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第9章 創天国の魂編
24.誤解
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政武らは嵐によって襲われたところを幕府の者たちにより、奇跡的に救出されていた。
やがて政武は意識を取り戻し、宗重らの姿を見た事で険しい表情を見せる。
「何故に我らを救い出した。じっくりと処刑をするのであればさっさとこの首を刎ねるがよい。」
など悪態をつく政武に対して宗重は一喝し、政武を黙らせた。
そして宗重が静かに口を開く。
宗重
「お主はな、かようなことで死すべき者ではござらん。」
宗重は政武に対して、このような場所で死んではならないと言っていた。
再び政武が開き直って問いかける。
政武
「じゃから、じわじわと処刑する為にこうして俺たちを捕まえたのであろう?違うか?」
政武は、自身たちが幕府の者たちの手によってじっくりと時間をかけて処刑されるであろうと考えているようだ。
これが戦いに敗れた者たちの哀しき末路なのであろうか…
そう思った政武は、顔をうつむけていた。
その様子に対して宗重が続けて言う。
宗重
「ここでお主に死なれては、冥府におる政豊殿に申し訳が立たぬ故のことにござる。」
するとうつむけていた顔を一気に上げた政武が声を上げる。
政武
「はぁ?なんじゃそれは?どうも俺は貴様らの申しておることは解せぬな。」
自身の父親である政豊に対して何をそこまで気を使う必要があるというのだ。
政武は宗重の言っている事が理解出来ぬようであった。
そうしていると貞広が間に割って入って答え始める。
貞広
「お主の御父上である木内政豊の御恩に報いるべく、その御身をお助けした次第にござる。」
幕府が受けた木内政豊による御恩。
その言葉を聞いた政武はみるみるうちに険しい表情へと切り替わり、怒鳴り声を上げる。
政武
「俺の親父は、あんたら幕府を恨みながら死んだわ。じゃというのに、よくもぬけぬけとそのようなことを!」
政武の父である政豊は志太幕府が成立した後に病にかかり、体調を崩し始めていた。
それからは日を重ねるごとに容態は悪化していき、翌年には病死したという。
あれほど元気であった政豊がこの短い期間で死去するに至ったのは、幕府に対しての禍根があった故であると政武は言っていた。
宗重
「幕府に恨み、か…ふむ、お主は真にそのように思うておるのか?」
政武
「あぁ。死の間際まであんたら幕府の者たちの名前をうわ言のように申しておったからな。」
政豊が亡くなる数日前の事である。
大勢の部下たちが見守る中、床に臥せていた政豊はその意識を失いつつあった。
そんな時に政豊は「志太祐宗、志太祐永、口羽崇冬、宮本宗重…」などといった志太幕府の者たちの名前を挙げては悔しげな表情を見せていたという。
そして数日が経ち、政豊はこの世を去った。
うわ言のように幕府の人間の名前を挙げ続けた後の死去。
「自身が政豊の代わりとなり、幕府に対しての恨みを晴らしてやろう。」
そのような政豊の死を見届けた政武は、そう誓うのであった。
宗重
「なるほどのぅ…ふむ、良かろう。政武殿よ、これをよく見てみよ。」
宗重は懐から一刀の小刀を取り出し。政武に見せていた。
小刀を見た政武が目を見開いて言う。
政武
「はっ!そ、それは…何故に貴様が持っておるというのじゃ?」
その小刀は、何とも派手な色合いをしていた。
宗重
「政豊殿愛刀の虎返しにござる。政豊殿が儂にくださったものじゃ。」
・虎返し(とらがえし)
木内政豊が愛用していたとされる小刀。
鞘には柳盗賊衆が好んで用いた虎の模様が描かれていた。
志太幕府が成立した数日後に政豊は、友情の証として宗重にこの虎返しを贈ったと言われている。
宗重
「そして、祐宗様は政豊殿より御愛馬を頂かれた。これでもお主の父上は我が幕府に恨みを抱いておったといえますかな?」
政豊は自身が愛用していた刀を幕府の人間である宗重に贈り、さらには自身の愛馬も祝いの品として祐宗に贈っていたという。
幕府に対して少なからずでも恨みがあろうものならば、このような事を行わないであろう。
むしろ政豊は、自身が病に冒されて死を間近にした事に対しての悔しさを感じていただけでは無かろうか。
宗重は小刀を強く握りしめながらそう語っていた。
すると政武は宗重らから顔をそむけて言う。
政武
