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第9章 創天国の魂編
41.死してもなお
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宗重と政武らを乗せた船はワニア島を目指して移動を続けている。
だが、先の長継による提案によって遠回りの航路を進んでいる為、到着までの目処は立っていない状態であった。
このことに業を煮やした政武は舵を切り、ワニア島の近くに船を移動させ始める。
焦る宗重をよそに落ち着いた態度で政武は懐からある物体を取り出し、船の前面部に向かって投げつける。
するとたちまち白い煙が吹き出し、それはやがて船全体にまで行き渡っていた。
煙は船を大きく包み込み、その姿を周囲から忽然と消してしまっていた。
その物体は、忍者の必須道具とも言える「煙幕」なのであった。
宗重
「それにしてもその煙幕は真によう出来ておるのう。」
宗重は一瞬にして自身たちの乗っている船の姿を周りから消し去ったこの煙幕に対して非常に関心を持っているようであった。
すると政武が淡々とした様子で答え始める。
政武
「あぁ、これか?これは村上島で作られた煙幕で、俺が忍びの修行をしておった時にちょいとばかし拝借したものじゃ。何でも、九条とかいう者が作ったと聞いておるわ。」
その言葉を聞いた宗重が思わず声を上げる。
宗重
「なに?九条じゃと?まさか…九条、九条信常殿であるか?」
政武
「ん?何じゃ爺さんよ、そいつのことを知っておるのか?」
宗重
「知っておるも何も、九条信常殿は我ら志太家の者であるぞ。」
・九条 信常(くじょう のぶつね)
元は村上島(現在の志栄島)の村上家に仕え、領内において様々な道具を作り出した発明家である。
後に志太家の志太祐藤による説得に応じて志太家へ寝返り、以後は志太家の家臣となった。
そこで様々な発明を行うことで志太家の天下統一事業に大きく貢献する事となる。
外河家との戦い(第二次墨山の戦い)に参戦し、自身が発明した天候を操る装置である雷神(らいじん)によって外河軍を大混乱に陥れる。
そして志太軍が墨山城を陥落した事を知った信常は、役目を果たしたと言い残してその場で死去したという。
政武
「ほほう、それまた奇遇じゃな。これが縁ってやつなのかねぇ?」
創天国とセビカ国から始まり志太家と村上家、志太家と木内家、そして木内家と九条家。
この奇妙な縁は、一体どこまで繋がっているというのであろうか。
政武は目には見えぬそうした「縁」について不思議げな表情を浮かべていた。
そして関心した様子で政武が口を開く。
政武
「しかし、かようなものを作るたぁ…その九条信常とやらは、真に大した奴じゃな。」
それを聞いた宗重は政武に対して大きな声を上げ始める。
宗重
「こら政武!少しは口を慎まぬか!信常殿はな、我ら志太幕府の創設に大いなる貢献をなされた御人にござるぞ!無礼なことを申すでない!」
九条信常は、数多くの発明を行う事で我が志太家による天下統一への大きな機会を作ったと言っても良い人物である。
そのような偉業を残した者に対して何たる口の聞きようであるか。
宗重には政武という一人の若造によって信常が軽く見られていたような言葉に感じたのであろうか、腹を立てている様子だ。
政武
「はいはい、分かりましたよ。まぁ、いずれにせよこうして近道の航路で島に向かえるのであらばその信常さんには感謝してはいるぜ。」
政武は軽くあくびをしながらそう答えていた。
だが後に発した言葉からもあるように、信常に対して感謝の気持ちは少なからずは持ち合わせてはいるようではあった。
宗重
「うむ…信常殿は、死してもなお儂らをお助けになられるわけか…信常殿、真に恩に着ますぞ。」
宗重は瞼を閉じ、亡き信常に対して感謝の意を込めながら頭を深く下げていた。
だが、先の長継による提案によって遠回りの航路を進んでいる為、到着までの目処は立っていない状態であった。
このことに業を煮やした政武は舵を切り、ワニア島の近くに船を移動させ始める。
焦る宗重をよそに落ち着いた態度で政武は懐からある物体を取り出し、船の前面部に向かって投げつける。
するとたちまち白い煙が吹き出し、それはやがて船全体にまで行き渡っていた。
煙は船を大きく包み込み、その姿を周囲から忽然と消してしまっていた。
その物体は、忍者の必須道具とも言える「煙幕」なのであった。
宗重
「それにしてもその煙幕は真によう出来ておるのう。」
宗重は一瞬にして自身たちの乗っている船の姿を周りから消し去ったこの煙幕に対して非常に関心を持っているようであった。
すると政武が淡々とした様子で答え始める。
政武
「あぁ、これか?これは村上島で作られた煙幕で、俺が忍びの修行をしておった時にちょいとばかし拝借したものじゃ。何でも、九条とかいう者が作ったと聞いておるわ。」
その言葉を聞いた宗重が思わず声を上げる。
宗重
「なに?九条じゃと?まさか…九条、九条信常殿であるか?」
政武
「ん?何じゃ爺さんよ、そいつのことを知っておるのか?」
宗重
「知っておるも何も、九条信常殿は我ら志太家の者であるぞ。」
・九条 信常(くじょう のぶつね)
元は村上島(現在の志栄島)の村上家に仕え、領内において様々な道具を作り出した発明家である。
後に志太家の志太祐藤による説得に応じて志太家へ寝返り、以後は志太家の家臣となった。
そこで様々な発明を行うことで志太家の天下統一事業に大きく貢献する事となる。
外河家との戦い(第二次墨山の戦い)に参戦し、自身が発明した天候を操る装置である雷神(らいじん)によって外河軍を大混乱に陥れる。
そして志太軍が墨山城を陥落した事を知った信常は、役目を果たしたと言い残してその場で死去したという。
政武
「ほほう、それまた奇遇じゃな。これが縁ってやつなのかねぇ?」
創天国とセビカ国から始まり志太家と村上家、志太家と木内家、そして木内家と九条家。
この奇妙な縁は、一体どこまで繋がっているというのであろうか。
政武は目には見えぬそうした「縁」について不思議げな表情を浮かべていた。
そして関心した様子で政武が口を開く。
政武
「しかし、かようなものを作るたぁ…その九条信常とやらは、真に大した奴じゃな。」
それを聞いた宗重は政武に対して大きな声を上げ始める。
宗重
「こら政武!少しは口を慎まぬか!信常殿はな、我ら志太幕府の創設に大いなる貢献をなされた御人にござるぞ!無礼なことを申すでない!」
九条信常は、数多くの発明を行う事で我が志太家による天下統一への大きな機会を作ったと言っても良い人物である。
そのような偉業を残した者に対して何たる口の聞きようであるか。
宗重には政武という一人の若造によって信常が軽く見られていたような言葉に感じたのであろうか、腹を立てている様子だ。
政武
「はいはい、分かりましたよ。まぁ、いずれにせよこうして近道の航路で島に向かえるのであらばその信常さんには感謝してはいるぜ。」
政武は軽くあくびをしながらそう答えていた。
だが後に発した言葉からもあるように、信常に対して感謝の気持ちは少なからずは持ち合わせてはいるようではあった。
宗重
「うむ…信常殿は、死してもなお儂らをお助けになられるわけか…信常殿、真に恩に着ますぞ。」
宗重は瞼を閉じ、亡き信常に対して感謝の意を込めながら頭を深く下げていた。
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