架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第9章 創天国の魂編

16.海上での攻防

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亀去島海賊衆による攻撃を受けた幕府勢は鉄砲を構え、反撃を加えるべく砲撃を始めた。
そうして放たれた銃弾は容赦なく海賊衆たち目掛けて命中するかのように思われた。
だが政武らが突如として備えた鋼鉄の盾を用いた事により、ほとんどの銃弾は弾き返されていた。

政武
「ふふん、貴様らが鉄砲を用いることなどは百も承知。かような攻撃に屈する我らではないわ!」

どうやら政武ら率いる亀去島海賊衆は、対幕府用に鋼鉄の盾を備えていたようである。
そして政武が続けて声を上げる。

政武
「おいお前たちよ、今一度この幕府の愚か者どもに矢の雨を降らせてやれ!」

そう言うと海賊衆たちは目にも留まらぬ速さで弓を構えて矢を装填し始めた。
再び幕府の船を目掛けて矢を放とうとしているようである。

貞広
「くっ、またしてもか。ふざけた真似をしおって…」

政武らによる攻撃の予告を受けた貞広は、怒りの表情を見せながらそう静かに言っていた。
すると宗重が慌てた様子で声を上げる。

宗重
「いかん、こうしてはおれぬ!我らも、我らも盾を用意するのじゃ!急げ、急ぐのじゃ!」

宗重によるその声により、幕府勢の者たちは急いで盾を掲げ始める。
と、その瞬間に海賊衆たちが一斉に矢を放った。
幕府の者たちは盾を構え、矢を受け止めようと必死になっていた。

その結果、今回の海賊衆による攻撃は構えた盾によるおかげもあってか、先刻ほどの被害は受けなかった。
だが、放たれた矢を受けた盾は大きく損壊し、中には貫通した物もあったという。
それ故に、負傷した幕府の者も少なからずはいたようである。

貞広
「おのれ、亀去島海賊衆め…どこまでもふざけた奴らじゃ…」

貞広は政武を睨みつけながら低い声を上げていた。
すると長継が何かに気付いた様子で口を開く。

長継
「むっ、間もなくこの辺り一帯に嵐が訪れそうにございますな…」

幕府勢と海賊衆とが今まさに戦いを繰り広げているこの場所に、間もなく嵐が来る。
その突然とも言える長継の言葉に貞広が聞き返す。

貞広
「なに、嵐…とな?長継殿、それは真のことにござるか?」

長継は大きく首を縦に振って答え始める。

長継
「はい、海を渡ることが多きセビカの者たちには海上の天候の移り変わりには非常に敏感にございます故…」

セビカで特に港町として栄えているセラージュに住まう者は、海を渡って各地方を行き来するなど日常の移動手段となっている者が多くいた。
そうした事からも、海上においての天候の移り変わりに対して敏感に気付く力が自然と備わるようになるというのだ。

創天国を離れ、セビカに移住して数十年。
どうやら長継もまた彼らのような力が養われていたようである。

ドヴェルク
「長継の言う通り、ここにいては危険です。早く安全な場所へと舵を進めましょう!」

無論、セラージュで生まれ育ったドヴェルクも海上での天候の変化に対して敏感に気付いていた。
とにかくこの場から離れなければ嵐が船を直撃し、大惨事となるであろう。
長継とドヴェルクらは、非常に焦った様子を見せていた。

だが宗重は彼らの声を聞き入れる事をせず、ただただ静かに答え始める。

宗重
「いや、それはかえって好機となろうぞ。まるで、あの頃のように…な。」

宗重は意味ありげな言葉を発していた。
志栄島東方沖には無数の雲がかかり始めようとしている…
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