架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第9章 創天国の魂編

78.長き航海の始まり

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志太幕府将軍 志太祐宗の命により、同盟国となったセビカ国の危機を救うべく援軍を派兵すべく軍団を編成。
守常の発明した大船には祐永の軍勢、崇房の軍勢、そして宗重と政武の軍勢がそれぞれ三艇に分かれて乗り込み、創天国からセビカ国を目指して出港。

そうして一刻ほどの時が過ぎていた。
宗重と政武らが乗る船では、共に二人が会話を交わしていた。

宗重
「何としても全員が無事にセビカまで案内いたすことが今の儂らに課せられた任務にござろう。」

宗重はいかに安全にして幕府軍の皆をセビカの地まで導く事が今の自身たちの任務であると言っていた。
そして政武が静かに口を開き始める。

政武
「まさか、祐永さんが俺たちを頼りにしておるとはなぁ…とても将軍さんの弟とは思えんわ。」

政武は、先刻の祐永が自身らに今回の目的地であるセビカまでの案内という大役を命じた事に対して少し驚いていた。
先日の祐宗による軍団編成で客将となったとは言えど、つい先日まで政武は海賊衆の頭領という幕府とは縁の遠き身分であったのだ。
そうした身であるにも関わらずに祐永は何の躊躇いも無く、自身に対して軍勢の命を預けると言っても良いほどの役目を与えていた。
これに対して政武は実に滑稽であると感じているようであった。

宗重
「こら!政武!お前という奴は本当に…無礼にござるぞ!」

祐永は創天国を統べし将軍家の一門だ。
そのような身分の御方に対して何たる言いようであるか。
宗重は、先程の政武の言葉に対して険しい表情をしてそう怒鳴り声を上げていた。

すると政武は宗重を静止するように手を伸ばしながら答える。

政武
「あぁ、わかってるよ爺さん。じゃが俺はこれでも喜んではいるんだぜ?」

自身を頼りにしている祐永を滑稽と感じている一方で政武は、その力を認めてくれている事に対しては感謝をしていると述べていた。

宗重
「そうか…それならば良いが、お前はもう少し遠慮というものを知らぬのか。全く…」

そして宗重と政武らの乗った船の後方には、崇房ら軍勢を乗せた船があった。
軍師という軍の中枢を担う人物が指揮を取っているからであろうか、兵たちは非常に勇ましい表情をしている。

やがて崇房が一人、船上でぽつりと言う。

崇房
「それにしても木内政武という男、真に豪快な性格にござるな…」

崇房は、幕府軍の副軍団長に任命されてから今現在に至るまで終始一貫した豪快さを見せている政武に対して感嘆の声を漏らしていた。
そして続けて崇房が首を傾げながら呟き始める。

崇房
「しかし我らを救ってくれた恩人の子とはいえど、いささか傲慢過ぎはせぬか?まぁ、我らの力となってくれておることには感謝せねばなるまいがな…」

政武は、自身たちが滅亡する危機を幾度となく救ってくれた木内政豊の子である。
政豊は途中で惑いこそ見せてはいたが、最終的には義を重んじて義に生きた人物あった。
そうした政豊の性格の片鱗は、子である政武にも垣間見る事は確かに有る。
だが、政武自身の傲慢さが目立ってしまう事に対して崇房は少し鼻につくと感じているようである。

そして崇房の船の後方には、祐永らの軍勢を乗せた船があった。
そこでは祐永が目を閉じ、頭を深々と下げながら言う。

祐永
「政豊殿よ、お主のご嫡男のお力を少しばかしお借りしておりますぞ。」

貴殿の熱き魂を受け継いだ子である政武の力を今少し、お借りしたく候。
祐永は、亡き政豊に対して最大限の敬意を払っていた。

そうしていると政武が崇房や祐永らの船に対して声を上げ始める。

政武
「長き航海は今始まったばかりじゃ。お前たちよ、しっかりとついて来ぬと置いてくぜ!」

政武は、なおも豪快な口調であった。
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