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第9章 創天国の魂編
39.忍びの政武
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セビカ国王 アルド・セリアーのはからいにより、幕府の者たちの住居が与えられていた。
それは、王族級の者たちが住むような豪華な邸宅であったという。
彼らが滞在するまでの期間であるにも関わらずにこのような待遇ぶりに皆が感謝の言葉を述べていた。
そしてほどなくすると宗重が意を決した表情を見せて口を開く。
「これよりワニア島に潜入し、敵軍の様子をうかがいに行く。」
その宗重の様子にただならぬ覚悟を感じたのであろうか、政武も行動を共にすると言っていた。
そうしてセラージュの海岸から宗重と政武を乗せた船が出発。
二人はワニア島を目指して再び航海を始めるのであった。
宗重
「それにしても政武よ。お前が自らかようなことを申すとは思いもよらなんだわい。」
今回の件に関してはそこまで意欲的には見えなかった政武による突然のこの行動である。
宗重は今だに信じられぬような様子であった。
すると政武が軽く笑いながら答える。
政武
「そこまで珍しがる必要は無いじゃろうが。ただ俺もそのワニアとかいう島におる男を知りとうなった。それだけじゃ。」
確かに政武自身も幕府側に味方するとは言ってはいたが「退屈しのぎ」という不埒な理由の末に出した答えであり、真っ当な考えを政武は持っていないように思われた。
だが、幕府側とセビカ側の話を聞いているうちにヘルト独立勢力の当主であるカルロス・ヘルトに政武は興味を持ち始める。
その結果、自身の目で何としてもその男を見てみたいという衝動に駆られた故の今回の行動であるという。
それに対して宗重が苦笑しながら言う。
宗重
「理由はどうあれ、儂らに協力してくれるのであらば一向に構わぬ。じゃがな…」
そして真剣な目つきを政武に向けながら続けて喋り始める。
宗重
「ワニアではあまり派手に動き回るでないぞ。儂らは潜入に参る故、セビカの者であることを知られてはならぬ。良いな?」
これから我らが目指す地であるワニアは敵国の領地。
それ故に、目立った行動は禁物である。
特に政武は海賊衆の頭領という事もあり、喧嘩の絶えない日々を送ってきた。
そうした行いがワニアでもされてしまえば、今回の潜入作戦は失敗に終わってしまう。
それどころか彼らの命すらも危うい状態となるであろう…
宗重は釘を刺すように政武に対してそう言い聞かせていた。
すると政武が気だるそうな表情をして答え始める。
政武
「けっ、また小言かい?これでも俺は昔に忍びの修行もしておったでな。そこいらの心得は持っておる故、安心しな。」
それを聞いた宗重が少し驚いた様子で聞き返す。
宗重
「ほう、忍びの修行とな。お前は忍びを目指しておったのか?」
政武
「あぁ。随分と昔の話じゃが、竹呉島でちぃとばかしな。懐かしいなぁ…」
宗重
「竹呉島…神内殿が束ねしあの忍衆か。」
・神内 実重(かみうち さねしげ)
元は池山国大名である白河家の忍者として仕えていたが、ある時に追放処分を受けて扇山国の西側に位置する竹呉島へ流された。
その後は自身の配下であった者たちを住まわせて海賊や忍びを育成しつつ自治を行うようになる。
やがて志太家の配下となり志太幕府が成立すると竹呉島は竹呉藩と定められ、現在は彼の嫡男である実勝が藩主となり政務を執り行っている。
・神内 実勝(かみうち さねかつ)
実重の嫡男。
実重が死去したことを受け、家督を相続する。
志太幕府が成立すると将軍 志太祐宗から竹呉藩の藩主に任命される。
政務に関しては政治力に乏しかった父の実重をも遥かに上回るほどの実力を持っていた事からか、非常に安定した情勢を保ち続けているという。
政武
「で、竹呉の頭領さんに破門されてから俺は海賊を目指すようになって今に至るわけじゃ。」
どうやら政武は海賊衆の頭領に就く以前は、忍びの島とも呼ばれる竹呉島の神内実重の元で忍者になるべく修行をしていたという。
そこで忍者としての修行を短期間で一気に詰め込んだ政武は、実重より一目置かれる存在であったという。
だがある時、政武は頭領である実重に破門を言い渡される事で彼の忍者としての修行は終わりを告げた。
破門された理由としては、実重が寵愛していた弟子を政武が口論の末に斬りつけた為であると言われている。
宗重
「ふむ、政武の忍びとしての力がいかほどなものか…手並み拝見にござるな。」
宗重は興味深い様子で政武を見つめながらそう呟いていた。
それは、王族級の者たちが住むような豪華な邸宅であったという。
彼らが滞在するまでの期間であるにも関わらずにこのような待遇ぶりに皆が感謝の言葉を述べていた。
そしてほどなくすると宗重が意を決した表情を見せて口を開く。
「これよりワニア島に潜入し、敵軍の様子をうかがいに行く。」
その宗重の様子にただならぬ覚悟を感じたのであろうか、政武も行動を共にすると言っていた。
そうしてセラージュの海岸から宗重と政武を乗せた船が出発。
二人はワニア島を目指して再び航海を始めるのであった。
宗重
「それにしても政武よ。お前が自らかようなことを申すとは思いもよらなんだわい。」
今回の件に関してはそこまで意欲的には見えなかった政武による突然のこの行動である。
宗重は今だに信じられぬような様子であった。
すると政武が軽く笑いながら答える。
政武
「そこまで珍しがる必要は無いじゃろうが。ただ俺もそのワニアとかいう島におる男を知りとうなった。それだけじゃ。」
確かに政武自身も幕府側に味方するとは言ってはいたが「退屈しのぎ」という不埒な理由の末に出した答えであり、真っ当な考えを政武は持っていないように思われた。
だが、幕府側とセビカ側の話を聞いているうちにヘルト独立勢力の当主であるカルロス・ヘルトに政武は興味を持ち始める。
その結果、自身の目で何としてもその男を見てみたいという衝動に駆られた故の今回の行動であるという。
それに対して宗重が苦笑しながら言う。
宗重
「理由はどうあれ、儂らに協力してくれるのであらば一向に構わぬ。じゃがな…」
そして真剣な目つきを政武に向けながら続けて喋り始める。
宗重
「ワニアではあまり派手に動き回るでないぞ。儂らは潜入に参る故、セビカの者であることを知られてはならぬ。良いな?」
これから我らが目指す地であるワニアは敵国の領地。
それ故に、目立った行動は禁物である。
特に政武は海賊衆の頭領という事もあり、喧嘩の絶えない日々を送ってきた。
そうした行いがワニアでもされてしまえば、今回の潜入作戦は失敗に終わってしまう。
それどころか彼らの命すらも危うい状態となるであろう…
宗重は釘を刺すように政武に対してそう言い聞かせていた。
すると政武が気だるそうな表情をして答え始める。
政武
「けっ、また小言かい?これでも俺は昔に忍びの修行もしておったでな。そこいらの心得は持っておる故、安心しな。」
それを聞いた宗重が少し驚いた様子で聞き返す。
宗重
「ほう、忍びの修行とな。お前は忍びを目指しておったのか?」
政武
「あぁ。随分と昔の話じゃが、竹呉島でちぃとばかしな。懐かしいなぁ…」
宗重
「竹呉島…神内殿が束ねしあの忍衆か。」
・神内 実重(かみうち さねしげ)
元は池山国大名である白河家の忍者として仕えていたが、ある時に追放処分を受けて扇山国の西側に位置する竹呉島へ流された。
その後は自身の配下であった者たちを住まわせて海賊や忍びを育成しつつ自治を行うようになる。
やがて志太家の配下となり志太幕府が成立すると竹呉島は竹呉藩と定められ、現在は彼の嫡男である実勝が藩主となり政務を執り行っている。
・神内 実勝(かみうち さねかつ)
実重の嫡男。
実重が死去したことを受け、家督を相続する。
志太幕府が成立すると将軍 志太祐宗から竹呉藩の藩主に任命される。
政務に関しては政治力に乏しかった父の実重をも遥かに上回るほどの実力を持っていた事からか、非常に安定した情勢を保ち続けているという。
政武
「で、竹呉の頭領さんに破門されてから俺は海賊を目指すようになって今に至るわけじゃ。」
どうやら政武は海賊衆の頭領に就く以前は、忍びの島とも呼ばれる竹呉島の神内実重の元で忍者になるべく修行をしていたという。
そこで忍者としての修行を短期間で一気に詰め込んだ政武は、実重より一目置かれる存在であったという。
だがある時、政武は頭領である実重に破門を言い渡される事で彼の忍者としての修行は終わりを告げた。
破門された理由としては、実重が寵愛していた弟子を政武が口論の末に斬りつけた為であると言われている。
宗重
「ふむ、政武の忍びとしての力がいかほどなものか…手並み拝見にござるな。」
宗重は興味深い様子で政武を見つめながらそう呟いていた。
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