420 / 549
第9章 創天国の魂編
12.海上の脅威
しおりを挟む
出港してから数刻の時が過ぎ、貞広らは志栄島の東方沖を進行中である。
そんな中、貞広の家臣の一人が慌てて報告に来た。
「我らの船に向かって来ようとする一隻の船を確認した。」
その報告に対し貞広は、呆れた様子を見せる
「航海を行ううえで他の船と出会う事も珍しくは無かろう。」
至極当たり前とも言える出来事を大層げに報告する家臣が貞広には理解できなかったからである。
だが、家臣が指差す方角を見た宗重は驚きの声を上げる。
それにつられるように貞広も振り向いた。
…その先に見えた光景に貞広もまた驚き始める。
貞広
「な、何という不気味な船なのじゃ…」
宗重
「趣味が悪いと申せばそれまでじゃが、見る者が見ればあまり気持ちの良きものではございませぬな…」
貞広と宗重らは思わずそう口にしていた。
形といい、模様といい、その船はとにかく異様な雰囲気を醸し出していたという。
それに対し、長継は冷静な様子で口を開く。
長継
「もしやあれは海賊衆の船、にありませぬか?かつて創天国に拙者がいた頃もかような不気味な船を見たことがございます故に。」
長継が村上家として村上島(現在の志栄島)を治めていた頃の話である。
村上家には海賊衆出身である坂上、明石の二家が家臣として仕えていた事もあってか、そのような船をよく目にしていたという。
それ故に、今の彼らの目の前に見える船が海賊衆のものであると長継は判断していたようだ。
宗重
「うむ、どうやらそのようにございますな。じゃが、我が藩内で見かける海賊衆とはちと違うな。」
貞広
「と、すれば我らがまだ知り得ぬ海賊衆ということになるか。厄介なことになりそうじゃな…」
現在、口羽家が治める志栄藩でも海賊衆は存在し、活動は続けられている。
これは、祐宗による
「創天国に住まう全ての民たちが平等かつ安全に暮らせる世を造るべし」
の言葉の元で政が執り行われている為である。
これは、山賊衆や海賊衆たちも例外では無い。
そうした者たちを幕府が保護する事で真の泰平の世が成り立っているという。
とは言え、衆による略奪行為や現地の民たちに危害を与えるといった行動は幕府によって制限されてはいるが。
これらの行為を認めれば無秩序となる事を容認してしまい、幕府が掲げる泰平の世に矛盾が生じてしまうからである。
彼らは幕府の管轄下となった事で、牙を抜かれた謂わば獣のような存在と言っても良いであろう。
こうした事からも、この時代における山賊衆は山の警備、海賊衆は海の警備、といった役割を果たす団体であったのでは無いかと思われる。
だが、幕府が未だ存在を知り得ぬ未知の衆にはそのような取り決めは当然ながら交わしてはいない事になる。
幕府の管轄外とあらば、略奪行為などの被害をこちら側が受ける可能性は充分にあり得る話だ。
貞広は、そうした事を案じている様子であった。
するとドヴェルクもまた驚いた様子を見せながら口を開く。
ドヴェルク
「我が国セビカにも海賊はいますが、これほどまでに威圧感のある船は見たことがありません。これが創天国の海賊なのか…」
ドヴェルクの祖国であるセビカも同じ島国という事もあってか、海賊は存在しているようである。
それは、今までにドヴェルクが見かけた船の中でも強烈な威圧感を放っていた。
何よりも、船を見た彼らが全員が驚きの余りに言葉を失うほどであったというから相当なものであった事が分かるであろう…
やがて海賊衆は、こちらに向かって弓を構えて矢を放つ仕草を見せ始めていた。
貞広
「やはり、奴らは我らの船に攻撃を加えるつもりか。」
宗重
「やれやれ、長継殿の申された通りそう簡単にセビカへと行かせてはくれぬようにございますな…」
宗重は面倒げな様子で嘆くようにそう言っていた。
すると貞広は気を引き締めて声を上げ始める。
貞広
「そうとあらばこうしてはおれぬ。皆の者を集めて直ちに戦闘態勢に入るのじゃ!」
貞広は勇ましい表情を見せていた。
そんな中、貞広の家臣の一人が慌てて報告に来た。
「我らの船に向かって来ようとする一隻の船を確認した。」
その報告に対し貞広は、呆れた様子を見せる
「航海を行ううえで他の船と出会う事も珍しくは無かろう。」
至極当たり前とも言える出来事を大層げに報告する家臣が貞広には理解できなかったからである。
だが、家臣が指差す方角を見た宗重は驚きの声を上げる。
それにつられるように貞広も振り向いた。
…その先に見えた光景に貞広もまた驚き始める。
貞広
「な、何という不気味な船なのじゃ…」
宗重
「趣味が悪いと申せばそれまでじゃが、見る者が見ればあまり気持ちの良きものではございませぬな…」
貞広と宗重らは思わずそう口にしていた。
形といい、模様といい、その船はとにかく異様な雰囲気を醸し出していたという。
