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第9章 創天国の魂編
49.不慮
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ヘルト城への潜入を行うべくワニア山から足を進める宗重と政武ら。
途中で宗重の言葉に気を悪くした政武は一人、先へと足を進める。
すると政武の周りで大きな音が鳴り響く。
その直後、政武の姿は一瞬にして宗重の前から消えていた。
大きな音は、崖崩れであった。
政武の居た場所を中心に崖崩れが発生していたのだ。
どうやら宗重らが居たワニア山の東部は非常に地盤が弱く、崖崩れなどが多発している場所のようである。
宗重
「政武…あれほど足を止めよと申したであろうが…」
この事態に宗重の顔面はたちまち蒼白となっていた。
そうして目を見開いて崖の下を見渡し始め、政武の姿を確認していた。
宗重は、忍者としての任務を幾度となく遂行していくうえで闇夜であったとしても周りをはっきりと見渡せる能力が身に付いていた。
だが、その能力をもってしてでも政武を見つけ出す事は出来なかったのである。
この事からも今回、政武が落ちた崖下は相当な暗さであった事が分かる。
宗重
「政武!生きておるか?無事であらば返事をいたせ!政武!政武!」
宗重は必死の形相で崖下にいるであろう政武に対して呼びかけの声を発していた。
しかし、政武がその声に反応する様子は無いようである。
宗重は続けて政武に呼びかけの声をかけようとしたが、思いとどまる。
ここは敵軍であるヘルト独立勢力の本拠地。
そのような場所で何度も大きな声を上げるという事は、自身の存在が敵に知られてしまう可能性がある。
それ故に、大きな声を上げたくても上げられなかったのである。
宗重
「政武、政武は…無事か?無事なのであろうか…」
自身による呼びかけの声に対してもそれに応じる様子は全く無い。
こうした事から政武の身を案じている宗重は不安な表情を浮かべている。
すると次の瞬間、宗重の周りでも大きな音が鳴り響いた。
またしても崖崩れが発生していたのである。
今度は、ちょうど宗重の目の前にあった地面が一瞬にして無くなっていた。
この状況に宗重がたまらず声を漏らす。
宗重
「いかん、余りにもここは危険過ぎる…これでは儂までもが餌食となってしまおうぞ。」
自身もまた先程の政武に同じくいつこの崖崩れの餌食となるか分からない。
この場所に長く留まれば自身の命も危うい事は間違い無い事実である。
自身の目の前で発生した崖崩れによって出来た深い谷底を見つめながら宗重が呟く。
宗重
「む、むぅ…かくなる上は…こうするしか、無いのであろう…」
毅然たる態度を見せて宗重が言う。
宗重
「我らは主命を果たさねばならぬ身である故、先を急がせてもらうぞ。政武、許せ。許せよ…」
忍者は、与えられた主命を果たす為に存在しているのだ。
特に今回のように複数人での行動の場合、たとえ仲間を失ったとしても一人は生き残って必ず任務を遂行し、無事に帰還しなければならない。
それが忍者として生きる身である者たちの信念なのであるから…
余りにも非情過ぎる信念ではあるが、宗重はそうした覚悟を持ったうえで常に忍者として生きて来た。
今回、このような場面に直面した事によって迷いの表情を見せてはいたがすぐに意を決した表情へと切り替わっていた。
宗重は、自身の中そう納得をしていた。
そうせざるを得なかったのである…
宗重は断腸の思いでその場を去っていた。
途中で宗重の言葉に気を悪くした政武は一人、先へと足を進める。
すると政武の周りで大きな音が鳴り響く。
その直後、政武の姿は一瞬にして宗重の前から消えていた。
大きな音は、崖崩れであった。
政武の居た場所を中心に崖崩れが発生していたのだ。
どうやら宗重らが居たワニア山の東部は非常に地盤が弱く、崖崩れなどが多発している場所のようである。
宗重
「政武…あれほど足を止めよと申したであろうが…」
この事態に宗重の顔面はたちまち蒼白となっていた。
そうして目を見開いて崖の下を見渡し始め、政武の姿を確認していた。
宗重は、忍者としての任務を幾度となく遂行していくうえで闇夜であったとしても周りをはっきりと見渡せる能力が身に付いていた。
だが、その能力をもってしてでも政武を見つけ出す事は出来なかったのである。
この事からも今回、政武が落ちた崖下は相当な暗さであった事が分かる。
宗重
「政武!生きておるか?無事であらば返事をいたせ!政武!政武!」
宗重は必死の形相で崖下にいるであろう政武に対して呼びかけの声を発していた。
しかし、政武がその声に反応する様子は無いようである。
宗重は続けて政武に呼びかけの声をかけようとしたが、思いとどまる。
ここは敵軍であるヘルト独立勢力の本拠地。
そのような場所で何度も大きな声を上げるという事は、自身の存在が敵に知られてしまう可能性がある。
それ故に、大きな声を上げたくても上げられなかったのである。
宗重
「政武、政武は…無事か?無事なのであろうか…」
自身による呼びかけの声に対してもそれに応じる様子は全く無い。
こうした事から政武の身を案じている宗重は不安な表情を浮かべている。
すると次の瞬間、宗重の周りでも大きな音が鳴り響いた。
またしても崖崩れが発生していたのである。
今度は、ちょうど宗重の目の前にあった地面が一瞬にして無くなっていた。
この状況に宗重がたまらず声を漏らす。
宗重
「いかん、余りにもここは危険過ぎる…これでは儂までもが餌食となってしまおうぞ。」
自身もまた先程の政武に同じくいつこの崖崩れの餌食となるか分からない。
この場所に長く留まれば自身の命も危うい事は間違い無い事実である。
自身の目の前で発生した崖崩れによって出来た深い谷底を見つめながら宗重が呟く。
宗重
「む、むぅ…かくなる上は…こうするしか、無いのであろう…」
毅然たる態度を見せて宗重が言う。
宗重
「我らは主命を果たさねばならぬ身である故、先を急がせてもらうぞ。政武、許せ。許せよ…」
忍者は、与えられた主命を果たす為に存在しているのだ。
特に今回のように複数人での行動の場合、たとえ仲間を失ったとしても一人は生き残って必ず任務を遂行し、無事に帰還しなければならない。
それが忍者として生きる身である者たちの信念なのであるから…
余りにも非情過ぎる信念ではあるが、宗重はそうした覚悟を持ったうえで常に忍者として生きて来た。
今回、このような場面に直面した事によって迷いの表情を見せてはいたがすぐに意を決した表情へと切り替わっていた。
宗重は、自身の中そう納得をしていた。
そうせざるを得なかったのである…
宗重は断腸の思いでその場を去っていた。
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