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第9章 創天国の魂編

58.静かな城内

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宗重はヘルト城の城内への侵入に成功。
そして辺りを注意深く見渡した後に違和感を感じた宗重が首を傾げ始める。

城という設備であらば、城内を警備する役目の兵は存在するはずだと宗重は考えていた。
にも関わらず、そうした者たちが一人も居なかったのである。
この様子に混乱した表情を見せるもすぐに気を引き締め、城の内部への潜入に取り掛かるのであった。

宗重
「しかし、かようなまでの不用心さはかえって不安になってくるわい…」

再度周囲を見渡そうとも警備の兵はおろか、人の気配すらしないという。
ここまで閑散とした状態を目にした宗重は逆に不安を覚えていた。

宗重
「儂が見るに、ここいらに罠は無さげな雰囲気ではござるが…それでも注意はせねばならぬな…」

だが、この場所は敵地である事に変わりは無い。
それ故に、いかなる場合であったとしても細心の注意を払わねば痛い目を見るであろう。
そう考えていた宗重は再び気を引き締めた表情を見せていた。

そうしてしばらく辺りを見渡していると城内の隅に建っていた一棟の小屋を見つける。
宗重は足音を潜めながらゆっくりとその小屋に近付き、周囲を確認し始める。

宗重
「ん?あれは…もしや、蔵であろうかの?ここに兵糧などが蓄えられておるのか?」

小屋の全体を眺めながら宗重がそう言っていた。

籠城戦となった際は外部からの補給が絶たれる事によってやがて食料不足に陥り、城内に居る兵たちの士気が著しく低下する。
これがいわゆる「兵糧攻め」というものである。
こうした危機を回避する為にも食料を蓄えている蔵が城の内部には存在しているという。

さらに宗重は注意深く小屋をぐるりと見回す。
すると、食料らしき物が微量ではあったが近くに落ちているのを発見した。
これらの事から宗重は、この小屋が蔵として機能しているものであろうと思い始めていた。

宗重
「うむ、これは蔵であることにまず間違いは無かろう。であらば、戦となった時にこの蔵を焼き払えば良いというわけか。」

攻城戦となった際には真っ先にこの蔵を押さえておけば兵たちはたちまち大混乱に陥るはず。
それ故に、目前に構えたヘルト独立勢力との戦いを有利に進める事が出来るであろう。

少しずつではあるが、勝機が見えてきた。
これらの情報を得たという事で今回の潜入任務は十分に意味があると言っても良い。
宗重はそう考えている様子であった。

すると次に小屋の上部を指差しながら宗重が言う。

宗重
「おや?あそこの屋根が脆くなっておる。ふむ、あそこから中に入ることができそうじゃな。」

どうやら小屋の屋根の一部分が損傷しているようであった。
少し手をかければ穴がぽっかりと開くほど脆くなっているという。
その様子を見た宗重がしばらく考えた後に意を決した表情をして言う。

宗重
「どれ、では少しばかし中の様子を探ってみるとするか。」

先程に蔵である事を自身では認識してはいたが、果たしてそれは本当に合っているのか。
念の為にも一つ、内部を確認をしておくべきでは無かろうか。
そう考えた宗重は小屋の屋根に登り、中へと入っていくのであった。

その様子を遠くから見ていたアテヌが小さく呟き始める。

アテヌ
「ふふふ…自らが罠にかかろうとするとは。全く、愚かな鼠よのう。」

アテヌはなおも不気味な笑みを浮かべている。
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