それに対し、長継は冷静な様子で口を開く。
長継
「もしやあれは海賊衆の船、にありませぬか?かつて創天国に拙者がいた頃もかような不気味な船を見たことがございます故に。」
長継が村上家として村上島(現在の志栄島)を治めていた頃の話である。
村上家には海賊衆出身である坂上、明石の二家が家臣として仕えていた事もあってか、そのような船をよく目にしていたという。
それ故に、今の彼らの目の前に見える船が海賊衆のものであると長継は判断していたようだ。
宗重
「うむ、どうやらそのようにございますな。じゃが、我が藩内で見かける海賊衆とはちと違うな。」
貞広
「と、すれば我らがまだ知り得ぬ海賊衆ということになるか。厄介なことになりそうじゃな…」
現在、口羽家が治める志栄藩でも海賊衆は存在し、活動は続けられている。
これは、祐宗による
「創天国に住まう全ての民たちが平等かつ安全に暮らせる世を造るべし」
の言葉の元で政が執り行われている為である。
これは、山賊衆や海賊衆たちも例外では無い。
そうした者たちを幕府が保護する事で真の泰平の世が成り立っているという。
とは言え、衆による略奪行為や現地の民たちに危害を与えるといった行動は幕府によって制限されてはいるが。
これらの行為を認めれば無秩序となる事を容認してしまい、幕府が掲げる泰平の世に矛盾が生じてしまうからである。
彼らは幕府の管轄下となった事で、牙を抜かれた謂わば獣のような存在と言っても良いであろう。
こうした事からも、この時代における山賊衆は山の警備、海賊衆は海の警備、といった役割を果たす団体であったのでは無いかと思われる。
だが、幕府が未だ存在を知り得ぬ未知の衆にはそのような取り決めは当然ながら交わしてはいない事になる。
幕府の管轄外とあらば、略奪行為などの被害をこちら側が受ける可能性は充分にあり得る話だ。
貞広は、そうした事を案じている様子であった。
するとドヴェルクもまた驚いた様子を見せながら口を開く。
ドヴェルク
「我が国セビカにも海賊はいますが、これほどまでに威圧感のある船は見たことがありません。これが創天国の海賊なのか…」
ドヴェルクの祖国であるセビカも同じ島国という事もあってか、海賊は存在しているようである。
それは、今までにドヴェルクが見かけた船の中でも強烈な威圧感を放っていた。
何よりも、船を見た彼らが全員が驚きの余りに言葉を失うほどであったというから相当なものであった事が分かるであろう…
やがて海賊衆は、こちらに向かって弓を構えて矢を放つ仕草を見せ始めていた。
貞広
「やはり、奴らは我らの船に攻撃を加えるつもりか。」
宗重
「やれやれ、長継殿の申された通りそう簡単にセビカへと行かせてはくれぬようにございますな…」
宗重は面倒げな様子で嘆くようにそう言っていた。
すると貞広は気を引き締めて声を上げ始める。
貞広
「そうとあらばこうしてはおれぬ。皆の者を集めて直ちに戦闘態勢に入るのじゃ!」
貞広は勇ましい表情を見せていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
日は沈まず
ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。
また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。
隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~
髙橋朔也
ファンタジー
高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!
戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。
持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。
推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。
※毎日投稿。
※歴史上に存在しない人物も登場しています。
小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
16世紀のオデュッセイア
尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。
12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。
※このお話は史実を参考にしたフィクションです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる