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第9章 創天国の魂編
06.忌々しき過去
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セビカ国よりはるばる海を渡って創天国を訪れた長継とドヴェルク。
そこで彼らは宗重に対して自国の危機を救って欲しいと懇願。
事情を聞いた宗重は、翌日に志栄藩 藩主である口羽崇冬の居る志栄城を長継らを連れて訪ねていた。
長継らと顔を合わせた崇冬が開口一番に声を発する。
崇冬
「これはこれは…真に懐かしき訪問者にござるな。」
すると長継はすかさず頭を深く下げ始める。
長継
「拙者、セリアー・長継にございます。崇冬殿よ、村上長継と申す名は遠き過去のこと故にどうかお気を使わずにくだされ。」
かつて長継が村上家の当主であった頃、志太家の家臣である崇冬とは敵同士として一戦を交えている。
志太家と村上家。
命を懸けた戦いの中でお互いの正義は確かに存在していた。
勝った側が正義で負けた側は悪とされる事がこの世の常である。
だがそれはもう過去の話であり、あれこれと掘り返して今さら争う気は毛頭無い。
長継は崇冬に対してそう言っていた。
すると崇冬が静かに口を開く。
崇冬
「はっ、承知いたした。それで長継様…いや長継殿よ、事情は宗重殿から聞いておるが…真に気の毒なことにござるな…」
どうやら崇冬も同じく、過去について長継と争う事を望んではいなかった。
それどころか、長継らの退っ引きならぬ事情に対して同情を寄せている様子である。
崇冬の言葉に対して長継が神妙な顔をして答え始める。
長継
「ははっ。我が主君 アルド様が治められる国の行方に大変不安を感じております。」
すると続けてドベルクも口を開く。
ドヴェルク
「はい。信頼しておりました者たちに裏切られたということもあり、我が兄も酷く落ち込まれています。」
崇冬
「かつての家臣らによる裏切り、か…まるで昔の我らを見ておるようじゃな…」
崇冬は深い溜め息をついてそう呟いていた。
そして続けて喋り出す。
崇冬
「墨山でのあの戦を思い出してしもうたわい。松永国輝に沖国時、あやつらには手を焼かされたのう…」
これには宗重も思わず口を揃えて言う。
宗重
「いやはや、真に忌々しき出来事にございましたな…」
松永国輝。
かつて志太家において軍師として活躍し、その名を轟かせていた。
後に白河家の口羽崇数が新たに家臣として志太家に迎え入れられた際に国輝は出奔。
浪人となった国輝は各国を渡り歩いた末、墨山国の大名 外河頼隆の元に家臣として採用される。
外河家では志太家で培った軍師としての能力を発揮した事でわずか数年足らずで軍師に任命され、その中核を担う存在となった。
やがて志太家による天下統一が目前に迫った頃、国輝は外河家の乗っ取りを画策し始める。
そうして意のままに外河家を操り、志太家に対して刃を向けた。
結果的には二度に渡る大合戦の末に志太家の勝利には終わったが、そこにたどり着くまでに志太家は多大な苦戦を強いられたのである。
長継
「拙者が創天国を離れてから、かようなことがござったのか…」
墨山での大決戦の様子を聞いた長継は、声を詰まらせていた。
すると崇冬が思い立った様子で立ち上がり、声を上げる。
崇冬
「よし、お主らの願い、必ずや叶えさせて差し上げようぞ。」
ドヴェルク
「あ、ありがとうございます!どうかよろしくお願いします!」
長継とドヴェルクは崇冬に対して深々と頭を下げていた。
そこで彼らは宗重に対して自国の危機を救って欲しいと懇願。
事情を聞いた宗重は、翌日に志栄藩 藩主である口羽崇冬の居る志栄城を長継らを連れて訪ねていた。
長継らと顔を合わせた崇冬が開口一番に声を発する。
崇冬
「これはこれは…真に懐かしき訪問者にござるな。」
すると長継はすかさず頭を深く下げ始める。
長継
「拙者、セリアー・長継にございます。崇冬殿よ、村上長継と申す名は遠き過去のこと故にどうかお気を使わずにくだされ。」
かつて長継が村上家の当主であった頃、志太家の家臣である崇冬とは敵同士として一戦を交えている。
志太家と村上家。
命を懸けた戦いの中でお互いの正義は確かに存在していた。
勝った側が正義で負けた側は悪とされる事がこの世の常である。
だがそれはもう過去の話であり、あれこれと掘り返して今さら争う気は毛頭無い。
長継は崇冬に対してそう言っていた。
すると崇冬が静かに口を開く。
崇冬
「はっ、承知いたした。それで長継様…いや長継殿よ、事情は宗重殿から聞いておるが…真に気の毒なことにござるな…」
どうやら崇冬も同じく、過去について長継と争う事を望んではいなかった。
それどころか、長継らの退っ引きならぬ事情に対して同情を寄せている様子である。
崇冬の言葉に対して長継が神妙な顔をして答え始める。
長継
「ははっ。我が主君 アルド様が治められる国の行方に大変不安を感じております。」
すると続けてドベルクも口を開く。
ドヴェルク
「はい。信頼しておりました者たちに裏切られたということもあり、我が兄も酷く落ち込まれています。」
崇冬
「かつての家臣らによる裏切り、か…まるで昔の我らを見ておるようじゃな…」
崇冬は深い溜め息をついてそう呟いていた。
そして続けて喋り出す。
崇冬
「墨山でのあの戦を思い出してしもうたわい。松永国輝に沖国時、あやつらには手を焼かされたのう…」
これには宗重も思わず口を揃えて言う。
宗重
「いやはや、真に忌々しき出来事にございましたな…」
松永国輝。
かつて志太家において軍師として活躍し、その名を轟かせていた。
後に白河家の口羽崇数が新たに家臣として志太家に迎え入れられた際に国輝は出奔。
浪人となった国輝は各国を渡り歩いた末、墨山国の大名 外河頼隆の元に家臣として採用される。
外河家では志太家で培った軍師としての能力を発揮した事でわずか数年足らずで軍師に任命され、その中核を担う存在となった。
やがて志太家による天下統一が目前に迫った頃、国輝は外河家の乗っ取りを画策し始める。
そうして意のままに外河家を操り、志太家に対して刃を向けた。
結果的には二度に渡る大合戦の末に志太家の勝利には終わったが、そこにたどり着くまでに志太家は多大な苦戦を強いられたのである。
長継
「拙者が創天国を離れてから、かようなことがござったのか…」
墨山での大決戦の様子を聞いた長継は、声を詰まらせていた。
すると崇冬が思い立った様子で立ち上がり、声を上げる。
崇冬
「よし、お主らの願い、必ずや叶えさせて差し上げようぞ。」
ドヴェルク
「あ、ありがとうございます!どうかよろしくお願いします!」
長継とドヴェルクは崇冬に対して深々と頭を下げていた。
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