らの乗っている船は跡形もなく破壊され、やがて全軍は海の底に沈むであろう…
そう思った政武は死を覚悟し、思わず目を強く閉じていた。
それから少しの時が経った。
やがて政武は閉じていた目をゆっくりと開くとすぐに驚きの声を上げ始める。
政武
「な、なんじゃと?この嵐の中でも…びくともせぬというのか…」
幕府軍の船は今、確かに凄まじい嵐の中に居る。
だが、そのような事を一切感じぬほどに船は安定を保っているのである。
この光景が余程信じられぬのであろうか、政武は自身の目を疑っていた。
すると宗重が政武の肩を軽く叩いて言う。
宗重
「ふむ、じゃから申しておったろう?この船に乗っておる限り儂らは大丈夫であるとな。」
政武
「ふむぅ…守常さんとか言ったかな?いやはや恐れ入った。実に凄い男であるのう。」
政武は感嘆の声を上げずにはいられなかった。
「間もなくこの辺り一帯は嵐に見舞われるであろう。」
だが、宗重らは心配した様子を見せる事なく口を揃えて答える。
「嵐でも構うことなど何もない。守常殿の発明されたこの大船が必ずや守ってくれるのであるから。」
その言葉に対して半信半疑ではあったものの、政武は彼らの言うように海の上を進み続けるのであった。
政武
「爺さんよ、今一度聞くぞ。本当に大丈夫なんじゃな?」
政武はなおも心配そうな表情をして宗重に対してそう問い掛けていた。
すると宗重は胸を張って答え始める。
宗重
「何度も同じことを申させるな。まぁ、じきにお前も守常殿がいかに優れた御人であるか分かるであろう。」
心配には及ばないと先刻前にも言ったはずだ。
守常という男によって発明された船であらばこれから来る嵐など屁でもない、と。
やがて間もなくして政武が身構えながら言う。
政武
「もうじき来るぞ…嵐が…嵐がな…」
そうして嵐は政武らの船を目掛けて襲いかかろうとしていた。
政武
「むぅっ!この嵐は…俺の船が沈んだ時よりも幾分かは凄まじいぞ!」
どうやら今回の嵐は、先月に幕府と政武率いる亀去島海賊衆との戦いで遭った時のものよりも勢力は強いようである。
政武らの乗っていた船が見るも無惨な姿に破壊されたあの嵐よりも強いという事からも、いかに今回の嵐が凄まじいものであるかは分かるであろう。
だがそれでも宗重は焦る事は無く、むしろ余裕の表情を見せている。
宗重
「そう慌てるでない。政武よ、お前は仮にも海賊衆の頭であろうが。そのことを忘れたか?」
これしきの嵐で慌てるなどお前は本当に海賊衆の頭であったのか。
宗重はそう言いたげな様子であった。
もちろん海賊を生業としていた政武は、嵐などの不測の事態に怯む事は決して無かった。
だがそれも、先の嵐に遭った事で自身の船が沈没させてしまったという苦い経験をするまでではあるが。
政武は二度とこうした同じ過ちを犯さぬよう慎重になっていた。
むしろ慎重になり過ぎていたと言っても良いであろう…
その直後、嵐は凄まじい雨風の音を響かせながら幕府軍の船に襲いかかり始める。
政武
「いかん!もう嵐が来る!本当に沈んでしまうぞ!」
政武は必死の形相で声を上げていた。
この嵐によって自身らの乗っている船は跡形もなく破壊され、やがて全軍は海の底に沈むであろう…
そう思った政武は死を覚悟し、思わず目を強く閉じていた。
それから少しの時が経った。
やがて政武は閉じていた目をゆっくりと開くとすぐに驚きの声を上げ始める。
政武
「な、なんじゃと?この嵐の中でも…びくともせぬというのか…」
幕府軍の船は今、確かに凄まじい嵐の中に居る。
だが、そのような事を一切感じぬほどに船は安定を保っているのである。
この光景が余程信じられぬのであろうか、政武は自身の目を疑っていた。
すると宗重が政武の肩を軽く叩いて言う。
宗重
「ふむ、じゃから申しておったろう?この船に乗っておる限り儂らは大丈夫であるとな。」
政武
「ふむぅ…守常さんとか言ったかな?いやはや恐れ入った。実に凄い男であるのう。」
政武は感嘆の声を上げずにはいられなかった。
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