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第9章 創天国の魂編
08.渡航への準備
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将軍 志太祐宗との謁見が終わりさらにその数日後、祐宗は長継らを再び八光御所へ呼び寄せた。
そこには家老の吉江貞広と志栄藩の宮本宗重の姿もあった。
皆が揃った中で祐宗が早速口を開く。
祐宗
「ここにおられるセリアー・長継殿及びドヴェルク・セリアー殿の祖国セビカが存続の危機にあると聞いておる。」
祐宗は長継らが住まう国であるセリアーが今、突如として成立された独立勢力の脅威にさらされているという事実を口にしていた。
そして続けて祐宗が言う。
祐宗
「そこで貞広と宗重よ、まずはお主らがセビカへと向かってくれぬか。」
どうやら祐宗は貞広と宗重をセビカへと渡航させようと考えているようであった。
祐宗
「貞広はアルド殿と謁見されよ。そしてそこで約束を交わすが良い。我が創天国は、セビカに味方いたすとな。」
祐宗は貞広にセビカ国の国王であるアルド・セリアーに謁見する事を申し付けていた。
貞広の父である貞勝は、志太家において外交能力に秀でていた家臣である。
そして、その貞勝の能力を十分受け継いでいる嫡男の貞広に今回の外交役を任せると言うものだ。
貞広
「ははっ、仰せの通りに。」
そう貞広が答えた後に宗重は祐宗に対して問い掛ける。
宗重
「上様、さすれば拙者は貞広殿の護衛にございますか?」
志太家の家臣の中から外交の使者を送る際は、必ずと言っても良いほど宗重が同行して家臣の護衛に務めさせていた。
それ故に今回の祐宗によって主命を言い渡された宗重は、当たり前ながらと言った様子でそう問い掛けの言葉を発していた。
祐宗
「うむ、お主の申す通りセビカまでの道中は貞広の護衛を任せるつもりじゃ。じゃがその後は、ヘルトの情報を探ってもらいたい。」
祐宗は従来通り宗重に対して使者の護衛を任せると言っていた。
しかし今回はもう一つ新たな任務を宗重に課していた。
それは、敵国であるヘルトの内情調査と言った忍本来としての任務であった。
宗重
「拙者が…敵国の情報を…ですか?」
祐宗による新たな任務は宗重にとって想定外であったのか、少し戸惑った表情を見せ始める。
そんな宗重に対して祐宗が顔を覗き込みながら問い掛ける。
祐宗
「うむ、どうしたのじゃ?久々の忍としての任務が不安にござるか?」
祐宗のその言葉を聞いた宗重が勢い良く答える。
宗重
「いえ、とんでもございませぬ!この宮本宗重、老いたとて忍としての力は未だ健在である故、必ずやヘルトの情報を持ち帰って見せましょう!」
宗重は若き頃より志太家による天下統一を果たす為、様々な任務をこなして来た。
そしてやがて時は流れ、志太幕府が成立。
その時点で宗重はいわば老年と言っても良いほどの齢に達していた。
本来であらば加齢によって肉体の衰えを感じずにはいられぬ者が殆どであるが、こと宗重に関しては違ったようである。
「たとえ老いたとても未だ我の忍術 衰える気配は無し」
晩年の宗重が残した言葉である。
こうした事からも分かるように、彼の身体能力は相当なものであったと言えよう。
宗重の力強い答えに祐宗は、頼もしさを感じずにはいられなかった。
祐宗
「これはこれは、真に頼もしきことを申してくれおるのう。」
すると長継が祐宗らの間を割って喋り始める。
長継
「しかし宗重殿、ヘルトには一癖も二癖もある者たちが構えております故に油断は禁物にございますぞ…」
ドヴェルク
「特に、アテヌ・ブラウスという男が非常に厄介です…」
何やらカルロス・ヘルトが築いた独立勢力の陣営には様々な強者が入っているようである。
その中でもカルロスの右腕として仕えるアテヌ・ブラウスという男には注意せよ、との事だ。
祐宗
「ふむ、そこまで厄介な男がおると申すのか。」
祐宗はドヴェルクのその言葉に少し構えた様子を見せていた。
すると宗重が胸を張って答える。
宗重