「くっ、俺が…間違っておったというのか…親父は馬鹿者よ。真に大馬鹿者なくそ親父よ…」
政武の目には涙が浮かんでいた。
やがて政武は意識を取り戻し、宗重らの姿を見た事で険しい表情を見せる。
「何故に我らを救い出した。じっくりと処刑をするのであればさっさとこの首を刎ねるがよい。」
など悪態をつく政武に対して宗重は一喝し、政武を黙らせた。
そして宗重が静かに口を開く。
宗重
「お主はな、かようなことで死すべき者ではござらん。」
宗重は政武に対して、このような場所で死んではならないと言っていた。
再び政武が開き直って問いかける。
政武
「じゃから、じわじわと処刑する為にこうして俺たちを捕まえたのであろう?違うか?」
政武は、自身たちが幕府の者たちの手によってじっくりと時間をかけて処刑されるであろうと考えているようだ。
これが戦いに敗れた者たちの哀しき末路なのであろうか…
そう思った政武は、顔をうつむけていた。
その様子に対して宗重が続けて言う。
宗重
「ここでお主に死なれては、冥府におる政豊殿に申し訳が立たぬ故のことにござる。」
するとうつむけていた顔を一気に上げた政武が声を上げる。
政武
「はぁ?なんじゃそれは?どうも俺は貴様らの申しておることは解せぬな。」
自身の父親である政豊に対して何をそこまで気を使う必要があるというのだ。
政武は宗重の言っている事が理解出来ぬようであった。
そうしていると貞広が間に割って入って答え始める。
貞広
「お主の御父上である木内政豊の御恩に報いるべく、その御身をお助けした次第にござる。」
幕府が受けた木内政豊による御恩。
その言葉を聞いた政武はみるみるうちに険しい表情へと切り替わり、怒鳴り声を上げる。
政武
「俺の親父は、あんたら幕府を恨みながら死んだわ。じゃというのに、よくもぬけぬけとそのようなことを!」
政武の父である政豊は志太幕府が成立した後に病にかかり、体調を崩し始めていた。
それからは日を重ねるごとに容態は悪化していき、翌年には病死したという。
あれほど元気であった政豊がこの短い期間で死去するに至ったのは、幕府に対しての禍根があった故であると政武は言っていた。
宗重
「幕府に恨み、か…ふむ、お主は真にそのように思うておるのか?」
政武
「あぁ。死の間際まであんたら幕府の者たちの名前をうわ言のように申しておったからな。」
政豊が亡くなる数日前の事である。
大勢の部下たちが見守る中、床に臥せていた政豊はその意識を失いつつあった。
そんな時に政豊は「志太祐宗、志太祐永、口羽崇冬、宮本宗重…」などといった志太幕府の者たちの名前を挙げては悔しげな表情を見せていたという。
そして数日が経ち、政豊はこの世を去った。
うわ言のように幕府の人間の名前を挙げ続けた後の死去。
「自身が政豊の代わりとなり、幕府に対しての恨みを晴らしてやろう。」
そのような政豊の死を見届けた政武は、そう誓うのであった。
宗重
「なるほどのぅ…ふむ、良かろう。政武殿よ、これをよく見てみよ。」
宗重は懐から一刀の小刀を取り出し。政武に見せていた。
小刀を見た政武が目を見開いて言う。
政武
「はっ!そ、それは…何故に貴様が持っておるというのじゃ?」
その小刀は、何とも派手な色合いをしていた。
宗重
「政豊殿愛刀の虎返しにござる。政豊殿が儂にくださったものじゃ。」
・虎返し(とらがえし)
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鞘には柳盗賊衆が好んで用いた虎の模様が描かれていた。
志太幕府が成立した数日後に政豊は、友情の証として宗重にこの虎返しを贈ったと言われている。
宗重
「そして、祐宗様は政豊殿より御愛馬を頂かれた。これでもお主の父上は我が幕府に恨みを抱いておったといえますかな?」
政豊は自身が愛用していた刀を幕府の人間である宗重に贈り、さらには自身の愛馬も祝いの品として祐宗に贈っていたという。
幕府に対して少なからずでも恨みがあろうものならば、このような事を行わないであろう。
むしろ政豊は、自身が病に冒されて死を間近にした事に対しての悔しさを感じていただけでは無かろうか。
宗重は小刀を強く握りしめながらそう語っていた。
すると政武は宗重らから顔をそむけて言う。
政武
「くっ、俺が…間違っておったというのか…親父は馬鹿者よ。真に大馬鹿者なくそ親父よ…」
政武の目には涙が浮かんでいた。
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