「なに、拙者は数々の修羅場をくぐり抜けて生きてきた男。それ故、心配は御無用にございます。」
宗重は自信満々な表情をしていた。
そこには家老の吉江貞広と志栄藩の宮本宗重の姿もあった。
皆が揃った中で祐宗が早速口を開く。
祐宗
「ここにおられるセリアー・長継殿及びドヴェルク・セリアー殿の祖国セビカが存続の危機にあると聞いておる。」
祐宗は長継らが住まう国であるセリアーが今、突如として成立された独立勢力の脅威にさらされているという事実を口にしていた。
そして続けて祐宗が言う。
祐宗
「そこで貞広と宗重よ、まずはお主らがセビカへと向かってくれぬか。」
どうやら祐宗は貞広と宗重をセビカへと渡航させようと考えているようであった。
祐宗
「貞広はアルド殿と謁見されよ。そしてそこで約束を交わすが良い。我が創天国は、セビカに味方いたすとな。」
祐宗は貞広にセビカ国の国王であるアルド・セリアーに謁見する事を申し付けていた。
貞広の父である貞勝は、志太家において外交能力に秀でていた家臣である。
そして、その貞勝の能力を十分受け継いでいる嫡男の貞広に今回の外交役を任せると言うものだ。
貞広
「ははっ、仰せの通りに。」
そう貞広が答えた後に宗重は祐宗に対して問い掛ける。
宗重
「上様、さすれば拙者は貞広殿の護衛にございますか?」
志太家の家臣の中から外交の使者を送る際は、必ずと言っても良いほど宗重が同行して家臣の護衛に務めさせていた。
それ故に今回の祐宗によって主命を言い渡された宗重は、当たり前ながらと言った様子でそう問い掛けの言葉を発していた。
祐宗
「うむ、お主の申す通りセビカまでの道中は貞広の護衛を任せるつもりじゃ。じゃがその後は、ヘルトの情報を探ってもらいたい。」
祐宗は従来通り宗重に対して使者の護衛を任せると言っていた。
しかし今回はもう一つ新たな任務を宗重に課していた。
それは、敵国であるヘルトの内情調査と言った忍本来としての任務であった。
宗重
「拙者が…敵国の情報を…ですか?」
祐宗による新たな任務は宗重にとって想定外であったのか、少し戸惑った表情を見せ始める。
そんな宗重に対して祐宗が顔を覗き込みながら問い掛ける。
祐宗
「うむ、どうしたのじゃ?久々の忍としての任務が不安にござるか?」
祐宗のその言葉を聞いた宗重が勢い良く答える。
宗重
「いえ、とんでもございませぬ!この宮本宗重、老いたとて忍としての力は未だ健在である故、必ずやヘルトの情報を持ち帰って見せましょう!」
宗重は若き頃より志太家による天下統一を果たす為、様々な任務をこなして来た。
そしてやがて時は流れ、志太幕府が成立。
その時点で宗重はいわば老年と言っても良いほどの齢に達していた。
本来であらば加齢によって肉体の衰えを感じずにはいられぬ者が殆どであるが、こと宗重に関しては違ったようである。
「たとえ老いたとても未だ我の忍術 衰える気配は無し」
晩年の宗重が残した言葉である。
こうした事からも分かるように、彼の身体能力は相当なものであったと言えよう。
宗重の力強い答えに祐宗は、頼もしさを感じずにはいられなかった。
祐宗
「これはこれは、真に頼もしきことを申してくれおるのう。」
すると長継が祐宗らの間を割って喋り始める。
長継
「しかし宗重殿、ヘルトには一癖も二癖もある者たちが構えております故に油断は禁物にございますぞ…」
ドヴェルク
「特に、アテヌ・ブラウスという男が非常に厄介です…」
何やらカルロス・ヘルトが築いた独立勢力の陣営には様々な強者が入っているようである。
その中でもカルロスの右腕として仕えるアテヌ・ブラウスという男には注意せよ、との事だ。
祐宗
「ふむ、そこまで厄介な男がおると申すのか。」
祐宗はドヴェルクのその言葉に少し構えた様子を見せていた。
すると宗重が胸を張って答える。
宗重
「なに、拙者は数々の修羅場をくぐり抜けて生きてきた男。それ故、心配は御無用にございます。」
宗重は自信満々な表情をしていた。
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